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2025年11月 ブラジル関連情報


 

2025年11月ブラジル関連情報

 

1.治安(リオデジャネイロの犯罪組織掃討作戦)

(1)4日、リオデジャネイロの犯罪組織掃討作戦を受け、上院において、組織犯罪に関する議会調査委員会(CPI)が設置された。投票の結果、与党のファビアーノ・コンタラット上院議員(PT-ES)が野党のアミルトン・モウラォン上院議員(Republicanos-RS。前副大統領)を6対5の僅差で破り、CPIの委員長に選出された(モウラォンは、副委員長に就任)。報告官には、アレッサンドロ・ヴィエイラ上院議員(MDB-SE)が選出され、与党がCPIの主導権を握ることに成功した。同CPIは、180日間に亘り、Comando VermelhoやPCC等の犯罪組織、並びに民兵組織(Milicia)の実態や政界との癒着について調査を行う予定。(5日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)ルーラ大統領は4日、外国特派員との記者会見において、「(リオデジャネイロの掃討作戦は)殺戮である。一部の人達は、死亡者数の多さだけを見て成功であると評価しているが、国家機関が実施した作戦としては失敗である。裁判官が命じたのは、犯罪者の逮捕であり、殺戮ではない。殺戮が行われた状況について調査する必要がある」と述べた。ルーラがリオの掃討作戦を批判したのはこれが初めてである。カヴァルカンテ・PL下院院内総務やフラヴィオ・ボルソナーロ上院議員(PL-RJ)等、ボルソナーロ派の議員は、「これで、ルーラが麻薬組織の側についていることがはっきりした」等と批判。(5日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)モラエス・STF判事は5日、人権団体の代表と会合を行った際、「連邦警察は、リオデジャネイロの犯罪組織と民兵組織による資金洗浄の実態、並びに公権力との癒着について捜査を行う。その目的は、組織の資源を断つことにある。また、政府は、犯罪組織の支配下にある地域をその管理下に置く必要がある」と述べた。連邦検察庁の代表は、国連や米州機構等の国際機関が伯の警察による暴力行為について368もの勧告を行っていることを指摘し、改善を図る必要があると強調した。人権団体は、掃討作戦による死亡者の死因及び死亡状況に関して真相の究明を求めた。(6日コレイオ・ブラジリエンセ)

(4)在リオデジャネイロ米国総領事館の米麻薬取締局(DEA)の代表は、ドス・サントス・リオデジャネイロ州政府保安局長に書簡を送付し、先月28日の掃討作戦で殉職した警察官4名に対して弔意を表明し、同州の治安当局を称賛すると共に、DEAにリオデジャネイロの治安当局を支援する用意があることを伝えた。これに対し、連邦政府は、同書簡は儀礼的なものであり、伯の国家主権を脅かすものではないとして、問題視しないことにしている。(6日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(5)Comando Vermelho等の犯罪組織をテロ組織に認定するとの法案を提出したダニーロ・フォルテ下院議員(ユニオン・ブラジル-CE)は、同法案を政府の犯罪組織対策法案(PL Antifacção)と一本化することを提案しているが、ホフマン大統領府政治調整庁長官(PT)は、「テロ組織には、政治または宗教的な目的があり、この点において犯罪組織とは異なる。また、犯罪組織をテロ組織に認定すれば、国際法により、伯が他国の介入を受ける可能性があるため、政府は、犯罪組織をテロ組織に認定することには断固反対である」と述べた。(6日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

2.伯米関係

ルーラ大統領は、トランプ米大統領がCOP30に出席するのであれば、バイの首脳会談を行い、追加関税の引き下げ等について交渉するつもりであったが、トランプがCOP30に出席することはないので、COP30の閉幕までに両国の交渉が開始されていなければ、閉幕後にトランプと電話会談を行い、交渉を促すことにしている。(5日付コレイオ・ブラジリエンセ)

3.ボルソナーロ前大統領の裁判

 連邦直轄区(DF)矯正局は、モラエス・STF判事に対し、ボルソナーロ前大統領の収監先を決める前に医師による診断を行い、ボルソナーロがDFのパプダ刑務所で服役できるのか否かについて確認することを求めている。ボルソナーロの収監先としては、他にも連邦警察ブラジリア支局の留置場(アザ・ノルテ地区)が候補に挙がっているが、健康状態によっては、自宅軟禁が継続される可能性もある。(6日付コレイオ・ブラジリエンセ)

4.議会関連

(1)4日、下院において、父親の育児休暇を2027年から段階的に現在の5日から20日に引き上げるとの法案が可決され、上院に上程された。この法案では、父親の育児休暇は、2027年には10日、2028年には15日、2029年には20日に引き上げられることになっている。原案では、30日に引き上げられることになっていたが、20日に修正された。同法案には与野党がこぞって賛成し、反対したのはNovo党とキン・カタギリ下院議員(ユニオン・ブラジル-SP)だけであった。(5日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)4日、下院において、連邦裁判所職員(事務官等。判事は除く)の給与改定に関する法案が賛成多数で可決され、上院に上程された。これは、裁判所職員の給与を明年から3年間に亘って毎年8%ずつ増額するというもので、改定率は3年間で合計25.97%になる。(5日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)5日、上院において、所得税減免法案(月5千レアルまでは所得税免除。5千~7350レアルは減税)が可決され、大統領の裁可に付された。これにより、所得税の非課税枠は、明年1月から月5千レアルに引き上げられることになり、ルーラ大統領は、明年の選挙を前に公約を果たすことができる。ルーラは、「本日は、公平な税制が実現した歴史的な日である。アルコルンブレ上院議長とレナン・カリェイロス上院議員(MDB-AL。同法案の報告官)の尽力に感謝」とSNSに投稿した。ホフマン大統領府政治調整庁長官(PT)は、「これは伯の労働者の勝利である。所得税の減免も重要であるが、富裕層の税負担を増やすことで、公平な税制が実現されることも重要である」と述べた。可決された法案では、月5万レアル(年収60万レアル)以上の不労所得を得ている富裕層に対して10%の「最低税率」が設定されることになっている。現在、これらの富裕層に適用されている税率は平均2.5%であるところ、今後はこれが10%に引き上げられることになる。その対象となる富裕層は、14.1万人と推定されている。(6日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(4)5日、下院において、性暴力により妊娠した未成年者に対し、警察への被害届や裁判所及び保護者の許可がなくても、人工妊娠中絶の権利を認めるとの国家児童青少年権利審議会(Conanda)の決議の効力を停止するとの法案(クリス・トニエット下院議員(PL-RJ)提出)が賛成317、反対111により可決され、上院に上程された。国家人権審議会(CNDH)によると、伯において不同意性交等罪の被害に遭った未成年者は、過去3年間で16万人強に上っており、女性議員は、同法案の否決を主張したが、保守派に押し切られた形となった。(5日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(5)5日、下院において、生産性の基準を満たしていなくても、農業活動が行われている土地であれば、農地改革を理由とした土地接収の対象にならないとの法案が可決され、上院に上程された。(5日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

5.COP30

(1)本日(6日)、開催地のベレンでは、COP30の開幕に先駆けて、首脳級会合が開催される。この会合では、COP30の方向性が定められると共に、伯が提唱している(TFFFトロピカル・フォレスト・フォーエヴァー・ファシリティー)等、気候変動対策に対するコミットメントが確認されることになっている。ルーラ大統領は5日、ベレン市内のエミーリオ・ゲルジ博物館において、コンゴ共和国、フィンランド、コモロ連合、スリナム、ホンジュラス及びパプアニューギニアの首脳、ライエン欧州委員会委員長、タハ・アフリカ開発銀行総裁及び丁薛祥中国国務院副総理とバイ会談を行った。5日、バイア州都サルヴァドール市に到着したマクロン仏大統領は6日、ベレンに移動し、ルーラと会談する予定。(6日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)EUは5日、温暖化効果ガスの排出を2040年までに1990年比で90%削減するとの目標を発表した。2035年までの削減目標は、66.25%から72.5%の間である。EUは、中国、米国、インドに続いて4番目に排出量が多い。(6日付コレイオ・ブラジリエンセ)

6.新党Missãoの承認手続

選挙高等裁判所(TSE)は4日、新党Missão(ミッション)の設立を承認した。Missãoは、政治団体MBL(ブラジル自由運動)を母体とする政党である。MBLは、2014年に設立された政治団体で、2016年にルセーフ大統領(当時)の弾劾要求運動を展開したことで注目を集めた。キン・カタギリ下院議員は、MBLの創設メンバーであり、現在も幹部を務めている。Missãoの党首に内定しているレナン・サントスは、「我々は、右派ではあるが、ボルソナーロ派やNovo党とは一線を画しており、明年の選挙で彼らと選挙協力することはない。Missãoは、ルーラ政権に不満を持つ若年層を中心に支持を集めることにしている」と述べた。(5日及び6日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

7.外交

(1)ルーラ大統領は4日、外国特派員との記者会見において、「米国とベネズエラの衝突が地上の侵攻作戦に進展しないことを望んでいる。トランプ政権は、(麻薬組織の)船舶に攻撃するのではなく、ラ米諸国の麻薬組織対策を支援すべきである。トランプ大統領には、政治的な問題は、武器ではなく、対話により解決すべきであると伝えた。(米国とベネズエラの間で)対話が不足しているというのであれば、協力する用意がある。我々は、南米で紛争が勃発することは望んでいない」と述べた。(5日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)ルーラ大統領は、今月9日からコロンビアで開催される、ラ米・カリブ海諸国共同体(Celac)・EU首脳会議に出席する予定。ルーラは、ベネズエラ情勢、特に米国がカリブ海に空母を派遣し、麻薬組織の物と見られるボートを攻撃している件が軍事紛争に発展する可能性を懸念している。ペトロ・コロンビア大統領は5日、ルーラが「麻薬組織との戦いは、侵攻や人権侵害抜きで行うべきである」と述べている動画をSNSに投稿した。ペトロ大統領は、トランプ米大統領を批判したことで、同大統領から「国際麻薬組織のリーダー」と批判された他、米国から制裁を受けている。(6日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)ベネズエラは、9月にラテンアメリカ・カリブ核兵器禁止機関(Opanal)に対し、「米国は、カリブ海に原子力空母と攻撃型原潜を展開していることで、ラテンアメリカ・カリブ核兵器禁止条約(トラテロルコ条約)に違反している」との申し入れを行った。米国は、同地域に属領を持っている宗主国に同地域の非核化を求める付属議定書Ⅰを締結している。これに対し、伯は、Opanalでの議論において、「トラテロルコ条約は、核兵器を禁止するためのものであり、船舶の動力源としての原子力の利用は禁じられていない」と反論している。これは、伯が原潜の保有を目指していることが背景にあると見られている。(6日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

