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2025年10月 ブラジル関連情報

2025年10月ブラジル関連情報

 

1.米伯関係

(1)ルーラ大統領が国連総会でトランプ米大統領と立ち話をした2日後にアルキミン副大統領がラトニック米商務長官とオンライン会議を行っていたことが判明した。アルキミンは、ボルソナーロ前大統領が有罪を宣告された先月11日にもグリア米通商代表部(USTR)代表とオンライン会議を行っていた。両国政府の間では徐々に対話が行われるようになってきている。(1日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

2.ルーラ政権

(1)明年の選挙に立候補する閣僚は、明年4月までに大臣を辞める必要があるが、ルーラ大統領は、内閣改造を年内に前倒しすることを検討している(但し、コスタ文官長やホフマン大統領府政治調整庁長官等の要職にある閣僚は除く)。ルーラは、ユニオン・ブラジルとPPが抜けた穴をPSD、PDTまたはPSBの政治家で埋めることにより、明年の選挙に向けて中道派及び中道左派を取り込もうとしている。また、ルーラは、サビノ観光相(ユニオン・ブラジル)やコスタ・フィーリョ港湾空港相(Republicanos)の上院議員選出馬を支持することで、中道派を繋ぎとめようとしている。尚、中道派勢力(セントラン)は、ルーラ政権から距離を置きつつあったが、この2か月間で、ルーラ政権の支持率が回復し、次期大統領選ではルーラ大統領が優勢との世論調査が発表されると、再び、ルーラ政権に接近し始めた。連立与党離脱を決定したユニオン・ブラジルとPPも例外ではなく、ルエダ・ユニオン・ブラジル党首とルーラの会談に向けて調整が行われる等、ルーラ政権との関係改善を模索する動きが見られる。(1日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

3.連邦議会

(1)政府の明年度予算案では、選挙運動助成特別基金(FEFC)の予算は10億レアルとなっていたが、連邦議会の予算合同委員会(CMO)は30日、これを49億レアルに引き上げることを決定した。選挙の年に各党に支給される選挙運動助成金は、FEFCを財源としている。39億レアルの上乗せ分は、「議員団の議員割当金」と「連邦政府の非義務的経費」の削減(それぞれ29億レアルと10億レアル)により補填されることになっている。議会側は、2024年の地方選挙における選挙運動助成金と同程度の予算規模にする必要があると弁明しているが、国民の反発を買うのは必至と見られている。(1日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)30日、上院において、税制改革に関する憲法補足法案第108/2024号(物品サービス税運用委員会(CGIBS)の設置等)が賛成51、反対10で可決された。同法案は、上院で修正されたため、再び下院に戻される。CGBISは、各州の代表27名と市の代表27名の合計54名により構成され、物品サービス税の税収配分等について決定する。(1日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)30日、下院憲法司法委員会(CCJ)において、連邦最高裁判所(STF)に対して違憲審査を請求できるのは政党助成金の受給要件(下院議席数が11以上で、下院議員選挙における得票率が2%以上)を満たした政党及び政党連合のみとし(現在は、連邦議会の議席を有する政党であれば、請求可能)、また、STF判事の単独決定(decisão monocrática)を制限するための法案が可決された。これは、議会によるSTFの権限縮小に向けた試みの一環と位置付けられている。(1日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(4)10月1日、連邦下院本会議で、ルーラ大統領によって提出されていた、月給5,000レアルまでの所得税控除拡大法案が通過し、残すは上院での審議と大統領の承認のみとなった。下院本会議での報告者は前下院議長であるアルトゥール・リラ下院議員(PP-AL)であり、493票の賛成、全会一致で下院本会議を通過した。(2日付オ・グローボ紙)

4.司法

(1)30日、連邦最高裁判所(STF)では、明年の連邦下院議員選挙で選出される議員の数は増やさず、また、各州の下院議員数についても現状を維持するとのフックス判事の決定が過半数の判事によって支持された。これは、本年6月、連邦下院の議席数を現在の513から531に増やすとの法案が連邦議会で成立し、ルーラ大統領がこれに対して拒否権を行使したことを受け、アルコルンブレ上院議長が明年の選挙に関しては現状を維持することをSTFに申し入れていたことが背景にあり、同議長の意向を汲んだフックス判事の判断が支持された形となった。(1日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)メンデス・STF判事は30日、モラエス判事に対するマグニツキー法の適用を例に挙げ、伯の官憲に対する外国政府の制裁を無効化するための法案について議論を行っていることを明らかにした。(1日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

5.ボルソナーロ前大統領の裁判

(1)ヴァルデマール・コスタ・ネット・PL党首は30日、恩赦法案の報告官を務めるパウリーニョ・ダ・フォルサ下院議員(SD-SP)と会談し、ボルソナーロ派の主張する「大幅且つ無制限の恩赦」ではなく、同議員の主張する減刑法案を支持する可能性について言及した。パウリーニョ・ダ・フォルサ議員は、「下院の平均的な意見を汲み上げ、恩赦ではなく、減刑を認める方向で、法案を修正することにしている」と強調。尚、三権襲撃犯の家族の8割以上は、減刑ではなく、恩赦を求めており、中には国に損害賠償を求めると息巻いている者もいる。(1日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

6.2026年選挙

(1)フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)は、29日のボルソナーロ前大統領との会見に関し、「明年のサンパウロ州における上院議員選挙では、誰を右派の候補に指名するのかについて話し合った。二人の候補の内、一人は、デヒーテ・サンパウロ州政府保安局長(PP)が有力であると伝えた。残りの一人は、ボルソナーロが決める」と周囲に対して述べた。ボルソナーロは、三男エドゥアルドを上院議員候補に指名することにしている模様。尚、会見では、誰をボルソナーロ派の大統領候補にするのかということについては話題に上らなかった。恩赦法案の審議、並びにクーデター未遂裁判の控訴が終わるまでは何も決まらないと見られている。(1日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

 

1.米伯関係

(1)トランプ反応

ア 10月6日、伯米首脳電話会談が行われた。トランプ大統領は、「(ルーラ大統領との会談は)非常に良かった、いずれブラジルを訪問するかもしれない。」と述べた。ルーラ大統領は、米国が伯に課した関税の撤回やCOP30への参加をトランプ大統領に求めた。また米国への渡航の意向を示した。また両大統領は、直接会談を行うことで合意し、ルーラ大統領はASEANサミット(10月26-28日にマレーシアで開催)を選択肢として提案した。(6日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

イ 政府関係者によれば、伯米首脳電話会談でのトランプ大統領の口調は愛想が良く、親しげだった。世間のイメージとは異なり、全く違う人物で、傲慢ではなかった。対話も軽快だった。ルーラ大統領は2人とも80代であることをジョークにした。それに対してトランプ大統領は、「40歳のときよりも強くなったと感じている。」と言った。ルーラ大統領は笑って、自分も同じように感じていると言った。一方、友好的な口調とは裏腹に、トランプ大統領はルーラ大統領の要求には一切応じなかった。ただルビオ米国務長官が、両首脳の会談の可能性や関税、伯当局への制裁に関する協議を進める担当であると述べた。ボルソナーロ前大統領が話題に上ることはなかった。(6日付g1)