8.世論調査

 シンクタンクのMore in CommonとQuaest社が実施した世論調査によると、近年、ルーラ派とボルソナーロ派の二極化が続いているにも拘わらず、伯の有権者の過半数(54%)は、右派でなければ、左派でもない中道であることが判明した。保守派は全体の27%で、革新派は19%である。保守派の内、21%が「伝統的な保守派」で、6%がより先鋭的な「怒れる愛国者(極右)」である。革新の場合、14%が「伝統的な左派」で、5%が「極左」である。「怒れる愛国者(極右)」の62%が大手マスコミを信用していないのに対し、「左派(伝統的な左派及び極左)」で、大手マスコミを信用していないのは31%に過ぎない。(5日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

 

1.COP30

(1)6日、COP30の準備会合である首脳級会合が2日間の日程で開幕した。ルーラ大統領は、開会式において、先住民ヤノマミ族の伝説(世界の終末には天が落ちてくる)を引用し、「COP30が天を押し上げることを期待する」と述べた。ルーラは、化石燃料への依存解消とパリ協定の遵守を主張し、ルーラ政権3期目でアマゾンの森林伐採が半減したことを強調し、森林保全の必要性を訴えると共に、気候変動対策が進んでいないことに関して国連と先進国を批判した。また、ルーラは、防衛費の削減、富裕層への増税等により、1.3兆米ドルを温暖化対策に投入することを主張。ルーラは、昼食会の際、熱帯雨林保全のための「トロピカル・フォレスト・フォーエヴァー・ファシリティー(TFFF)」の創設を発表した。伯は、同基金に10億米ドル、ノルウェーは30億米ドル、インドネシアが10億米ドル、フランスが5億ユーロ、ポルトガルは100万ユーロ(合計約55億米ドル)の拠出を発表している。伯政府は、同基金のために合計1250億米ドルを調達しようとしている(内訳:各国政府250億米ドル、民間1千億米ドル)。伯政府は、各国政府から調達する250億米ドルの内、100億米ドルを年内に調達することを期待している。(7日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)ペトロ・コロンビア大統領は、6日の首脳級会合において、「(気候変動について否定的な)トランプ米大統領は100%間違っている。米国政府の姿勢は、気候危機対策にとって最大の障害となっている」と批判した。ボリッチ・チリ大統領も「トランプは、気候危機など存在しないと公言しているが、それは嘘である」と批判。マクロン仏大統領は「気候問題に関しては、イデオロギーではなく、科学を優先すべきである」と発言。グテレス国連事務総長は、「エネルギー転換に対する政治的意欲が欠けている。既に交渉の段階は過ぎ、実行の時に来ている」と述べた。英国のウィリアム皇太子は、「人類は今、岐路に立っている。今、勇気と協力と地球の未来に対する揺ぎ無いコミットメントが求められている」と強調。(7日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)グリーンピースは6日、「ルーラ大統領は、首脳級会合において力強いスピーチを行ったものの、化石燃料からの脱却を主張する一方で、アマゾン川河口の海底油田開発を進める等の矛盾が目についた。2030年までに森林伐採をゼロにし、化石燃料から脱却するためには、COP30においてロードマップを作成し、具体的な実行計画を策定し、資金調達を実現する必要がある。伯には、そのためのリーダーシップが求められている」と批判した。(7日コレイオ・ブラジリエンセ)

(4)ルーラ大統領は7日、石油の開発による収益を使ってエネルギー転換のための基金を創設すると表明した。ルーラは、2033年までにバイオ燃料の使用を現在の4倍に増やすことで、化石燃料の使用を段階的に減らすことを主張している。これは、伯政府がアマゾン川河口の海底油田開発を許可したことに対する批判を念頭に置いた発言であるが、専門家は、「ルーラの発言は矛盾している。新たな油田を開発することなく、化石燃料の使用を削減すべきである」と批判している。(8日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(5)ドイツのメルツ首相は7日、ルーラ大統領とバイ会談を行った後、「ドイツは、トロピカル・フォレスト・フォーエヴァー・ファシリティー(TFFF)に資金供与を行うが、その金額は、連立政権の合意を得た上で、予算に組み込まなければならないので、現時点では発表できない」と述べた。ドイツが大口の資金供与を発表して、資金調達の呼び水となることを期待していた伯政府にとっては期待外れの結果となった。英国政府は、予算不足を理由にTFFFへの投資を見送った。一方、オーストラリアのビリオネアであるアンドリュー・フォレスト氏は、TFFFに1千万米ドルを投資すると発表した。アダッジ財務相は10日、「伯がCOPの議長国を務めている間に100億米ドルをTFFFのために調達することを期待している。現在、既に55億米ドルの供与が発表されているが、ドイツの供与額によっては、100億米ドルを超えるかもしれない。また、我々は、オランダ、UEA及び中国の資金供与に期待している」と述べた。(8日及び11日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(6)7日、EUと中国が伯の提唱する排出権取引市場の統一に向けた有志連合に参加すると発表した。これにより、EU及び8ヶ国(伯、中国、英国、カナダ、チリ、メキシコ、アルメニア及びザンビア)が参加を表明したことになるが、伯が目標に掲げている22ヶ国には届いていない。(8日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(7)パリ協定の締約国(195ヶ国)の内、9日までに温室効果ガスの新たな削減目標(NDCs)を提出した国は、79ヶ国に過ぎない。排出量にすれば、全体の64%に過ぎず、このままでは、COP30は、削減目標に関しては不透明なまま、交渉を行わなければならなくなる。(9日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(8)10日、COP30が開幕した。ルーラ大統領は、開会式でスピーチを行った際、「戦争を行っている人達がCOP30に来ていれば、気候問題の解決に1.3兆米ドルを投入する方が、戦争に2.7兆米ドルも使うより安上がりだということに気付いていたであろう」と述べ、名指しすることなく、首脳が欠席した、米、中、露を批判した。また、カリブ海を襲ったハリケーン「メリッサ」とパラナ州中西部で発生した竜巻を例に挙げ、パリ協定の排出削減目標を遵守することの重要性について強調した。更にルーラは、「我々は、(温暖化に関する)科学的エビデンスを否定する否定論者と戦わなければならない」と述べ、暗にトランプ米大統領を批判した。(11日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(9)トランプ米大統領が「アマゾンの森林は、ブラジル人達が環境団体が通るためにアマゾンに4車線の道路を建設したために破壊された」とSNSに投稿した。この道路は、パラー州政府がCOP30開催のために建設した道路で、ベレン市近郊の環境保護区を横断している。これに対し、バルバーリョ・パラー州知事(MDB)が「トランプ大統領は、道路の件について云々するのではなく、気候変動を解決するための道筋をつけるべきである。アマゾン、特にパラー州における森林伐採は、記録的な減少を記録している」と反論した。(11日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(10)ニューソン・カリフォルニア州知事(民主)は10日、サンパウロ市内で開かれたシンポジウムに出席した際、トランプ政権が米政府の代表をCOP30に派遣しなかったことを批判し、「今の米国政府は、誰も伯のことをリスペクトしていない。50%の関税にしても、伯に対して中指を立てているのと同じであり、全く、恥かしいことである。自分は、米国の不在を穴埋めするために伯に来ている」と述べた。米国の連邦政府は、COP30に参加していないが、米国からは100人以上がCOP30に参加する。州知事では、ニューソン知事の他、ウィスコンシン州とニューメキシコ州の知事が参加する予定。(11日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(11)COP30のコヘア議長によると、国連に気候変動理事会を創設する案について議論が始められている。これが実現すれば、各国に対して排出削減目標等の履行を求める権限が国連に与えられることになる。(11日付コレイオ・ブラジリエンセ)

2.ボルソナーロ前大統領の裁判

(1)7日、連邦最高裁判所(STF)第1小法廷において、クーデター未遂等により禁固27年3ヶ月の有罪判決を言い渡されたボルソナーロ前大統領の異議申し立て(embargos de declaração-判決文不明瞭点解明願い)が全会一致で棄却された。ブラガ・ネット元文官長、トーヘス元法務治安相等、他の被告6名の申し立ても棄却された。弁護側は今後、別の異議申し立て(embargos infringentes)を行う可能性があるものの、「embargos infringentes」は、第1小法廷を構成する5名の判事の内、2名が無罪を主張した場合にのみ認められるもので(ボルソナーロの裁判では、判事5名の内、4名が有罪を主張した)、報告官のモラエス判事によって門前払いにされる可能性が高い。また、弁護側は、今回の「embargos de declaração」の結果に対して再び「embargos de declaração」を行う可能性がある。その場合、棄却はほぼ確実であるが、ボルソナーロの収監を明年1月以降に先送りするための時間稼ぎにはなる。(8日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)フラヴィオ・ボルソナーロ上院議員(PL-RJ。ボルソナーロ前大統領の長男)は7日、ボルソナーロの控訴が棄却された件に関し、「父ボルソナーロは、迫害を受け続けているが、我々が巻き返しを図ることにより、大統領に返り咲くであろう」と述べた。ボルソナーロ派の間では、ボルソナーロ前大統領がフレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)を後継者として信用していないため、3人の息子の内、フラヴィオを後継の大統領候補に指名する可能性が高いのではないかと見られている。(9日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

3.ルーラ政権

8日、パラナ州中西部において竜巻が発生し、6名が死亡、750名が負傷した。リオ・ボニート・ド・イグアス市(クリチバ市から400km。人口1.39万人)では、家屋の90%が被害に遭った。ラチーニョ・Jr・パラナ州知事(PSD)は、緊急事態宣言を布告した。ルーラ大統領は、ホフマン大統領府政治調整担当庁長官の他、保健省及び統合・地域開発省の代表を現地に派遣し、救援活動と復興を全面的に支援すると発表。ホフマン長官は、FGTS(勤続年限保障基金)等の資金を被災者の支援に使用することを検討中と発言。(9日付コレイオ・ブラジリエンセ)

4.議会関連

(1)6日、国家社会保障院(INSS)の不正疑惑(年金から組合費等が不当に天引きされていた件)に関する議会合同調査委員会(CPMI)において、オニックス・ロレンゾーニ元労働社会保障相の証人喚問が行われた。ロレンゾーニは、2021年から2022年(ボルソナーロ政権の3年目と4年目)に労働社会保障相を務めた。ロレンゾーニは、「在任期間中は、当時のボルソナーロ大統領の指示に従い、給付金の受給手続きの迅速化と年金受給者を対象とする貸付制度(empréstimo consignado)の規制を優先していたため、本件については手が回らなかった。この問題については、2010年当時から指摘されていたが、当時の労働社会保障省では通常の行政手続により対応が行われていた」と述べ、不正への関与については否定した。(7日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)モッタ下院議長は7日、ギリェルメ・デヒーテ・サンパウロ州政府保安局長を政府の犯罪組織対策法案(PL Antifacção)の報告官に指名した。デヒーテは、組織犯罪対策法案の審議に参加するため、保安局長を休職し、連邦下院議員に戻っている。デヒーテは、治安対策に関しては強硬派として知られており、Comando Vermelho等の大規模な犯罪組織をテロ組織に認定することを主張しており、これに反対している政府与党は、モッタ議長の決定を不満としている。(8日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)現在、下院では、政府の犯罪組織対策法案(PL Antifacção)の報告官に指名されたギリェルメ・デヒーテ下院議員(PP-SP)の下で、犯罪組織の捜査に関する連邦警察の権限を縮小する方向で修正が加えられようとしている。これは、連邦警察がテロ組織に認定された犯罪組織、民兵組織等の捜査を行えるのは、州知事の要請がある場合に限るというものであり、連邦警察は、「連邦警察は、憲法の定める権限や所掌業務が縮小されることを憂慮している」と反発している。ホフマン大統領府政治調整庁長官(PT)は、「デヒーテ議員の修正案は、犯罪組織を利するものであり、受け入れ難い」と批判。(11日付コレイオ・ブラジリエンセ)

5.2026年選挙

サンタカタリーナ州の右派は、明年の同州における上院議員選挙では、ボルソナーロ派のカロル・デ・トニ下院議員(PL-SC)とエスペリジアン・アミン上院議員(PP-SC。再選)を擁立することにしていたが、ボルソナーロ前大統領が次男カルロス(PL-RJ。リオデジャネイロ市議)を同州から上院議員に立候補させることを決めたため、メロ・サンタカタリナ州知事は、カロル・デ・トニ議員に対し、上院議員選出馬を諦めるか、でなければ、PLを離党して、PL以外の政党から立候補するよう通告した。これにより、同州における右派は、真っ二つに分裂している。サンタカタリーナ州は、ボルソナーロの支持者が多いことで知られており、ボルソナーロの狙いは、次男を送り込むことによって、同州を拠点の一つとすることにあると見られている。(8日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

6.外交

(1)ルーラ大統領は8日、ライエン欧州委員会委員長と会談した後、「EU・メルコスール・FTAは、本年12月20日のメルコスール首脳会議において署名が行われるであろう」と述べた。但し、欧州議会では、一部の議員が同FTAに反対して欧州司法裁判所に提訴する等、FTAの締結に抵抗している。また、フランスのGenevard農相が「我々は我国の農業生産者を支持しているため、メルコスールとのFTAには署名しない」と述べている。(9日及び10日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)ルーラ大統領は9日、コロンビアで開催されたEU・Celac(ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体)首脳会議においてスピーチを行った際、「EU・メルコスール・FTAが来月20日のメルコスール首脳会議において締結されることは、多国間主義と多極化に基づく世界秩序の構築にとって重要である。これによって、貿易においても多国間主義の強化が可能になる」と述べた。但し、今回の首脳会議は、欠席が目立ち、会議の空洞化が指摘された。多くの南米諸国は、米国がペトロ・コロンビア大統領に制裁を科していることから、欠席することで、米国を刺激することは避けた。尚、ルーラもベネズエラ情勢について言及することは避けた。(10日付コレイオ・ブラジリエンセ)

 

1.世論調査

(1)Genial/Quaest社が今月6日から9日にかけて2004人を対象に実施した世論調査によると、ルーラ政権の支持率は、支持47%(前月比1ポイント減)、不支持50%(1ポイント増)、分からない/無回答3%(±0)となり、本年5月以降、上昇傾向にあった支持率が初めて減少に転じた。ルーラ政権に対する評価は、「ネガティブ」38%(1ポイント増)、「ポジティブ」31%(2ポイント減)、「普通」28%(1ポイント増)、「分からない/無回答」3%(±0)であった。支持率が約半年振りに減少した背景には、先月28日のリオデジャネイロの犯罪組織掃討作戦があると見られている。同作戦の支持率は67%に上っており、不支持の25%を大きく上回っている。「掃討作戦で121名の死者を出した、リオデジャネイロの警察はやりすぎたのではないか」との問いに対する答えは、「ノー」が67%、「イエス」が29%で、国民の大半は、同作戦を支持しており、同作戦を支持しなかったルーラ政権を批判的に見ている。ルーラ大統領が同作戦の4日前に「麻薬密売人は、(麻薬の)使用者の被害者である(麻薬の売り手よりも買い手の方が悪い)」と発言した件に関しては、81%が反対と答えており、賛成は僅か14%であった。「伯にとって何が最大の懸念事項はなにか」との設問では、治安が38%(先月比8ポイント増)で最も多かった。続いて、経済15%(1ポイント減)、社会問題13%(5ポイント減)、汚職13%(1ポイント減)、保健10%(1ポイント減)の順となっている。(12日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(2)Genial/Quaest社の次期大統領選に関する世論調査によると、第1回投票に関しては、10のシナリオの内、何れの場合もルーラ大統領が支持率31%~39%でリードしている。ボルソナーロ前大統領(PL)が出馬する場合、ルーラは32%で、ボルソナーロは27%である。他候補の支持率は以下の通り:フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)16%~21%、エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員(PL-SP)15%~27%、ラチーニョ・Jr・パラナ州知事(PSD)7%~18%。決選投票に関しては、ルーラ42%、ボルソナーロ39%で、両者の差は、9月の13ポイントから3ポイントに激減している。ルーラとフレイタス知事が争う場合は、ルーラ41%、フレイタス36%であるが、こちらも両者の差は先月の12ポイントから5ポイントに縮まった。(13日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

2.米伯関係

ルビオ米国務長官とヴィエイラ外相は本日(13日)、ワシントンにおいて会談し、関税交渉を行う予定。両外相は12日、ナイアガラで開催されたG7外相会合において、5分間に亘り立ち話をした。ベッセント米財務長官が、米国におけるコーヒーの高騰を受け、コーヒーに対する関税の引き下げに前向きな発言を行っていることから、伯側は、コーヒー対する追加関税(40%)の引き下げに期待を寄せている。尚、ヴィエイラ外相は12日、ウクライナ及び韓国の外相と会談を行った。(13日付コレイオ・ブラジリエンセ)