(2)アルキミン副大統領、アダッジ財相発言等

ア アルキミン副大統領によれば、伯米首脳電話会談は予想以上に良いものだった。ルーラ大統領は40%の追加関税をかける理由はないと主張した。G20の中で米国が黒字であるのは3か国(英、豪、伯)だけと指摘。また副大統領によれば、今回の会談は非常に前向きなもので、短期的には関税引き下げにつながる可能性がある。(6日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

イ アルキミン副大統領は、両大統領は個人的な電話番号を交換したと述べたが、ルーラ大統領は、携帯電話を使用していない。トランプ大統領に伝えられた電話番号は、側近のフェルナンド・イグレージャ伯大統領府儀典長のものだった。(6日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

ウ アダッジ財相は、伯米間の貿易摩擦はこれ以上維持されるべきではなく、米国政府は「好意」の段階にあると見ていると述べた。また、ルーラ大統領とトランプ米大統領との電話会談はスムーズであり、より正しい情報が適切な経路を通じて米国に届くにつれて、この問題は正常化するはずだと述べた。(6日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)内政

ア トランプ大統領とルーラ大統領の電話会談後、ボルソナーロ支持者の間では敗北ムードが漂っている。伯大統領府にとってボルソナーロ前大統領が交渉に参加していないことは、伯米の関税交渉からボルソナーロ前大統領が取り残されたことを意味する。しかし、トランプの予測不可能性を考えると、伯大統領府は慎重な姿勢を崩していない。突然、トランプ大統領は再びボルソナーロ前大統領を交渉の中心に据える可能性があると考えている。(6日付g1)

イ PL党首であるソステネス・カヴァルカンテ下院議員(PL-RJ)とエドゥアルド・ボルソナーロ下院議員(PL-SP)は、「ルビオ要因」を理由にトランプ大統領は交渉の最後にルーラ大統領を包囲するために戦略的に行動していると主張した。フェリペ・バッホス下院議員(PL-PR)は、「本当に驚くのは、ルーラ政権とヴィエイラ外相の無能さである。トランプ大統領の勝利以来、外務省がしたことといえば、祝電を送ったことくらいである。」と述べた。ボルソナーロ政権で大統領府広報庁長官を務めていたファビオ・ワジンガルテン氏(PL)は、「まったく対照的な考え方や行動をする国家元首同士がつながったところで、何の意味もない」と述べた。(6日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

2.ルーラ政権

(1)先週のベレン訪問の際、ルーラ大統領は、同市のインフラや運営体制の不足に関する批判がある中にあっても、COP30開催への前向きな姿勢や気候問題への積極的な取組について強調。これに対し一部の専門家は、COP30が期待された成果を上げられなかった場合、国内外でブラジルのイメージに悪影響を及ぼす可能性があると警告している。特に、環境問題への国際的な責任を果たすと主張する中でCOP30会合が失敗すれば、政権にとって大きな打撃となり得るという見方も。(6日付コヘイオ・ブラジリエンセ)

3.連邦議会

(1)所得税(IR)免除法案が上院に上程されたところ、ヘナン・カリェイロス議員(MDB/AL)とアルトゥール・リラ議員(PP/AL、元・下院議長)との間で主導権をめぐる争いが激化している。この対立によって、法案審議と採決の進行が妨げられる可能性があると懸念されている。同法案は、2026年度から施行を目指しており、そのためには年末までに議会を通過する必要がある。しかし、政治的な駆け引きが優先されることで、国民に直接影響する重要な経済政策の実現が危ぶまれている。カリェイロス氏とリラ氏はともに自身の影響力を強調しようとしており、それぞれが法案の「顔」になろうとする姿勢を見せている。専門家は、こうした対立が立法プロセスに悪影響を与える可能性を指摘している。(6日付コヘイオ・ブラジリエンセ)

(2)セルソ・サビーノ観光大臣は、与党連合の同盟関係者との最近の会談において、観光大臣の職に留まる意向を示した。サビーノ大臣は、ルーラ大統領の政権内で閣僚を務める一方で、同大臣の所属政党である「ウニオン・ブラジル(ブラジル統一党)」は最近、政府との距離を置く方針を打ち出し、同党が連邦政府内に持つ全ポストを9月26日までに返上するよう通達したが、サビーノ大臣はウニオン・ブラジル党の決定にもかかわらず、自らの辞任を繰り返し先送りし、観光行政の継続と政権内での役割維持を模索している。(4日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(3)10月2日、INSSに関する上院議会調査委員会(CPI)で証言した連邦監察総局(CGU)のヴィニシウス・マルケス・ジ・カルヴァーリョ長官は、年金からの不正な天引き行為に関する監査報告書を受け取った後も、ルーラ大統領や他の閣僚にはその内容を報告しなかったと述べた。同長官は、本件については既に連邦警察によって捜査が進められていたことから、調査の機密性を確保する必要があった旨説明した。(2日付エスタダオ)

4.パレスチナ紛争

(1)10月3日、伯外交官はイスラエルに拘束されたグローバル・スムード船団に乗員していた12名を訪問予定である。船団はガザ地区に人道支援を運搬予定だった。船団は1日に拿捕された。12人の中には、チアゴ・アビラ(活動家)、マリアナ・コンティ市議会議員(PSOL-Campinas)、ルイジア二・リンス下院議員(PT-CE)、ガビ・トロッティPSOL会長(PSOL-RS)など、多彩な顔ぶれが含まれている。(2日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

5.COP30

(1)10月2日、ルーラ大統領は、COP30期間はホテルではなくボートに宿泊予定であり、「外国人が寝ている間に私は釣りをする。フィリョッチやピラルクといったアマゾンの魚を釣ることが出来る。」と述べた。ルーラ大統領は、実際にどのようなタイプのボートに宿泊するのか明らかにしなかったが、COP30サミット参加者のクルーズ船は、ベレンのオウテイロ地区にある港に停泊する予定。(2日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

6.司法

(1)カルメン・ルシアSTF判事は、大統領府と国民議会が、フィッシャリンパ(クリーンレコード)法と選挙法の規定を変更した規則に関する情報を5日以内に提供することを決定した。先週、この提案はルーラ大統領によって一部に拒否権を行使し、裁可された。これにより違反行為が発生した「選挙日」から不適格を数える期間の開始を定めた条項は覆された。Rede Sustentabilidade党が起こした違憲審査訴訟の中で、この変更は「誠実さと行政道徳を保護するための規範的枠組みを損なう」ことになったと述べている。また、ルーラ大統領が承認した提案は上院で「大幅な修正」を受けており、したがって下院に戻されるべきだったとも述べている。(6日付ヴァロール・エコノミコ)

7.ボルソナーロ前大統領の裁判

(1)ボルソナーロ前大統領の支持者たちは、10月7日(火)、ブラジリアでデモ行進を行い、2023年1月8日の事件に関与したとして逮捕・有罪判決を受けた者たちの恩赦を訴えた。この行進は、サイラス・マラファイア牧師と前大統領の息子らによって呼びかけられ、午後4時頃にブラジリア大聖堂前で始まり、三権広場に向かって行進した。