3.議会関連

(1)政府の犯罪組織対策法案(PL Antifacção)の報告官を務めるギリェルメ・デヒーテ下院議員(PP-SP)は、犯罪組織の捜査に関して連邦警察の権限を縮小する方向で、法案を修正しようとしていたが、「連邦警察の権限縮小は、犯罪組織を有利にするだけ」等とSNS上でも徹底的に批判されたため、11日、連邦警察の権限縮小は断念することとし、また、テロ対策法を改正して犯罪組織をテロ組織に認定することも断念した。デヒーテは、記者会見の際、「連邦警察の権限を縮小しようとしていたというのは誤解であり、最初からそのつもりはなかった。本件に関する法案を『犯罪組織対策基本法案』と改称し、より効率的な犯罪組織対策を可能とすべく、法案の改良に取り組んでいる」と述べた。同席したモッタ下院議長は、「犯罪組織対策は、下院の優先案件である。我々は、関係機関の権限は維持しつつ、法制の近代化を図ることにしている」と述べた。同議長は、デヒーテを報告官に指名したことで批判を受けていた。尚、レヴァンドフスキ法務治安相は、「デヒーテは、政府が半年かけて練り上げた犯罪組織対策法案を僅か24時間で別物に作り直した」と批判した。(12日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)11日、上院において、未成年者や障碍者等、脆弱な状況に置かれた女性に対する性犯罪の厳罰化(現行の禁固8~30年が10~40年に引き上げられる)と被害者の支援に関する法案が可決され、大統領の裁可に付された。(12日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)犯罪組織対策法案(PL Antifacção)の報告官を務めるギリェルメ・デヒーテ下院議員(PP-SP)は12日、与野党の批判を受け、同法案に関する新たな報告書を提出した。同議員は、この数日間で報告書を4回も書き直したことになる。同議員は、政府の申し出を受け、犯罪組織の資産が押収された場合、押収が連邦警察によって行われたのであれば、資産は連邦警察の物とし、連邦警察と地方警察が合同で行ったのであれば、折半することにした(それまでの報告書では、地方警察が押収したのであれば、地方警察の物にするとだけ記されており、連邦警察については明記されていなかった)。また、ドローンを使用した犯罪の厳罰化が追加された。モッタ下院議長は、12日に同法案の採決を行うつもりであったが、新たな報告書が提出されたことと、右派の州知事グループが採決の延期を申し入れたこと(下記(4)参照)を受け、採決を今月18日に延期した。(13日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(4)12日、カストロ・リオデジャネイロ州知事(PL)、カイアド・ゴイアス州知事(ユニオン・ブラジル)等、右派の州知事が下院を訪れ、ギリェルメ・デヒーテ下院議員(PP-SP)と面会した際、犯罪組織対策に関しては同議員の法案を支持すると表明した。また、州知事達は、モッタ下院議長に対し、より広範で、強力な法案を作るためとして、犯罪組織対策法案の採決を先送りするよう、求めた。尚、上院本会議場では、先月28日のリオデジャネイロ州警察による犯罪組織掃討作戦において殉職した警察官4名の追悼式典が行われ、カストロ・リオデジャネイロ州知事とギリェルメ・デヒーテ下院議員(PP-SP)等が出席した。(13日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(5)12日、上院において、ゴネー検事総長の再任が賛成45、反対26により、承認された。承認に必要な41票を僅か4票だけ上回る薄氷の勝利であった。2年前にゴネーが初めて検事総長に任命された時は、65名の上院議員が賛成票を投じている(反対は11)。これは、ゴネー検事総長がボルソナーロ前大統領をクーデター未遂の容疑で起訴し、裁判の際にその有罪を主張したことを不満とするボルソナーロ派の議員が反対票を投じたことが影響している。投票に先立って行われた質疑応答では、フラヴィオ・ボルソナーロ(PL-RJ)、エスペリジアン・アミン(PP-SC)、マギノ・マルタ(PL-ES)等のボルソナーロ派議員が揃ってゴネーを批判し、その再任に反対を表明した。これに対し、同検事総長は、「クーデター未遂の裁判は、純粋に法的な観点に基づいて行われた。連邦検察庁が特定の政治家や政治グループを迫害しているとの事実はない。検察は、三権に干渉することなく、粛々と業務を遂行する」と強調した。尚、今回の投票結果は、バホーゾ前連邦最高裁判所(STF)長官の後任人事に影響を及ぼすと見られている。現時点では、新しいSTF 判事にはメシアス連邦総弁護庁(AGU)長官が有力視されているが、パシェコ上院議員(前上院議長)とダンタス前連邦会計検査院(TCU)長官も候補に挙がっている。メシアスがSTF判事に任命された場合、ゴネー検事総長と同様に、上院の承認を取り付けるのは難しくなる可能性がある。(13日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(6)12日、上院において、年金から組合費や団体の会費等を源泉徴収することを禁止するとの法案が可決され、大統領の裁可に付された。これは、年金受給者の同意を得ることなく、組合費等が不当に徴収されていた問題の再発防止が目的とされている。(13日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

4.司法

(1)11日、連邦最高裁判所(STF)第1小法廷において、クーデター未遂の被告の内、「第3グループ(陸軍特殊部隊「Kids Pretos」のメンバー等)」の裁判が開始された。ゴネー検事総長は、口頭弁論の際、「被告達は、2022年の大統領選の後、ルーラ大統領の就任を阻止し、ボルソナーロ前大統領に大統領を続けさせるため、ルーラ、アルキミン副大統領及びモラエス・STF判事の殺害を組織的に企てた他、陸軍司令部に対して武装蜂起を迫り、クーデターを決行しようとした」として、10名の被告全員の有罪を主張した。(12日付コレイオ・ブラジリエンセ)これに対し、弁護側は、「検察側が提示した証拠は、マウロ・シディ元大統領付副官の供述を編集したものに過ぎない」として、無罪を主張した。(12日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)11日、選挙高等裁判所(TSE)において、デナリウン・ロライマ州知事(PP)の当選取消請求に関する裁判が再開され、メンドンサ判事が同知事の有罪を主張し、7名の判事の内、2名が同知事の当選取消に賛成したところで、ヌネス・マルケス判事により、裁判が再び中断された。同知事は、2022年のロライマ州知事選で有権者に「生活基本バスケット(Cesta básica)」や建築資材を無料配布し、有権者を買収したとして、第2審では4回も有罪を言い渡されている。(12日付コレイオ・ブラジリエンセ)

5.外交

ルーラ大統領は、来月20日のメルコスール首脳会議の開催都市をリオデジャネイロからフォス・ド・イグアスに変更した。これは、アルゼンチンとパラグアイが「その日に大統領はリオデジャネイロには行けない」との伯外務省に通告したためで、両首脳の出席を促し、会議の空洞化を回避するため、開催地を両国に近い場所に変更したとされている。(13日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

6.COP30

11日夜、COP30の周辺でデモ行進していた活動家の一部が会場に乱入しようとして警備員と衝突するという騒ぎが発生した。デモ隊は、保安検査所を突破したものの、警備員によって阻まれ、制限区域に入ることはできなかった。デモ隊は、パレスチナの旗を掲げ、「アマゾン川河口の海底油田開発反対」を叫んだ。(12日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)

 

1.治安

(1)ルーラ大統領は13日、アルキミン副大統領を含む閣僚9名を招集して治安対策に関する会議を開いた。国民の67%がリオデジャネイロ州警察の犯罪組織掃討作戦を支持し、また、8割以上の国民がルーラの治安対策に関する失言を批判している。また、政府支持率は半年振りに低下している。ルーラは、右派が勢いを取り戻していることに危機感を抱いている。ルーラは、ギリェルメ・デヒーテ下院議員(PP-SP)の犯罪組織対策法案にはまだ問題点があるとして、その修正を求めると共に、関係閣僚に対し、政府の提出した治安対策に関する憲法改正案(PEC)の早期成立に向けて議会対策を強化するよう、求めた。デヒーテ議員は、連邦政府の求めに応じて、犯罪組織の資産を連邦警察にも分配する等、条文の修正に応じている。一方、野党は、犯罪組織をテロ組織に認定することに固執しており、同議員に対する圧力を強めている。(14日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)右派は、リオデジャネイロ州警察の犯罪組織掃討作戦が国民の支持を得、治安対策が最大の関心事となったことを利用して、ルーラ政権に対する攻勢を強めているが、ボルソナーロ派のギリェルメ・デヒーテ下院議員(PP-SP)が政府の犯罪対策法案(PL Antifacção)を修正し、連邦警察の権限を縮小しようとしたことが批判されたため、これが原因で、右派の評判が落ちることを懸念している。野党副院内総務で、連邦警察官出身のサンデルソン下院議員(PL-RS)は、「(デヒーテの)やり方はまずかった」と批判している。尚、右派は、政府の治安対策に関する憲法改正案(PEC)に反対しているが、これも一歩間違えれば、有権者に悪印象を与えかねない。(14日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)モラエス・STF判事は13日、カストロ・リオデジャネイロ州知事(PL)、フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)、カイアド・ゴイアス州知事(ユニオン・ブラジル)及びギリェルメ・デヒーテ下院議員(PP-SP)に対し、ボルソナーロ前大統領との面会を許可した。面会は、11月26日から12月10日にかけて、個別に行われる。治安対策に関してルーラ政権への攻勢を強めることや次期大統領選等について話し合うのではないかと見られている。(14日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(4)モッタ下院議長は、犯罪組織対策法案(PL Antifacção)の採決を今月18日から19日に行うことにしているが、報告官のギリェルメ・デヒーテ下院議員(PP-SP)が5番目となる新たな法案を提出する可能性があるため、採決が先送りされる可能性がある。尚、右派は、Comando VermelhoやPCC等の犯罪組織をテロ組織に認定し、テロ対策法を適用することを強く主張しているが、専門家は、「犯罪組織をテロ組織に認定しただけでは、組織を壊滅させることはできない。仮にテロ組織に認定した場合、伯において複数のテロ組織が野放しになっていると見なされれば、米国がカリブ海に海軍の打撃軍を展開して、麻薬組織の物と見られる船を攻撃しているように、外国の軍事介入を招く可能性がある」と警鐘を鳴らしている。(17日付コレイオ・ブラジリエンセ)

2.米伯関係

(1)ヴィエイラ外相は13日、ワシントンにおいて、ルビオ米国務長官と会談を行った後、「米側は、伯の輸出品に対する関税を巡る問題について早急に解決することに関心を示した。ルビオ国務長官によると、トランプ米大統領は、マレーシアでルーラ大統領と会談したことを非常に気に入っており、伯と良好な関係を築くことを望んでいる。両国は、合意への道筋をつけるため、『暫定合意』を結ぶことで一致した」と述べた。尚、ルビオ長官は、ヴィエイラと握手している画像をSNSに投稿し、「同外相とは互いに重要な事柄について話し合った。両国の通商関係については相互主義的な枠組が構築されようとしている」とコメントした。(14日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)米共和党の議員が所謂「エプスタイン・ファイル」の内、ルーラ大統領の名前が記載されている電子メールを公開した。これは2018年9月にエプスタインが未確認の相手と電子メールで会話をしたもので、エプスタインは、「獄中のルーラに会いに行ったノーム・チョムスキー(米国の言語学者)から電話をもらった。その時、ルーラも傍にいた」と書いていた。実際、チョムスキーは、2018年9月にルーラと面会していたことが判明。これに関し、伯大統領府は、「そのような通話が行われたとの事実はない」と否定。連邦警察も「ルーラが収監されていた独房には電話はなく、また、面会者は、通信機器の持ち込みを禁止されているため、そのような通話を行うのは不可能」と否定。尚、エプスタインは、メールの中で、「これからはボルソナーロだ」と書いたのに対し、相手は「彼(ボルソナーロ)は1回目の投票で勝つ。彼は、伯の空挺部隊出身の友人だ」と返していた。(14日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)トランプ米大統領は14日、牛肉、トロピカルフルーツ、コーヒー等の食品に対する相互関税(10%)の撤廃を発表した。コスタ文官長やホフマン大統領府政治調整庁長官等は、「伯政府による努力の賜物であり、伯にとっての勝利である」と自画自賛したが、今回の撤廃は、全ての国を対象としており、伯に対する40%の追加関税はそのままとなっている。食肉や果物の業界団体は、今回の決定を歓迎しているものの、コーヒーの輸出業者は、「伯が他の輸出国と比べて不利な状況に変わりはないどころか、寧ろ、事態は悪化している。伯政府は、追加関税の大幅引き下げについて早急に交渉すべきである」としている。伯産コーヒーの対米輸出は、前年度比で50%以上も激減している。尚、トランプ大統領は、14日の発表の後、「これ以上、関税を引き下げる必要はないと思う」と発言しており、伯側を不安がらせている。(15日付フォーリャ・デ・サンパウロ及び16日付コレイオ・ブラジリエンセ)

3.ボルソナーロ前大統領の裁判

 18日、ボルソナーロ前大統領の異議申し立て「判決文不明瞭点解明願い(embargos de declaração)」を棄却したSTF第1小法廷の合議判決が官報に掲載された。これにより、弁護側が2回目の異議申し立てを期限内に行わなければ、有罪判決が確定する。新たに「判決文不明瞭点解明願い」を請求する場合、その提出期限は5日間で、合議の決定が全会一致でなかった場合に行える異議申し立て「embargos infringentes」の場合は15日間である。但し、後者の場合、第1小法廷の判事5名の内、2名が無罪を主張することが条件とされており、ボルソナーロの場合、4対1で有罪が決定されていることから、棄却される可能性が極めて高い。前者の「判決文不明瞭解明願い」によって判決の内容が覆されることは殆どないので、ボルソナーロの有罪が覆ることはないと見られている。(18日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

4.ルーラ政権

12日、国家教育開発基金(FNDE)の不正疑惑に関して連邦警察が行った強制捜査の対象にルーラ大統領の息子の元妻(カルラ・アリアネ・トリンダーデ)が含まれていたことが判明。トリンダーデは、FNDEの資金を運用していた自治体と契約を結んでいた企業(Life Tecnologia Educacional)の負担で2度ブラジリアを訪れており、同社のためにロビー活動を行っていたと見られている。同社は、架空請求を繰り返すことで、公的資金を横領していたと見られている。2021年から2023年にかけて、同社が受け取ったFNDEの資金(その一部は、基礎教育開発基金(Fundeb)からの資金)は約5200万レアルに上っている。(14日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

5.議会関連

(1)明年3月から4月にかけて、議員は、議席を失うことなく、党籍を変更できるが(政党の窓(janela partidária))、今のところ、これによって最も多くの議員を獲得するのは、PSD、MDB及びRepublicanosの3党であると見られている。特にPSDは、リラ・ペルナンブコ州知事とレイチ・リオグランド・デ・スル州知事を獲得する等、その求心力が注目されている。明年の選挙では、ボルソナーロ派に代表される極右の支持者が減り、より穏健な中道右派または中道派の支持者が増えるのではないかと予想されている。PLは、「政党の窓」により、相当数の議員がを失うのではないかと見られている。(17日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)、カイアド・ゴイアス州知事(ユニオン・ブラジル)、ゼマ・ミナスジェライス州知事(Novo)等、右派の州知事、並びにボルソナーロ派議員の一部は、ボルソナーロ支持者の支持は繋ぎ止めつつ、ボルソナーロ親子からは距離を置こうとしている。これは、ボルソナーロ前大統領に代わって右派のリーダーとなるためであるが、ボルソナーロに敵対する素振りを見せれば、支持者から「裏切り者」に認定され、その支持を失ってしまうため、表面上は、ボルソナーロに服従する振りをして、水面下では、ボルソナーロから距離を置くという、離れ業をしようとしている。(17日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

6.司法

(1)連邦警察と連邦総監督庁(CGU)は13日、年金受給者から不当に組合費等が徴収されていた件に関し、ステファヌット前国家社会保障院(INSS)総裁(2023年から本年4月まで総裁を務めた)等、9名を一斉検挙した。また、オリヴェイラ元労働社会保障相(ボルソナーロ政権)やエウクリデス・ペテルセン下院議員(Republicanos-MG)に対する家宅捜索が行われ、オリヴェイラは、足首にGPSを装着させられた。警察によると、ステファヌットはINSS総裁在任中、全国家族農業組合連合(Conafer)から月25万レアルの賄賂を受け取っていた。同連合は、年金受給者の同意を得ずに組合費を徴収していた。(14日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)STF第1小法廷は14日、エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員(PL-SP)に対する起訴状を受理した。エドゥアルドは、連邦検察庁から強制罪の容疑(ボルソナーロ前大統領の裁判を阻止するため、米国政府に対し、伯に40%の追加関税をかけさせると共に、モラエス・STF判事にマグニツキー法を適用するよう、働きかけを行った)で起訴されており、今回の決定により、刑事訴訟の被告となることが確定した。起訴状が受理された後、米国政府が食肉やコーヒー等に対する関税の引き下げを発表したことで、ボルソナーロ派は、この日、2度目の打撃を被った。尚、エドゥアルドは、「モラエス判事は、明年の上院議員選挙で右派が過半数を占めることを阻止することで、自らの弾劾を阻止しようとしている。自分は政治的迫害の被害者である」と批判。(15日付コレイオ・ブラジリエンセ)

7.外交

ルーラ大統領は、今月22日から23日にかけてヨハネスブルクで開催されるG20サミットに参加した後、24日にモサンビークを訪問する。本年は、伯とモサンビークの外交関係樹立50周年である。ルーラが同国を訪問するのはこれで4回目となる。(15日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

8.COP30

(1)スティル・UNFCCC事務局長は13日、伯政府宛に送付した書簡の中で、11日夜、デモ隊がCOP30の会場に乱入しようとした件について警備体制の不備を指摘し、伯側の対応を批判した。同事務局長によると、ルーラ大統領は、連邦警察に対し、実力行使によるデモ隊の排除を禁じていた。また、同事務局長は、エアコンの不具合等、運営上の問題が続出しているとして、何らかの対策を講じる必要があると通告した。これに対し、文官府は、「警備に関する責任は、国連警備局(UNDSS)にある」と反論。ラゴ・COP30議長は、「伯は、国連の要望には全て応えている」と述べ、事態の矮小化に努めた。(14日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)EUは13日、COP30の会場で開かれた式典において、アマゾン基金に2千万ユーロを無償供与すると発表した。EU代表団のSchuegraf団長は、「アマゾンの森林伐採が2022年比で50%削減されたことにより、7億トン以上のCO2の排出が阻止されたことを評価する。EUの気候変動対策に対するコミットメントは揺ぎ無いものであり、市場が森林伐採を促すことを根絶しようとしている」と述べた。マリナ・シルヴァ環境相は、「EUの無償供与は、気候変動対策について理解のある国同士のパートナーシップの賜物である」と歓迎した。(14日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)COP30の前半が終了したが、資金調達等のテーマに関して先進国と途上国の意見が一致せず、議論は平行線を辿っている。脱・化石燃料に向けて道筋をつけるとの伯の提案は、先進国の支持を得られたものの、気候変動対策のために1.3兆米ドルを調達するとの伯とアゼルバイジャンの提案は抵抗に遭っている。(17日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(4)17日、COP30の閣僚級会合が開幕した。アルキミン副大統領は、開会式において、「約束に終始する時は終わった。COP30は、交渉から実行の段階に移らなければならない。伯は、段階的な脱・化石燃料のロードマップをCOP30のレガシーとすることを提案している」と述べた。ルーラ大統領は明日(19日)、ベレンに戻り、COP30のイベントに参加し、グテレス国連事務総長と会談する予定。ルーラは20日、サンパウロ・モーターショーに出席した後、G20サミットに出席するため、ヨハネスブルクに向けて出発する予定(帰国は25日)。(18日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(5)メルツ・ドイツ首相は17日、「我々は世界で最も美しい国の一つに住んでいる。先週、訪伯した際、同行した記者達に『誰か、ここに残りたい人はいるか?』と聞いたら、誰も手を挙げなかった。皆、あの場所(ベレン)からドイツに帰国できたことを喜んでいた」と発言。これに対し、ノルマンド・ベレン市長(MDB)は、「傲慢で偏見に満ちた発言である」と批判。バルナ―リョ・パラー州知事(MDB)は、「温暖化に貢献している国の人間がベレンの暑さに文句を言うのはおかしい」と皮肉った。(18日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(6)伯政府は17日、先住民保護区の設定を推進するためのイニシアチブ「森林と土地所有(Pledge 2.0)」を発表し、新たに10カ所に先住民保護区を設定すると発表した。15ヵ国がこのイニシアチブを支持し、ドイツ、ノルウェー、オランダ、英国及び27の慈善団体が明年から2030年にかけて18億米ドルを供与(有償)することを約束した。グアジャジャラ先住民相は、「これは森林の守護者に対する直接的な支援である。伯は、2030年までに先住民とキロンボーラ(逃亡奴隷の子孫)のために6300万ヘクタールの土地を確保する」と述べた。(18日付コレイオ・ブラジリエンセ)

 