ボルソナーロ派であるヘリオ・ロペス(PL-RJ)、シラス・マラファイア牧師、ニコラス・フェレイラ(PL-MG)、ジュリア・ザナッタ(PL-SC)、PL党首のヴァルデマール・ネト、ゼ・トロヴァン(PL-SC)、 フラヴィオ・ボルソナロ(PL-RJ)、ビア・キシス(PL-DF)、マグノ・マルタ(PL-ES)、ロジェリオ・マリニョ(PL-RN)、エデル・マウロ、ミシェル・ボルソナロ大統領夫人らが参加し、1月8日の事件で最高裁判所(STF)により有罪判決を受けた者たちの家族も出席した。(7日付ポデール360紙)

(2)連邦最高裁判所(STF)のジウマール・メンデス判事は、米トランプ政権がボルソナーロ前大統領に関する裁判への報復として、アレシャンドレ・モラエス判事とその妻に対し発動した「マグニツキー法」に基づく制裁について、ブラジル国内の銀行では「拡大適用されない」旨述べた。同判事は、「これまでのところ、銀行は当該制裁が拡張適用されず、ブラジルでは効力を有さないものと解釈している。」とリスボンでのイベント参加後、記者団に語った。(2日付エスタダオ)

(3)エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員(PL)は、恩赦法成立なしでは、2026年の選挙は開催されないと発言。同議員は、ボルソナーロ前大統領らがクーデター未遂をめぐる公判で有罪判決を受けてから数週間経ち、再びクーデター的な言動を強めているものの、恩赦法に対する政治的な雰囲気は醸成されていない。(2日付コヘイオ・ブラジリエンセ)

(4)恩赦法案をめぐり、モッタ下院議長は、パウリーニョ・ダ・フォルサ議員による報告書提出後に当該法案を議題にする意向を示し、「下院の重点は常に社会との直接的な対話にある。」と述べ、今後優先されるべき法案として、スマートフォンアプリを介した労働者と企業との契約関係の規定、人工知能(AI)に関するルール、新しい教育計画、行政改革などを挙げた。(3日付コヘイオ・ブラジリエンセ)

8.2026年選挙

(1)ルーラ大統領(PT)は、10月2日、パラー州での公務において、来年の大統領選挙に向け、自身と政治的に対立する者は準備をすべきだと述べ、自分の政権が再び彼らを打ち負かすだろうと語った。また、「この国がこれまでに経験した中で最高の政権を実現する」準備を進めているとも強調した。(2日付エスタダオ)

(2)ル-ラ大統領はすでに再選キャンペーンを開始しているが、野党側はボルソナーロ前大統領の有罪判決を受け、いまだ針路が定まっていない。加えて、司法は今後の選挙に向けて数々の課題に直面することになる。(6日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(3)カイヤド・ゴイアス州知事はSNSで、「シロ・ノゲイラは自身のピアウイ州で再選するほど力がない」と述べ、Uniaoブラジルに加盟する進歩党(Progressistas)党首を批判。また、同知事は、他の選挙候補者たちは2018年の選挙の頃からボルソナーロ前大統領の意見を尊重しているが、シロ・ノゲイラはそうではないとコメントした。さらに、ピアウイ州での世論調査にも言及し、ノゲイラ上院議員は来年再選を果たすほどの力を持っていないと述べた。(5日付コヘイオ・ブラジリエンセ)

 

1.米伯関係

(1)伯米外相電話会談

ア 10月9日、ルビオ米国務長官は、ヴィエイラ外相に電話をかけ、ワシントンでの会談を手配した。彼らは、経済・貿易上の利益や両国関係におけるその他の優先事項について、両国政府間の協議を主導する。日程はまだ決まっていない。トミー・ピゴット米国務省報道官は「ルビオ国務長官とヴィエイラ外相は、近々会談し、相互の経済的利益とその他の重要な地域の優先事項を促進するための二国間メカニズムを確立することに合意した。」と述べた。(9日付エスタード・デ・サンパウロ)

イ ヴィエイラ外相とルビオ米国務長官は9日午前、トランプ大統領が同国務長官を対伯主席交渉官に任命して以来、初めて電話で会談した。会談に詳しい関係者によると、電話は15分ほど続いた。9日、バイーア州のラジオ局『ピアタンス』のインタビューで、ルーラ大統領はヴィエイラ外相とルビオ国務長官が会談したと述べた。また、6日にトランプ大統領と交わした電話について、「不可能に思えた会談にも驚いた。」、「彼は、人間が人間にできる最も親切な方法で私に電話をかけてきた。」と述べた。(9日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)BYD落成式におけるルーラ大統領発言

 ルーラ大統領は、中国自動車大手BYD社の工場落成式を利用して、米国にメッセージを送った。同大統領は演説の中で、「(伯は)国を選り好みすることはない。」と述べ、伯製品に50%の関税を課すという米国の主張は真実ではないと再び述べた。また、6日(月)に行われたトランプ米大統領との電話会談について、米国政府との「問題」は解決されると信じており、伯はどの国とも否定的な関係を持ちたくないと述べた。(9日付エスタード・デ・サンパウロ)

2.パレスチナ紛争

(1)グローバル・スムード船団に参加した13人のブラジル人グループがブラジルに帰国する。彼らは木曜日(9日)の朝にグアルーリョス空港(SP)に到着する予定である。活動家たちは先週からイスラエルに収監されており、火曜日(7日)にヨルダンに強制送還された。(8日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

3.ボルソナーロ前大統領の裁判

(1)クーデター未遂で有罪判決を受けた者に対する恩赦承認やボルソナーロ前大統領への刑罰軽減の可能性が薄くなったことを受け、前大統領の支持者たちはプランBに賭けている。それは、連邦最高裁判所(STF)に圧力をかけ、前大統領が27年3か月の刑期を自宅軟禁で過ごすことを認めるよう求めるものだ。裁判所の関係者は、同承認は実現可能だと考えている。これは、ボルソナーロ派の政治団体が圧力をかけているからではなく、この対応がすでに最高裁で検討されているため、実現可能性が高い。最高裁判所のメンバーは、元大統領を収容するのに適した部屋がブラジリア・パプダ刑務所にないため、ボルソナーロ前大統領が同刑務所に収監される可能性は低いと見られている。(6日付エスタダオ)

(2)ボルソナーロ派は、7日午後、ボルソナーロ前大統領とクーデター未遂で有罪判決を受けた者たちへの恩赦法令を求める運動を開始。「恩赦法のための行進」と名付けられたこのデモは、省庁広場から連邦議会へ向かって行進。この行進は、シラス・マラファイア牧師とボルソナーロ元大統領の支持者および家族によって呼びかけられ、実施された。(7日付エスタダオ)

4.連邦議会

(1)反テロ法(法律番号13.260)第2条の改正案が下院で審議されているところ、法学者からは同法案が組織犯罪への対処を目的とする一方でテロ犯罪の拡大が懸念されるなどして、自由への脅威と見なしている。また、同法案は立法府そのものにも大きな代償をもたらす可能性があると指摘されている。(7日付エスタダオ)

(2)キム・カタギリ下院議員(PODE)は、8日、抑止目的のためにブラジルによる原子爆弾の製造を可能にする改憲案「PEC(核爆弾)」を提出。この改憲案は、「大量破壊兵器の使用の具体的かつ根拠のある脅威」に対し国が報復をするために核装置の使用することを想定し、他国からの攻撃や脅威に対して威嚇、抑制、阻止するための核兵器の保有を可能とすることを目的としている。(8日付エスタダオ)