1.米伯関係

 トランプ米大統領は20日、牛肉、コーヒー、カカオ、果物(アサイー、バナナ、パパイヤ等)等、40%の追加関税が課された伯の輸出品の内、200項目以上に対し、11月13日に遡って追加関税を撤回するとの大統領令に署名した。その際、同大統領は、撤回の理由として、ルーラ大統領との会談を挙げた。ルーラは、サンパウロ・モーターショーに出席した際、「非常に喜んでいる。伯が相手をリスペクトしつつ、交渉を進めたお陰である」と述べた。伯食肉輸出産業協会(Abiec)等の業界団体も追加関税の撤廃に対して歓迎の意を表明した。但し、工業製品等は、40%の追加関税がかけられたままとなっており、両国の交渉は今後も続くと見られている。(21日付コレイオ・ブラジリエンセ)

2.STF判事人事

 ルーラ大統領は20日、メシアス連邦総弁護庁(AGU)長官を9月に退官したバホーゾ・STF 判事(前STF長官)の後任に任命した。メシアス(45歳)は、公務員として教育省や科学技術省等で勤務した後、上院の法律顧問、大統領府の法律担当補佐官、中央銀行法務担当官等を歴任した。また、2022年の政権移行チームに参加する等、与党PTとは以前から深いつながりがある。バプティスト教会に通う福音派としても知られている。STFでは、メシアスの任命は好意的に受け止められており、特に同じ福音派のメンドンサ判事は、メシアスの任命を大歓迎すると述べている。但し、女性や黒人の任命を期待していた向きは、「メシアスの任命は、STFの多様性に貢献していない」と批判している。尚、メシアスの任命は今後、上院から承認される必要があるが、ロドリゴ・パシェコ上院議員(PSD-MG。前上院議長)をSTF判事に強く推していたアルコルンブレ上院議長(ユニオン・ブラジルーAP)は、今回の人事を不満としている節があり、承認手続きが難航する可能性がある。実際、同議長は、メシアスの任命が発表された後、連邦政府にとって「爆弾議題(pauta-bomba)」とされる憲法改正案(保健所職員及び伝染病対策職員の特別年金制度導入)の採決を今月25日(火)に行うと発表した。これが成立すれば、200億レアル以上の支出増が予想されている。(21日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)

3.治安

(1)18日、下院本会議において、ギリェルメ・デヒーテ下院議員(PP-SP)が提出した、6番目となる新たな犯罪組織対策法案(PL Antifacção)が賛成370、反対110により可決され、上院に上程された。報告官のデヒーテ議員は当初、連邦警察を犯罪組織の捜査から外したり、犯罪組織の資産差し押さえの収益を連邦警察には分配しないとしていたが、連邦政府の求めにより、連邦警察の権限縮小については撤回した。今回の採決では、政府与党が敗北を被った形となったが、ホフマン大統領府政治調整庁長官は、「デヒーテの法案では、連邦警察の使える資金が減らされ、また、連邦歳入庁が犯罪組織の捜査に参加することが困難になる等、犯罪組織を有利にする点が含まれるため、上院では、これらの点に関して法案の修正を試みる」と述べている。尚、上院では、アレッサンドロ・ヴィエイラ上院議員(MDB-SE)が同法案の報告官に選出された。(19日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)18日、組織犯罪に関する議会調査委員会(CPI)が活動を開始した。初日の18日には、ロドリゲス連邦警察長官の質疑応答が行われ、同長官は、「現在の連邦警察の人員(約1.3万人)と予算(18億レアル)では不十分である。増え続ける業務に対応するためには、連邦警察官の数を2倍に増やし、予算は少なくとも25億レアルに増やす必要がある」と述べた。ギリェルメ・デヒーテ下院議員の犯罪組織対策法案に関しては、「現在の法案では、治安当局の管轄権を巡る争いや手続を生じさせることで、犯罪組織対策を弱体化させる可能性がある。また、連邦予算の使える資金が減らされたり、連邦歳入庁の権限が縮小される内容になっているのは遺憾である」と批判した。(19日付コレイオ・ブラジリエンセ)

4.マスター銀行の破綻

(1)中央銀行は18日、経営破綻に陥ったマスター銀行の裁判外清算を宣告した。同時に、連邦警察は、マスター銀行と同銀行を買収しようとしていたブラジリア銀行(BRB)に対する強制捜査を実施し、マルタに高跳びしようとしていた同銀行のダニエル・ヴォルカロ頭取及び幹部4名を逮捕した。マスター銀行は、本年3月に架空の有価証券(122億レアル相当)をブラジリア銀行に売却したことで、金融取引法違反に問われている。コスタ・BRB総裁は、18日の内に更迭された。BRBによるマスター銀行の買収を強く推進したイバネイス連邦直轄区(DF)知事(MDB)及び買収を承認したDF議会に対する批判が強まっている。レイラ・バーホス上院議員(PDT-DF)は、「(更迭された)BRB総裁によると、マスター銀行との取引や買収についてBRB内部で審査が行われなかったそうであるが、これが事実とすれば、イバネイス知事に対する疑惑が深まることになる」と述べた。(19日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)リオデジャネイロ州会計検査院によると、リオデジャネイロ州社会保障基金(Rioprevidencia。州公務員の年金基金)が同会計検査院の警告を無視して、マスター銀行の金融商品に26億レアルを投資していたことが判明。これに対し、同基金は18日、「実際の金額は9.6億レアルである。(同銀行の破綻により)公務員年金が影響を受けることはない」と表明。19日、アマパー州政府等、18の地方自治体(州及び市)の公務員年金基金がマスター銀行の金融商品に合計18.7億レアルを投資していたことが判明。投資先を選定する際、政治家の圧力があったのか否かが注目されている。(19日及び20日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)18日に逮捕されたマスター銀行のヴォルカロ頭取に最も近い政治家は、ボルソナーロ派のシロ・ノゲイラ上院議員(PP党首。ボルソナーロ政権では文官長を務めた)である。ブラジリア銀行(BRB)に対してマスター銀行の買収を促したイバネイス連邦直轄区知事(MDB)もボルソナーロ派として知られている。但し、ヴォルカノは、政界において幅広い人脈を構築しており、PT等、左派の政治家とも通じている。マスター銀行の共同経営者で、ヴォルカノと共に逮捕されたアウグスト・リマは、同じくバイア州出身のコスタ文官長(PT)及びジャッケス・ワギネル上院議員(PT-BA)の友人である。記録によると、ヴォルカノは、2023年から2024年にかけて、大統領府を3回訪れている。ヴォルカノは、派手な生活ぶり(フロリダの豪邸、2億レアル相当の自家用機、娘の15歳の誕生日パーティーに1500万レアルを使ったこと等)をSNS上で公開することで知られているが、政治家や司法関係者のパーティーやイベントに惜しみなく資金を提供し、自ら参加していたことでも有名である。(19日付オ・エスタード・デ・サンパウロ)

(4)連邦直轄区(DF)では、マスター銀行の買収を推進したイバネイス・DF知事(MDB)とレアォン・DF副知事(PP)に対する風当たりが強まっている。明年の選挙に関しては、イバネイスが上院議員、レアォンがDF知事に当選する可能性が極めて高いとされてきたが、両者が今回のスキャンダルにより痛手を負うのは必至と見られている。DF議会では、野党が本件に関して議会調査委員会の設置を求めている。(20日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

5.ボルソナーロ前大統領の裁判

(1)ボルソナーロ前大統領が刑務所に収監されるのを阻止しようとしているボルソナーロ派は、フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)が本件に関して積極的に動いていないと不満を抱いている。これに対し、同知事は、ボルソナーロが自宅軟禁を続けられるよう、STFに対し、水面下で働きかけを行っている。尚、モラエス・STF判事のスタッフは、ボルソナーロの収監先とされるパプダ刑務所を視察した。高齢者を収容する房には定員(177名)を上回る340名が収容されていることから、病人を収容できるPDF1刑務所または連邦直轄区(DF)軍警察の収容施設に収監することが検討されている。 (19日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)19日、ボルソナーロ前大統領の弁護団が新たな異議申し立てを行うための期間が開始した。「判決文不明瞭点解明願い(embargos de declaração)」の場合は今月24日(月)まで、STF第1小法廷の決定が全会一致でなかったことを根拠とする異議申し立て(embargos infringentes)は12月3日までに提出しなければならない。期限内に提出されない場合は、有罪判決が確定し、刑の執行手続に入る。(19日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

6.司法

18日、STF第1小法廷において、クーデター未遂犯「第3グループ(実行犯グループ)」の裁判が行われ、陸軍特殊部隊「Kids Pretos」の隊員を含む軍人8名及び連邦警察官1名が禁固24年~1年11ヶ月の有罪判決を言い渡された。エステヴァン・テオフィロ退役陸将(2022年末当時、陸軍地上作戦指揮官として、陸軍最高司令部の一員であった)は、証拠不十分により無罪を言い渡された。クーデター未遂の裁判で被告が無罪となったのはこれが初めて。これまでにクーデター裁判で有罪となったのは24名。陸軍特殊部隊「Kids Pretos」は、当時のルーラ次期大統領、アルキミン次期副大統領及びモラエス選挙高等裁判所(TSE)長官を暗殺することで、ルーラ政権の発足を阻止しようとしたとされている。(19日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