5.内政

(1)ルーラ大統領は、住宅団地で適切な排水設備がなかったために100棟以上の住宅が失われた事案に関連してボルソナーロ前大統領を批判。同大統領は、ボルソナーロ前大統領について「私の前に政権を握っていたあの疫病神が、この国に何をしに来たのか分からない」と発言した。(6日付エスタダオ)

(2)ゼマ・ミナス州知事(Novo)は、ルーラ大統領(PT)及び与党がブラジル右派の主要な対立勢力であり、保守派の政治勢力は彼らに対抗することに集中すべきだと述べた。(6日付エスタダオ)

(3)アントニオ・ルエダ・ウニオン党党首は、政府から距離を置き、ほぼ野党のような姿勢で党の統一を図ろうとしている。一方、ダヴィ・アルコルンブレ上院議長は、党内の一派を支えつつ現政権を支持している。ウニオン・ブラジル党は、選挙まであと1年の時点で、中道および中道右派の主要政党の中で最も混乱した状況に直面している。ルーラ政権の閣僚3人に加え、他のポストにも多数の推薦人を抱えているウニオン党は、大統領府からの正式な距離を取る動きを進めているが、この合意をまとめる中心的な調整機能は欠けている。(7日付エスタダオ)

(4)ウニオン・ブラジル党の一派は、サビーノ観光大臣がCOP30まで閣僚に留まるための猶予期間を求めているが、党幹部はこれに抵抗している。観光大臣は、全国執行部からの最後通告に反し、ルーラ大統領の側に留まる意向を示した。ウニオン・ブラジル党の幹部は、8日、既に決定されたシナリオの下、会合を開催予定。会合直前での劇的な展開がなければ、全国執行部は観光大臣セルソ・サビーノを党及び全ての役職から即座に離任させる方向の一方、直ちに除名することはできない模様。(7日付エスタダオ)

(5)実業家たちは、所得税(IR)控除法案に関して、ルーラ大統領とトランプ氏の対話における「足かせ」になり得ると連邦議会で主張。所得税の控除額拡大に伴う補填策の一つには、海外居住者の配当金課税が含まれている。ブラジルと米国との間で関税問題を巡る対話が始まる中、実業家たちは議員に、所得税の控除額拡大を補う措置の一つである海外居住者の配当課税が、ルーラ大統領とトランプ大統領との対話にとって「足かせ」になる可能性があると主張。(7日付エスタダオ)

(6)ジェラウド・アルキミン副大統領兼産業・貿易相は、来週、ジョゼ・ムシオ国防相、アレクサンドレ・パジーリャ保健相、エステル・ドウェッキ行政管理相、パウロ・テイシェイラ農業開発相とともに、2026年初めにルーラ大統領が訪問することが予定されているインドを訪問予定。同訪問では、医薬品、バイオ燃料、防衛、インフラ分野について議論する予定。(8日付エスタダオ)

6.2026年大統領選挙

(1)アダッジ財相は、7日、2026年の選挙に立候補しないことを改めて表明したところ、このことを巡りルーラ大統領(PT)と今後どのように協力できるかを話し合う予定だと述べた。(7日付エスタダオ)

(2)アダッジ財相は、2026年大統領選への立候補をせず、ルーラ氏を「別の方法で支援」すると発言。同財相は、大統領を選挙の有力候補であると指摘し、「選挙運動に積極的に関与する」と述べた。(7日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(3)共和党(Republicanos)の北東部地域の支部は、来年の選挙において、タルシジオ・デ・フレイタス・サンパウロ州知事が大統領候補として出馬したとしても、ルーラ大統領(PT)を支持することを認めてもらえるよう、共和党本部と交渉を進めている。この理由として、ルーラ大統領を支持してきた地元政治家たちが無理に野党側に立たされれば、州支部が選挙で不利になることへの懸念があるとされる。(8日付エスタダオ)

(4)社会民主党(PSD)関係者によれば、パラナ州知事であり大統領候補予定者のラチーニョ・ジュニオールの出馬は、ルーラ大統領(PT)に親近感を持つ党内の一部地方指導者からの支持を妨げる可能性があると考えられている。(9日付エスタダオ)

7.世論調査

(1)世論調査によると、ルーラ政権の支持率は48%、不支持率は49%で一定の改善が見られ、今年1月以来の最高値を記録。PIXを巡る混乱、INSSに関するスキャンダル、アメリカによるブラジル輸出品への高関税措置が続いて発生していた中、8日に発表されたGenial/Quaestの世論調査によれば、ルーラ政権を「支持する」と答えた人は48%、一方で「支持しない」と答えた人は49%であった。(8日付エスタダオ)

(2)Genial/Quaest 調査によれば、回答者の79%は所得税の控除に賛成、64%は富裕層への増税による補填に同意。回答者の3分の2は、現在議会で審議中のルーラ政権の提案について「知っている」と答えた一方、17%は所得税の免除に反対し、29%は富裕層への課税強化による補填策に反対すると答えた。(8日付エスタダオ)

 

1.米伯関係

(1)グレネル米大統領特使は、ニューヨークで、アモリン大統領府首席補佐官と、ルーラ大統領とトランプ大統領の国連総会での初会合の前夜(9月22日)に会談していた。この接触により、ルーラ大統領とトランプ大統領がそれまで行き詰まっていた関係を打開できるかもしれないという、双方の認識がさらに強まった。翌23日の朝、国連本部のバックステージで、二人は同じ部屋を共有することになっていた。アモリン補佐官は「グレネルは非常に現実的な男である。」と当紙に述べた。(10日付エスタード・デ・サンパウロ)

(2)伯政府関係者によると、ヴィエイラ外相は14日(火)午後、ワシントンに到着した。16日(木)にルビオ米国務長官と会談予定である。(14日付CNN Brasil)

2.ベネズエラ関係

(1)ベネズエラに近いカリブ海の国際水域における米軍艦船の存在について、ルーラ大統領がトランプ米大統領との会談で言及する可能性がある。伯政府関係者によると、この話題が出た場合、ルーラ大統領はトランプ大統領に対し、マドゥーロ・ベネズエラ政権を転覆させる目的で米国が直接干渉する可能性があり、人道的危機を引き起こすだろうと話す。(10日付オ・グローボ)

(2)伯政府は、ベネズエラ野党指導者であるマリア・コリーナ・マチャド氏に授与されたノーベル平和賞が、ルビオ米国務長官率いるトランプ政権の強硬派に力を与えることで、ベネズエラへの米国軍事介入の可能性を高めることを恐れている。伯政府高官によれば、今回の受賞はブラジリアによる情勢打開の試みを困難にする可能性がある。(10日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

3.ボルソナーロ前大統領裁判

(1)ボルソナーロ前大統領への恩赦を巡る野党の会合では情報が錯綜し、ヴァルデマール自由党(PL)党首は会合の開催予定を認めた後に発言を撤回。関係者や側近は、会合の存在について否定し、右派の政治的コミュニケーションの不調が浮き彫りになった。(10日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)13日、モラエス最高裁(STF)判事は、ボルソナーロ前大統領(PL)の弁護団が請求した前大統領の自宅軟禁解除に関する申立てを却下した。モラエス判事は、自宅解禁の維持すべき理由について「公共秩序の保証と刑法の完全な履行を確保する必要性」を理由として挙げた。(13日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)モラエスSTF判事は、ボルソナーロ前大統領(PL)に対する自宅軟禁および予防措置を継続することを決定した。同判事によれば、ボルソナーロ前大統領が逃亡するリスクが依然として存在し、また同前大統領が予防措置等について繰り返し違反していることから、実施中の各種措置について維持する必要性があると述べた。この決定は、ボルソナーロ前大統領、息子のエドゥアルド・ボルソナーロ下院議員(PL-SP)及び実業家でインフルエンサーのフィゲイレド氏について、クーデター計画における司法妨害行為を巡り捜査している過程で下された。このため、当該自宅軟禁措置については、クーデター未遂事件に関する訴訟において最高裁第一小法廷が前大統領に下した27年3か月の拘禁刑判決とは関係がない。(13日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(4)モラエスSTF判事は、ブラジリアで自宅軟禁中のボルソナーロ前大統領(PL)に対し、もう1人の医師の訪問を受けることを許可した。内分泌系専門医のパゾリーニ医師は、STF側に個別に許可を得る必要なく、前大統領の診察を行うことができる。ボルソナーロ前大統領の近親者や医療チームメンバーは、医療目的で前大統領の自宅に自由に出入りできる。モラエス判事は、弁護側からの「持続的なしゃっくり症状の悪化」を理由として、もう一人の医師の自宅訪問の必要性を求める要請を受け入れた。モラエス判事は、同許可を認める決定において、ボルソナーロ前大統領が自宅での医療処置を受けること、および緊急時には事前許可の必要なく病院に行くことが認められていることを強調し、その場合は24時間以内に当該処置を正式に報告しなければならないと明記した。(13日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

4.司法

(1)バホーゾSTF判事の早期退任に伴い、ルーラ政権による3人目のSTF判事の任命が行われる。ブルーノ・ダンタス連邦会計検査院(TCU)院長、ジョルジ・メシアス大統領府弁護庁(AGU)長官、ロドリゴ・パシェコ上院議員(前上院議長)がこのポストを埋める有力候補と見なされている。STF判事の任命を巡り、ルーラ大統領は女性判事の任命を求める圧力に晒されている中、ヴィニシウス・カルヴァーリョ連邦総監督庁(CGU)長官、ウェリントン・セーザル・リマ・エ・シルヴァ・ペトロブラス社弁護士(元大統領府法務局長)も候補者として名前が挙がっている。ダンタス院長は、カリェイロス上院議員とアルコルンブレ上院議長と親しく、STF内でもメンデス判事やモラエス判事とも友人関係にあるとされる。メシアス長官は、ルーラ大統領が過去のSTF判事指名において親密さと忠誠心を重要視してきたという点で、他の候補者に対して有利とみられている。パシェコ上院議員は弁護士でもあり、STF判事への就任意欲が高い。最近、ルーラ大統領と連邦議会との関係は、厳しいものとなっていることを考慮すれば、パシェコ上院議員は、上院公聴会での承認を得やすく、より有利な環境が整っている一方、ルーラ大統領はパシェコ上院議員に対しミナスジェライス州知事選挙へ出馬も求めている。(9日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)バホーゾSTF判事の引退に伴い、その後任者にメシアス大統領府弁護庁(AGU)長官が指名される可能性について、政府関係者は、ルーラ大統領と福音派との接近を図るための手段であると指摘している。他方、メシアス長官の支持者たちは、同長官がSTF 判事に任命された場合、彼は「共和主義的な福音派」あるいは「非常に民主的」な判事になるであろうと主張している。こうした指摘は、ボルソナーロ前大統領が、2021年に最高裁判事に「非常に福音主義的な」人物を選ぶと発言したことを想起させる。(13日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(3)13日、ルーラ大統領はバホーゾSTF判事が引退を前倒しで発表したことについて、「性急であったと思う。」との見解を示した。しかし、後任については、自分は「友人」を最高裁判事に指名するつもりはなく、ブラジル憲法を遵守する人物を指名したいと説明した。(13日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(4)ルーラ大統領は、STFの後任ポストに「友人ではなく、有能な人物を指名したい。」と述べた。「男性か女性かは分からない。黒人か白人かも分からない」と、ローマでの記者会見で語った。(13日付エスタード・デ・サンパウロ)

5.連邦議会

(1)アルコルンブレ上院議長は、2026年予算方針法(LDO)と環境許認可に関する大統領拒否権の審議のため、連邦議会上院審議会の開催を決定したところ、一部の上院議員からは、予算方針法において修正条項として歳出計画表を盛り込むことを求めている。(10日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(2)連邦議会は与党の支持のもと、環境許認可法案に対するルーラ大統領(PT)による63回の拒否権を完全に覆す予定。法案は環境保護団体や環境省など政府内部の一部から厳しい批判を受けている。(13日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

6.内政

(1)新政令によって、大統領のスケジュール、文書管理、公邸や資産の管理を担う大統領府の担当部門が、ジャンジャ大統領夫人にも対応することが定められた。出張や政治的関与で批判を受けているジャンジャ夫人は、2023年から自身の専用官邸組織設置を求めて圧力をかけてきたとされる。(11日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)ルーラ第3期政権の法案成立率は、1988年以降で最も低く、専門家は選挙への影響を指摘。政権が議会に提出した239件の法案のうち、成立したのは62件にとどまり、議会通過率はわずか25%。過去の政権では通過率が46%~77%だった。立法府の権限強化と政権の政治調整の失敗が主な原因とされる。(12日付エスタード・デ・サンパウロ)

7.2026年大統領選挙

(1)シロ・ノゲイラ上院議員は、ボルソナーロ前大統領のもとを訪問し、2026年選挙の最有力候補はタルシジオ氏とラチーニョ氏であると改めて主張。これに対し、ボルソナーロ前大統領は、次期大統領選において誰を支持するか明言を避け、ノゲイラ氏は「適切な時期にボルソナーロ前大統領が国民に示すだろう。」と述べた。(9日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(2)サビーノ観光大臣はウニオン・ブラジル党執行部から党務停止を言い渡されたところ、同大臣は「除名されるようなことは何もしていない」と主張。同大臣がルーラ政権からの離脱を拒否したことで、党内で処分手続きが開始される。(9日付エスタード・デ・サンパウロ)

(3)サビーノ観光大臣は、カイアド・ゴイアス州知事の大統領選への立候補の権利を認めるも、ルーラ氏への支持を再表明。同大臣は、ウニオン・ブラジル党からの除名の可能性に直面し、「観光省を去るのは卑怯なことだ」と発言。(10日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

8.COP30

(1)10月9日に英国王室が発表した声明によると、ウィリアム王子はチャールズ国王3世に代わり、COP30に先立って開催される首脳会議に参加する。11月6日にベレンに滞在予定である。(9日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

9.外交

(1)10月13日午前、ルーラ大統領(PT)はバチカンでローマ教皇レオ14世と会談した。伯政府関係者は、この会談を「軽快で生産的なものだった。」と述べている。当初、会談は国賓訪問として扱われる予定だったが、会談の数時間前、バチカンは伯政府に対し、他の国の首脳に与えられるような栄誉はなく、あくまで私的な会談であると通告した。(13日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)ローマを訪問中のルーラ大統領は、「伯はイスラエルとは何の問題もないが、ネタニヤフ首相とは問題がある。ネタニヤフ首相が政権から退けば、常に非常に良好な関係を築いてきた伯とイスラエルの間に問題はなくなるだろう。」と述べた。また、イスラエルとハマスの合意を推進したトランプ大統領の行動を称賛した。(13日付オ・グローボ)