7.COP30

(1)伯連邦議会は18日、メルツ独首相の発言(記者を含め、皆、ベレンからドイツに帰国できて喜んでいる)に対する非難決議を採択した。ルーラ大統領は、「同首相は、パラー州の酒場に行って、踊ったり、郷土料理を試すべきであった。そうすれば、ベルリンは、パラー州とベレン市の魅力の10%も持ち合わせていないことが分かったであろう」とXに投稿した。ドイツ政府の報道官は19日、「(メルツ首相の発言は)必要以上に大きく取り上げられている。我国が世界で最も美しい国の一つであるとの発言は適切である。引き続き、伯との関係を強化していきたい」と述べ、発言を撤回するつもりがないことを明らかにした。(19日付コレイオ・ブラジリエンセ及び20日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)議長国の伯は18日、最終文書の草案を提出した。今後、この草案を叩き台にして交渉が行われることになる。草案は、資金調達、野心的な削減目標、一方的な貿易措置、透明性に関する報告書等、最も物議を醸しているテーマについて取り上げている。また、草案には、伯政府の提唱する脱・化石燃料に向けたロードマップの作成が盛り込まれている。草案は、多国間主義を唱え、パリ協定等の不履行を批判することで、COP30をボイコットしたトランプ米政権を暗に批判している。(19日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)マリナ・シルヴァ環境相は19日、ドイツ政府が伯のイニシアチブにより創設された「トロピカル・フォレスト・フォーエヴァー・ファシリティー(TFFF)」に10億ユーロ(約11.5億米ドル)を投資すると発表した。これにより、TFFFに対する投資を発表した国は、ドイツ、フランス、ノルウェー、インドネシアの4ヶ国となり、投資額の合計は67億米ドルに上っている。伯政府は、各国政府から250億米ドル、民間から1千億米ドルを調達することを目標に掲げている。(20日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(4)19日、トルコがCOP31の開催国となることが決まったが、COP31のプレ・イベントはオーストラリアで開催されることになった。両国は、COP31の開催国の座を巡って激しく争っていた。(20日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(5)ルーラ大統領は19日、COP30の会場を訪れ、「これまでの成果には非常に満足している。それは、グリーン経済の重要性についてトランプ米大統領を説得したくなるほどである」と述べた。また、脱・化石燃料を主張し、「石油会社、鉱山会社及び富裕層は、温暖化対策に対して資金を提供すべきである」と強調した。尚、ルーラは、グテレス国連事務総長の他、エジプト、サウジアラビア、中国、インド、ベネズエラ、EU、ドイツ、ポルトガル等の代表とバイ会談を行った。(20日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(6)20日、COP30の会場の内、閣僚級の交渉等で使用される「ブルーゾーン」において火災が発生し、参加者が避難する事態に陥った。火災は消し止められたが、21名が煙を吸う等して手当てを受けた。火災が発生した午後2時から交渉は中断したが、運営側は、予定に変更はなく、COP30は本日(21日)をもって閉幕すると発表。但し、ラゴ議長は、20日夜のニュース番組に出演した際、「交渉が長引けば、延長の可能性もある」と述べた。(21日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(7)21日、議長国ブラジルが新たに提示した合意文書の草案から「脱化石燃料に向けたロードマップの作成」や「化石燃料からの脱却」といった文言が削除されたことが判明。ロードマップについてはサウジアラビア等の産油国が反対しており、伯はその圧力に屈したと受け止められている。これに対し、コロンビア、フランス、ドイツ、英国、韓国、メキシコ等、30ヶ国以上が「ロードマップの作成が明記されない合意文書は拒否する」との書簡をラゴ・COP30議長に提出した。コロンビア政府は21日朝、脱化石燃料に関する新たな国際会議を明年4月に同国で開催すると発表し、脱化石燃料に向けたロードマップの作成を呼び掛けた。(21日付ヴァロール・エコノミコ電子版及びUol)

 

1.ボルソナーロ前大統領の裁判

(1)21日、クーデター未遂の裁判で禁固16年の有罪判決を言い渡されたアレシャンドレ・ラマージェン下院議員(PL-RJ)がマイアミに逃亡していたことが判明。旅券は押収されていたため、ロライマ州から陸路により、ガイアナ又はベネズエラに出国した模様。モラエス・STF判事は、連邦検察庁と連邦警察の要請を受け、同議員に対する逮捕状を発付した。(22日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)モラエス・STF判事は22日、ボルソナーロ前大統領が足首に装着された監視装置(GPS)を破壊しようとしたとの報告を受け、逃亡を阻止するための「予防的拘束(prisão preventiva)」令状を発付し、それまで自宅軟禁中であったボルソナーロの身柄を連邦警察ブラジリア支局の独房に移し、そこで未決拘留を続けさせることを決定した。モラエス判事は、ボルソナーロ派の連邦下院議員(エドゥアルド・ボルソナーロ、カルラ・ザンベーリ及びアレンシャンドレ・ラマージェン)が海外に逃亡したことを挙げ、ボルソナーロも逃亡を企てていたと判断した。折しも、22日には、ボルソナーロの長男であるフラヴィオ・ボルソナーロ上院議員が支持者をボルソナーロの自宅前に集め、「祈りのための集会(vigília)」を開こうとしていた。ボルソナーロは、支持者を使って騒ぎを起こし、その混乱に乗じて米国大使館に駆け込むつもりであったと見られている。(23日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)ボルソナーロは、身柄を拘束された後、警察官に対し、「好奇心から監視装置の中身を見たくなり、はんだごてを使って開けようとした」と述べた。ボルソナーロはその後、勾留前の予審では「服用している薬品の副作用により、意識が混乱して監視装置を開けようとしてしまった」と供述内容を変えた。ミシェーレ前大統領夫人、エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員等は、モラエス判事を激しく批判し、今回の予防的拘束は不当と主張している。尚、ボルソナーロの釈放を主張していたトランプ米大統領は、「残念だ」とだけコメントした。(23日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(4)24日、STF第1小法廷では、報告官であるモラエス判事がボルソナーロ前大統領を連邦警察の独房に移送することの必要性について主張し、他の判事3名がこれを支持したことで、全会一致により、モラエス判事の決定が確定した。(25日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(5)24日夜、新たな「判決文不明瞭点解明願い(embargos de declaração)」の提出期限が終了した。ブラガ・ネット元文官長等、4名の被告は新たに「判決文不明瞭点解明」を提起したが、ボルソナーロ前大統領の弁護団は提出しなかった。ボルソナーロの弁護団は、まだSTF第1小法廷の決定が全会一致で行われなかったことを根拠とする異議申し立て(embargos infringentes)を提起することができるが、これは、STF第1小法廷の判事5名の内、2名が無罪を主張した場合にのみ認められるため、提起しても棄却される可能性が極めて高い。そのため、専門家は、モラエス判事は何時でもボルソナーロの処遇について決定できる段階に入ったと見ている。ボルソナーロ派は、モラエス判事が刑の執行開始を決定した場合、現在、ボルソナーロが収監されている連邦警察の独房を収監先とすることを期待している。(25日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(6)連邦議会では、ボルソナーロ前大統領の恩赦法案が脇に追いやられた形となっていたが、ボルソナーロが連邦警察の独房に勾留されたことで、ボルソナーロ派の議員が再び恩赦法案の早期成立を求め始めた。PLのボルソナーロ派議員は24日、3時間以上に亘って協議した結果、パウリーニョ・ダ・フォルサ下院議員(Solidariedade-SP)の減刑法案を修正して、ボルソナーロの恩赦を認めさせることを決定した。尚、パウリーニョ・ダ・フォルサ下院議員は、モッタ下院議長に対し、減刑法案の採決を今週中に実施するよう求めている。(24日及び25日付コレイオ・ブラジリエンセ)

2.STF判事人事

 アルコルンブレ上院議長は、新しいSTF判事に盟友のロドリゴ・パシェコ上院議員(PSD-MG。前上院議長)ではなく、メシアス連邦総弁護庁(AGU)長官が指名されたことを不満とし、メシアスの承認に向けて積極的に動くつもりはないと周囲に漏らしている。STF判事の承認には、上院議員41名の賛成が必要であるが、今のところ、メシアスを支持すると公言しているのは約30名に過ぎない。そのため、承認手続が明年2月の休会明けに延期される可能性が高いとされている。メシアスは24日、アルコルンブレ議長を称賛し、上院の質疑応答には謹んで応じるとの書簡を同議長に送ったが、アルコルンブレは、「上院は、憲法の定める権限の範囲で、必要な手続きを行うだけである」と素っ気ない返事を返した。(25日付コレイオ・ブラジリエンセ)

3.連邦議会

 モッタ下院議長(Republicanos-PB)は24日、「リンジベルギ・ファリアス・PT下院院内総務との関係は断った。ファリアスとは如何なる関係も持つつもりはない」と表明した。ファリアスは、下院が金融取引税(IOF)の増税を否決したり、議員の不逮捕特権強化に関する憲法修正案(PEC)を通そうとしたり、犯罪組織対策法案の報告官にボルソナーロ派のギリェルメ・デヒーテ下院議員(PP-SP)が指名される等、事あるごとにSNS上でモッタ下院議長を批判してきた。尚、ファリアスは、「モッタ議長は未熟である。政治とは、仲良しグループの集まりではない。政府と下院議長の関係が悪化しているとすれば、それは、議長の責任である」と反発しており、政府与党とモッタ議長の関係悪化は避けられないと見られている。(25日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

4.外交

(1)トランプ米大統領は、G20議長国の南アフリカが提示したテーマ(包摂的な経済成長、不平等の緩和、食糧安全保障、AIの持続的利用)を不満としてG20サミットをボイコットし、同サミットで採択された文書には署名しないと表明した。これに対し、ルーラ大統領は21日、ラマポーザ・南アフリカ大統領と会談し、成果文書の作成に関して同大統領を支持すると表明した。(22日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)ルーラ大統領は22日、G20サミットと並行して、メルツ・ドイツ首相とバイ会談を行った。両首脳は、政治、経済及び環境分野で二国間関係を強化することで一致した。ルーラは、メルツ首相の招きにより、明年4月にハノーバーメッセの開会式に出席するために訪独すると述べるとともに、同首相の国賓訪問を要請した。(23日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)ルーラ大統領は23日、G20サミットにおいてスピーチを行った際、「途上国が気候変動対策を行った分をその債務から差し引く等、新たな手法をG20として推奨すべきである」と主張した。尚、G20は、トランプ米大統領の意向に反して、気候変動や多国間主義等の文言が盛り込まれた首脳宣言を採択した。(23日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(4)ルーラ大統領は23日、ライエン欧州委員長と立ち話をした際、来月20日のメルコスール首脳会議においてEU・メルコスール・FTAの署名式を執り行いたいと述べた。(24日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(5)ルーラ大統領は24日、モサンビークを訪問し、モサンビーク独立50周年の記念式典に出席した。ルーラは、同国のチャポ大統領と共に、保健、教育、外交官の養成、起業、貿易、民間航空、アグロフォレストリー等の分野において両国の協力関係を強化すると発表した。(25日付コレイオ・ブラジリエンセ)