 

1.議会関連

(1)人気の高まりに後押しされたルーラ大統領は、2026年補正予算の歳出計画が予算指針法(LDO)に基づき承認された場合、これを拒否すると議員たちに警告した。この歳出計画は、来年上半期に補正予算案が承認され、連邦議会議員が2026年の選挙前に自らの支持基盤に資金を分配することを保証するものである。これらの議員の多くは、ルーラ大統領の再選に反対する選挙運動を行う見通しとされる。(14日付エスタダオ)

(2)連邦上院は、10月14日、暴力犯罪対策法案を可決。この法案は、暴力犯罪に対する刑罰を強化し、関連事件における刑の執行に関する規則をより厳格にするもの。この法案は、フラヴィオ・ボルソナロ上院議員(PL-RJ)が議長を務める公安委員会によって作成され、現在、下院での審議待ちとなっている。同議員は、下院議長のウーゴ・モッタ議員(共和党-PB)に法案の審議を迅速に進めるよう要請する意向を表明。(14日付エスタダオ)

(3)起業家精神推進議会連盟(FPE)は、14日、連邦議員と会合を開き、環境ライセンス一般法に対する大統領の拒否権行使の影響について議論した。この問題は、今週木曜日(16日)に予定されている連邦議会合同会議で、2026年度予算指針法(LDO)の採決とともに審議される予定。(14日付コヘイオ・ブラジリエンセ)

(4)ここ数カ月の間、一連の事件で世論の信頼を失ったウーゴ・モッタ下院議長(共和党・パライバ州)は、任期開始時に約束した基礎教育に関する一連の法案の反響を再起動の機会として利用しようとしている。一方、1月8日の三権広場襲撃事件で有罪判決を受けた者に対する恩赦法案やクーデター計画に関する物議を醸す法案は、上院との合意が得られないまま行き詰まっている。(15日付エスタダオ)

(5)15日、10人の上院議員グループが、連邦最高裁判所(STF)のフラビオ・ディーノ大臣に対する弾劾請求を提出。37ページにわたるこの請求文書は、エドゥアルド・ジラン上院議員(Novo-CE)が主導し、マグノ・マルタ(PL-ES)、ハミルトン・モウラン (共和党-RS)、カルロス・ポルティーニョ(PL-RJ)、ダマレス・アルヴェス(共和党-DF)、ルイス・カルロス・ヘインゼ(PP-RS)、マルコス・ポンテス(PL-SP)、ジョルジ・セイフ(PL-SC)らが署名し、上院議長室宛てに提出された。(15日付コヘイオ・ブラジリエンセ)

(6)ジャンジャ大統領夫人がパリで開催される国際環境セミナーにブラジル代表として出席。大統領夫人がエネルギー転換と持続可能な開発に関するイベントに参加することに対し、政府は公費負担はないと表明(14日付エスタダオ)

(7)COP開催まで1か月を切る中、環境政策が連邦議会で停滞。今週予定されている環境ライセンス法案に対する大統領の拒否権行使の見通しは、懸念点として指摘されている。(14日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(8)COP30では都市アジェンダに関する議論の場が設けられる見通し。ベレンで開催されるCOP30では、都市、水、建築、冷却に関する4つのパビリオンが設置され、会場はイベント開始時にジャデル・フィリオ大臣によって開会セレモニーが行われる。(14日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(9)ミシェル・ボルソナロ元大統領夫人がPT(労働者党)から政治的迫害を受けていることをPL Mulher(PL党女性支部)が調査要請後に公表。同公表によれば、リンバーグ・ファリアス下院議員(PT党)が元大統領夫人に対して「権限乱用」を行ったと主張。(15日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

2.最高裁判所(STF)判事後任人事

(1)最高裁(STF)判事の候補としてルーラ大統領推薦された13人の女性

①Lívia Sant´Anna Vaz

2004年からバイーア州で検察官を務め、人種差別・宗教的不寛容対策、伝統的コミュニティの保護、人種別割当制度を担当する検察官として活動。リスボン大学で法学・政治学の博士号を取得し、検察庁全国評議会の人種差別対策作業部会の責任者を務めている。

②Edilene Lobo

ミナス・カトリック(PUC-Minas)私立大学で民事訴訟法の博士号を取得し、TSE(最高選挙裁判所)判事のほか、同大学大学院で選挙関連の教授を務める。また、パリのソルボンヌ・ヌーヴェル大学客員教授でもある。2023年にルーラ大統領によってTSE判事に任命され、同裁判所初の黒人女性判事に就任。

③Flávia Carvalho

サンパウロ州裁判所(TJ-SP)の判事であり、連邦最高裁判所(STF)判事補佐官でもある。サンパウロ大学(USP)で哲学及び法学一般理論の博士号を取得し、全国黒人裁判官会議(Enajun)及び人種差別を含むあらゆる形態の差別に対する全国裁判官フォーラム(Fonajurd)組織執行部の一員。バホーゾ長官によって、最高裁判所(STF)のオンブズマンに任命された。

④Daniela Teixeira

2023年にル-ラ大統領に指名され、最高裁判所(STJ)判事に任命。2006年から2019年までの間、ブラジル弁護士協会(OAB-DF)の会長を務める。

⑤Dora Cavalcanti

司法へのアクセスを促進し、十分な弁護を受ける権利を強化するために1990年に設立した組織である、弁護権擁護協会(IDDD)顧問を務める。10年以上同協会研究所の副所長を務め、2002年から2007年まで所長を務め、2015年から2019年まで審議委員会を指導した。オデブレヒト、ロドリゴ・ジャノット、セルジオ・ナハスに関する事件を担当した経験がある。

⑥Adriana Cruz

リオデジャネイロ・カトリック大学(PUC-Rio)の教授であり、連邦判事。国家司法評議会(CNJ)の全国事務局長に就任した初の黒人女性。リオデジャネイロ州立大学(UERJ)で刑法博士号を取得し、司法制度における人種とジェンダーに関する研究で知られる。

⑦Karen Luise

今年8月から国家検察庁評議会(CNMP)のメンバーを務める。カレン・ルイーズ判事は、リオグランデ・ド・スル州裁判所(TJ-RS)で勤務し、CNJでは判事補佐官を務めている。スペインのパブロ・デ・オラビデ大学で人権、異文化間交流、開発学の修士号を取得し、CNJでは人種平等促進プログラムにおける活動で注目されている。

⑧Kenarik Houjikian

サンパウロ州最高裁判所の元判事であるケナリック・ブジキアンは、2024年から社会対話・公共政策調整担当国務長官を務める。人権擁護に尽力した経歴を持ち、サンパウロ州検事、民主主義のための裁判官協会会長、ラテンアメリカ民主裁判官連盟会長を歴任。

⑨Maria Elizabeth Rocha

マリア・エリザベス・ロシャは、最高軍事裁判所長官であり、同裁判所217年の歴史の中で初の女性判事である。ミナスジェライス連邦大学(UFMG)で憲法学の博士号を取得し、連邦検事や、最高選挙裁判所(TSE)、国民議会、大統領府などの機関で勤務した経験を持つ。就任式では、ジェンダー平等を擁護する見地から、ルーラ大統領に対し、高等裁判所にさらに多くの女性判事を任命するよう要請した。

⑩Lívia Casseres

リオデジャネイロの公選弁護人であるリヴィア・カセレスは、公選弁護人事務所の「人種平等推進」調整官を務めている。これまでに、性的多様性と同性愛者の権利擁護センターや、全国公選弁護人協会(ANADEP)の民族・人種平等委員会のコーディネーターも務めた。

⑪Mônica de Melo

サンパウロの公選弁護人であるモニカ・デ・メロは、PUC-SP(サンパウロカトリック大学)で憲法学の教授を務め、2021年から文化・地域関係担当副学長を兼任。ブラジル女性法律家協会、全国女性連合、州・全国女性公選弁護人団などの組織にも参加。

⑫ Sheila de Carvalho

司法アクセス担当秘書官であるシェイラ・デ・カルヴァリョは、国際人権弁護士であり、OAB-SP(サンパウロ州弁護士会)人権委員会機関内暴力対策センターのコーディネーターを務めている。国連からMIPAD(アフリカ系の人々の中で最も影響力のある人物)賞を受賞。2022年には、フラヴィオ・ディノ司法大臣の特別顧問に任命された。

⑬ Vera Lúcia Araújo

2023年に最高選挙裁判所(TSE)の代理裁判官に任命されたヴェラ・ルシア・アラウージョは、同裁判所の3人の判事候補リストに名を連ねる初の黒人女性となった。政治恩赦委員会、全国差別対策評議会の顧問を務め、ブラジル民主主義法曹協会の全国執行部にも参加。また、ブラジル弁護士会(OAB)の人権委員会にも所属し、ブラジルを代表する黒人指導者の一人として認められている。

(13日付エスタダオ)

(2)67歳のバホーゾ判事は、憲法で定められた年齢制限である75歳まで最高裁判所に留まることができたものの、正式に退職を申し出て、12年間の裁判官職を経て今週金曜日に最高裁判所から退任した。(13日付エスタダオ)

(3)ルーラ大統領は、アルヴォラーダ宮殿で最高裁判事らと会談し、バホーゾ判事の後任指名について協議。会合には、クリスティアーノ・ザニン判事、アレシャンドレ・デ・モラエス判事、フラビオ・ディーノ判事、リカルド・レヴァンドフスキ法務治安大臣らが同席。大統領が推すのはジョルジェ・メシアス氏。ギルマー判事、モラエス判事、ディーノ判事はパチェコ氏を支持。(14日付エスタダオ)

3.2026年選挙

(1)PP党首のシロ・ノゲイラ上院議員とエドゥアルド・ボルソナロ下院議員(PL-SP)は、Xへの投稿で口論した後、和解。ノゲイラ上院議員は、13日(月)に両者が電話で話し合ったことをエスタダオ紙に明かした。同議員によれば、「すべては解決し、乗り越えることができた。私たちの道は異なるものの、選挙に勝つという目標は同じであることが明らかになった。」と語った。(14日付エスタダオ)

4.ボルソナーロ前大統領・クーデター未遂裁判

(1)連邦検察庁(PGR)は、15日、ボルソナーロ前大統領が連邦警察(PF)に政治的に干渉したかどうかを調査するための捜査を再開するよう、連邦最高裁判所(STF)に要請。この調査は、2020年にセルジオ・モーロ現上院議員(União Brasil所属、パラナ州選出)が、ボルソナーロ前大統領が友人や家族を保護する目的で連邦警察の人事異動を行ったと非難して法務治安大臣を辞任したことを受けて開始されたもの。(15日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(2)連邦最高裁判所(STF)第一小法廷は、14日、ボルソナーロ前大統領(PL)政権による選挙に関する偽情報を流布に加担した容疑がかけられている陸軍将校関係者に対するクーデター計画関連裁判を開始する予定。同裁判では、電子投票に対する偽情報を流布し、クーデターに反対していた当局関係者を攻撃したとされるグループを構成した被告人を集めて行われる。同小法廷では、今週と来週の4回に分けて会合を開き、本件を審理予定。本件裁判では、フラヴィオ・ディーノ判事が裁判長を務める。グループの中核人物に対する裁判は、ザニン判事が担当する。公判最初の週には、モラエス判事が訴訟手続の進行に関する報告を読み上げるほか、連邦検察庁(PGR)と7人の被告の弁護人が、口頭弁論を行う予定。被告は、アイルトン・バーホス(陸軍退役大尉)、 アンジェロ・デニコリ(陸軍予備役少佐)、ジャンカルロ・ゴメス・ロドリーゲス(陸軍軍曹)、ギリエルメ・マルケス・デ・アルメイダ(陸軍中佐)、レジナルド・ヴィエイラ・デ・アブレウ(陸軍大佐)、マルセロ・ボルメベット(連邦警察官)、カルロス・セーザル・ロシャ(Instituto Voto Legal総裁)。(14日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)連邦検察庁(PGR)は、エドゥアルド・ボルソナロ下院議員の逮捕請求を却下。パウロ・ゴネット連邦検事総長は、労働者党(PT)および社会主義自由党(Psol)所属の連邦議員が請求した予防的逮捕請求を検討したが、却下したことを明かした。(14日付コヘイオ・ブラジリエンセ)

 

1.議会関連

(1)COP30を目前に控え、連邦議会は、ルーラ大統領による環境ライセンス法案拒否権行使に対し、これを覆すことを「隠蔽」する戦略を取る模様。エスタダオ紙が取材した上院議員によれば、15日深夜までに連邦議会内で一連の会議が行われ、拒否権行使に対する戦略が固められた。(16日付エスタダオ)

(2)アルコルンブレ上院議長は政府の要請に応じ、ルーラ大統領の拒否権行使を審議するための協議を中止。ルーラ大統領は、7種類の環境許可を定める法律15190号を承認する際に、63箇所の条文について拒否権を行使。(16日付コヘイオ・ブラジリエンセ)

(3)ウンベルト・コスタ上院議員(PT-PE)は、連邦議会における法案協議中止は、「勝利」であると述べ、COP30が近づく中、政府は環境許可に関する法律への悪影響を最小限に抑えるための交渉に、より多くの時間を割くことができるようになるだろうと指摘した。

(4)政府は連邦議会が拒否権を覆した場合、環境ライセンス法案を司法に委ねることを検討、環境長官はヴァロール紙に「政府は拒否権の完全性を擁護する」と発言。ルーラ大統領が環境ライセンス法案に対して行った63件の拒否権を審議する連邦議会内の協議の延期が成功したことを受け、政府は例外なくすべての拒否権の維持を擁護する方針。仮に法案に対する拒否権が覆された場合、法案が望ましくない影響を受けないよう、将来的には司法に訴えることも併せて検討している模様。(16日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(5)企画・予算・監査合同委員会は、2026年度予算案について12月18日までに採決する見込み。昨年は、行政と立法府との意見の相違によって、2025年度予算案の採決が遅れ、今年3月にようやく可決され、4月にル-ラ大統領が署名。(16日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(6)連邦警察は予算修正案における横領事件の容疑でブラジル・ブラジル党(União)議員と関係のある市長を捜査。警察による摘発オペレーション「オーバークリーン作戦」の新段階として、バイーア州内陸部の市長を解任し、議員が関与する不正汚職スキームを捜査中の模様。弁護側は現時点でコメントを控えている。(16日付エスタダオ)