5.COP30

(1)21日、COP30は最終日を迎えたが、脱化石燃料のロードマップに関してコンセンサスが得られないため、交渉は週末にずれ込む可能性がある。伯が提出した成果文書の最終版からはロードマップに関する文言が削除されたが、フランス、ドイツ、英国等の約30ヶ国がこれに反発。サウジアラビア等の産油国やインド等の約80ヶ国は、伯の提案を支持。(22日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)22日未明、COP30が閉幕した。脱化石燃料のロードマップは、成果文書には盛り込まれず、一部の国や環境団体を失望させた。マリナ・シルヴァ環境相は、「我々が夢見ていたような成果には届かなかったかもしれないが、それでも緩やかな進展を遂げることができた。引き続き、脱化石燃料と森林伐採ゼロの道筋をつけるために努力しなければならない」と締め括った。(23日付コレイオ・ブラジリエンセ)

 

1.ボルソナーロ前大統領の裁判

(1)モラエス・STF判事は25日、ボルソナーロ前大統領等、クーデター未遂の首謀者によって構成される「第1グループ」の裁判終了を決定した。これにより、ボルソナーロ等の有罪判決が確定し、刑の執行が開始された。ボルソナーロは、引き続き、連邦警察ブラジリア支局の独房に収監されることになり、ブラガ・ネット元文官長、エレーノ元大統領府安全保障局長官、ノゲイラ元国防相及びガルニエ―ル元海軍司令官は、軍の施設内に収監された。大統領経験者及び軍高官がクーデター未遂により有罪となり、収監されたのは伯史上初めてのことであり、歴史的な出来事とされている。トーヘス元法務治安相だけは、パプダ刑務所に収監された。STF第1小法廷は25日夜、モラエス判事の決定を全会一致で承認した。(26日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)ボルソナーロ前大統領の弁護団は25日、モラエス判事が判決の確定を宣告したことに驚き、「まだ異議申し立て(embargos infringentes)を提起できる段階で、判決の確定を宣告することは断じて受け入れられない」と怒りを露わにした。弁護士の一人は、「判決が確定したとしても、異議申し立て(embargos infringentes)を提起する」と述べているが、異議申し立て(embargos infringentes)が認められるためには、STF第1小法廷の判事5名の内、2名が無罪を主張していなければならなかったので、提起しても棄却されるのは確実である。また、弁護士は、再審請求や国際司法裁判所に訴えることについても検討しているが、再審請求については、新たな証拠や訴訟手続上の不備が求められるため、望み薄である。(26日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)クーデター未遂裁判により、禁固16年1ヶ月の有罪判決を言い渡されたアレンシャンドレ・ラマージェン下院議員(PL-RJ)に関しても有罪判決が確定したことで、同議員は、刑に服さなければならないが、米国に逃亡したため、刑の執行からは免れている。同議員は25日、「クーデター裁判の結果は受け入れない。モラエスは法服を着た独裁者である。米国からリモートで法案審議に参加する等、議員活動は続ける」とSNSに投稿した。モラエス判事は26日、下院に対し、ラマージェンの議員資格剥奪を求め、法務治安省には米国にラマージェンの引き渡しを要請するよう、求めた。(26日及び27日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(4)カヴァルカンテ・PL下院院内総務は25日、ボルソナーロ前大統領に対して「大幅且つ無制限の恩赦」を認めるとの法案の採決を今週中に行うよう求めたが、モッタ下院議長は、「現時点で恩赦法案を取り上げるのは時宜に適っていない」と拒否した。モッタ議長は、犯罪組織対策法案(PL Antifacção)の審議が行われた際、カヴァルカンテと衝突したことを根に持っていると見られている。フラヴィオ・ボルソナーロ上院議員(PL-RJ)は、アルコルンブレ上院議長とモッタ下院議長に対し、「恩赦法案が否決されても、その結果を受け入れるから、どうか、恩赦法案の採決を行って欲しい」と嘆願している。(26日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(5)フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)は25日、「(ボルソナーロ前大統領に対する刑の執行が開始されたことを)悲しみをもって受け止めている。ボルソナーロの無罪を信じており、議会に対して恩赦法案の成立を呼び掛ける。人道的な理由により、ボルソナーロは、自宅で軟禁されるべきであると思う」と述べた。尚、同知事は、明年の選挙に関しては「今は選挙のことについて考えていないが、これまで州知事に再選することを望むと常に述べてきた。今はサンパウロ州での仕事に集中している」と述べるにとどめた。(26日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(6)連邦最高裁判所(STF)は26日、軍事高等裁判所(STM)に対し、ボルソナーロ前大統領、ブラガ・ネット元文官長、エレーノ元大統領府安全保障局長官、ノゲイラ元国防相及びガルニエ―ル元海軍司令官の有罪判決が確定したことを通報した。STMでは今後、これら5名の軍籍剥奪のための手続きが行われる。尚、STMは、軍籍の剥奪を拒否することはできるが、STFの有罪判決を覆すことはできない。(27日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(7)モラエス・STF判事は26日、選挙高等裁判所(TSE)に対し、ボルソナーロ前大統領等、クーデター未遂の被告に対する有罪判決が確定したことを通報した。これにより、ボルソナーロの場合、105歳になる2060年まで被選挙権が停止されることになる。フィッシャ・リンパ法では、27年3ヶ月の刑期を終えた時点から8年後まで被選挙権が停止されることになっている。(27日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(8)ルーラ大統領は26日、ボルソナーロ前大統領の有罪判決が確定した件に関し、「伯は昨日、世界に対して民主主義の模範を示した。伯の司法府は、外国からの脅迫に屈することなく、粛々と、裁判を行った。クーデター未遂により、誰かが有罪になったのは、伯の歴史上初めてのことであり、画期的なことである。これによって、民主主義のルールが万人に適用されることが示された。(ボルソナーロの)収監を祝うつもりはないが、伯の民主主義が堅固で、成熟していることが証明されて嬉しい」と述べた。(27日付コレイオ・ブラジリエンセ)

2.ルーラ政権

ルーラ大統領は26日、「所得税ゼロ」と銘打った式典を大々的に開き、所得税減免法(非課税枠を月5千レアルに引き上げ、5千~7350レアルの所得層には所得税を減税する)の裁可を行った。これにより、明年1月から約1千万人が所得税を免除され、5千万人が減税を受けられるようになる。これは、ルーラの選挙公約であり、3期目の目玉政策の一つと位置付けられている。明年の選挙では、これがルーラ再選を牽引することが期待されている。尚、式典には、アルコルンブレ上院議長とモッタ下院議長が欠席し、政府と両議長の関係悪化を象徴する出来事として注目を集めた。(27日付コレイオ・ブラジリエンセ)

3.STF判事人事

アルコルンブレ上院議長は25日、9月に退官したバホーゾ・STF判事(前STF長官)の後任に指名されたメシアス連邦総弁護庁(AGU)長官の質疑応答を12月10日に行うと決定した。承認手続きは、明年の休会明けに延期されると見られていたが、同議長は、メシアスに上院議員の支持を求めるための時間を与えないために手続きを前倒ししたのではないかと見られている。(26日付コレイオ・ブラジリエンセ)

4.連邦議会

(1)25日、上院において、保健所職員及び伝染病対策係員の特別年金制度(男性は52歳、女性は50歳で年金受給資格を取得する。勤続年数が20年以上であることが条件)導入に関する法案が賛成57、反対0で可決され、下院に送られた。これが成立すれば、連邦政府だけで250億レアルの支出増が見込まれているため(地方自治体の場合は1030億レアルと試算されている)、同法案は、「爆弾議題(pauta-bomba)」と呼ばれている。アルコルンブレ上院議長がメシアス連邦総弁護庁(AGU)長官のSTF判事指名を不満とし、政府に報復するために同法案を通したと見られているが、同議長はこれを否定している。(26日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)アルコルンブレ上院議長は、ルーラ大統領の環境ライセンス改正法に対する拒否権発動に関し、上下両院合同セッションを27日に開くことを決定した。ルーラは、事業者の自己申告に基づく環境ライセンスの取得等、制度の大幅な緩和につながる63の条文に対して拒否権を行使した。議会がこれを覆らせれば、政府と議会の対立が益々激化すると見られている。(27日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)PT及びPLの下院院内総務との絶縁を宣言したモッタ下院議長は、自らの支持基盤を強化し、与野党に対抗するため、ユニオン・ブラジル、PP、PSD、Republicanos、MDB、PSDB等、中道派を中心とする議員275名(下院の過半数(257)を超える)からなる議員ブロックを形成しようとしている。同議長は、これを足掛かりにして2027年の下院議長選で再選を果たすことを狙っている。(27日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(4)連邦議会では、経営破綻したマスター銀行の不正疑惑に関し、議会調査委員会(CPI)を設置する動きが見られる。エドゥアルド・ジラォン上院議員(Novo-CE)が提出した要請書には既に設置に必要なだけの署名(27筆)が集まった模様。ユニオン・ブラジルやPP等の大物政治家がマスター銀行の頭取と密接な関係にあったとされており、政治家が同銀行の不正に関与していたのか否かが焦点となる。(27日付コレイオ・ブラジリエンセ)

 

 
 
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