2.最高裁判所(STF)判事後任人事

(1)PT党員はル-ラ大統領がメシアス連邦総弁護庁長官を最高裁判事に正式指名するには合意が必要だと主張。関係筋によると、指名に際しての主な障害は、メシアス長官がロドリゴ・パチェコ上院議員のように上院や最高裁で支持を得られていないことを指摘。(16日付エスタダオ)

(2)カルメン・ルシア判事は、「あらゆる分野に女性が存在することが重要」と述べ、最高裁判所に女性判事の増加を提唱。現在、連邦最高裁判所(STF)で唯一の女性判事であるカルメン・ルシア判事は、ルイス・ホベルト・バホーゾ判事の引退をめぐる議論を契機に、最高裁に女性判事を増やすべきだという自身の主張を16日に改めて表明。(16日付エスタダオ)

(3)引退の数時間前、バローゾ判事はアルヴォラーダでルーラ大統領と会食。政府関係筋によると、大統領は最高裁判所判事に誰を指名するか既に決定しており、大統領は数日中にジョルジェ・メシアスの指名を発表する見通し。(18日付コヘイオ・ブラジリエンセ)

3.ルーラ政権・その他

(1)ル-ラ大統領は、2026年選挙に向け、社会運動の調整役としてボウロス下院議員を大統領府官房長官に指名。同議員は大統領府官房長官としてマルシオ・マセド氏の後任となり、来年の下院議員選挙への再出馬を断念することを約束。(20日付エスタダオ)

(2)最近の世論調査では、ブラジルの有権者において政治の刷新と主要政党から独立した立場の候補者を求める一定の根強い傾向があることが明らかになっている。2013年の抗議活動以降、伝統的な政治に対する疲弊感と、既存の制度に対する不信感が顕著に見られている。2026年の大統領選挙はこうした状況の中で行われるが、新たな変化への欲求と、ますます厳格化する政治システムの障壁との間で、相反する利害関係が存在している。(16日付エスタダオ)

(3)ミシェレ元大統領夫人は、ボルソナーロ氏の後継者選びへの圧力に批判し、政府を料金値上げの責任者と非難。元大統領夫人はまた、聖書の一節を引用して、ルーラ大統領と福音派キリスト教徒との会合を非難。(17日付エスタダオ)

(4)社会民主党(PSD)党は、ゼマ副知事の党籍加入を発表。パシェコ上院議員の2026年の出馬が危うくなる。PSDは、後継候補として副知事マテウス・シモンズ氏の立候補を支持するため、ロメウ・ゼマ(Novo)知事の政権継続に向けた合意について調整中の模様。(19日付エスタダオ)

(5)モロ上院議員のパラナ州知事選出馬は、連邦連合(União-PP)の新たな分裂によって不透明に。シロ・ノゲイラ党首は、PP党がシダ・ボルゲッティ元連邦下院議員を州知事として送り込むことを断念しないことを示唆。(20日付エスタダオ)

4.2026年大統領選

(1)ルーラ大統領は、18日、「他国の大統領がブラジルに対して強硬な発言を行うことは二度とあってはならない。」と述べた。サン・ベルナルド・ド・カンポ市(サンパウロ州)において、同大統領は、「国家の主権を守ることには、尊厳と人格に関する問題もあり、ブラジル人学生の育成とラテンアメリカの統合に結びついている。」と主張した。大統領の発言は、マウロ・ヴィエイラ外相と米国のマルコ・ルビオ国務長官が関税引き上げについて協議した会談を受けてのもの。(18日付コヘイオ・ブラジリエンセ)

5.COP30関連

(1)気候問題に加えて、COP30は国民とのコミュニケーションという課題にも直面。SNS等の分析では、COP30を巡るメッセージの大半はインフラや物流に関連したものだった。また、COP30開催に際しては、気候に関する専門的で難解な言葉を、国民が理解できる言葉に変換しなければならない課題に直面している。(20日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

6.外政

(1)ブラジル外務省は、マレーシアで開催される東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に合わせ、ルーラ大統領とトランプ大統領との会談を米国務省と調整中である旨明らかにした。同会談が確定した場合、来週の26日(日)、サミット初日に開催される見通し。また、ルーラ大統領はインドのモディ首相等と二国間会談を行うことが予想されており、これらの二国間首脳会談は同日曜日に行われる可能性が高い。さらに、同大統領は23日(木)にジャカルタを訪問し、インドネシアのスビアント大統領と会談し、25日(土)にはマレーシアのイブラヒム首相とも会談予定。(21日付オ・グローボ)

7.ボルソナーロ前大統領をめぐる動き

(1)モライスSTF判事は16日、ボルソナーロ大統領が大統領だった時期に連邦警察(PF)に干渉したとされる疑惑を調査する捜査の再開を命じた。同決定は、連邦検察庁(PGR)が調査の再開を要請した翌日に下された。この調査は、現職のセルジオ・モウロ上院議員(Uniao-PR)が司法・公安省を辞任し、ボルソナーロ前大統領が友人や家族を保護する目的で連邦警察の人事異動を行ったとして、2020年に開始されたもの。(16日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

 

1.米伯関係

(1)26日(日)にマレーシアでルーラ大統領とトランプ大統領との二国間会談が予定されている。会談では、トランプ大統領が同国に課した関税や、モラエス最高裁判事に対するマグニツキー法の適用、国連総会関連行事のために訪問予定であったパディーリャ保健大臣とその家族に課された移動制限など、伯政府に関連する措置について協議される見通し。また、最近の米国によるベネズエラ船舶への攻撃や、南米諸国への米軍侵攻の危険性など、平行した話題についても協議される予定。(23日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

2.大統領選関連

(1)ルーラ大統領によって解任されたマルシオ・マセド大統領府官房長官は、2026年の選挙に出馬することを条件に政府の役職を離れたことを述べた。マセド氏は、大統領に感謝の意を表し、「使命を果たした」という思いのもと離任すると述べた。(20日付エスタード・デ・サンパウロ)

(2)マセド氏の後任であるボウロス大統領府官房長官は就任発表後、「政府を街頭に送り出すこと」が主な使命だと表明。ボウロス氏は、政府と国民との距離を縮めることが使命だと強調し、マルシオ・マセド氏(PT)の後任として就任。マセド氏は2022年ルーラ大統領選挙の選挙運動資金管理責任者を務めた。(20日付エスタード・デ・サンパウロ)

(3)ルーラ大統領は左派の再建を試み、プラナルト宮殿でボウロス大統領府官房長官とともにポピュリスト的な政策をほのめかした。政党幹部、実業家、金融業界の代表者は、公的会計の拡大を顧みない左派のポピュリスト政策の進展を懸念。(21日付エスタード・デ・サンパウロ)

(4)ルーラ大統領は、インドネシア訪問中の23日、2026年大統領選挙への出馬を表明。大統領は「30歳の頃と同じエネルギーを持っている」と述べ、4期目に出馬することを明らかにした。(23日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

3.ボルソナーロ前大統領裁判関連

(1)連邦最高裁判所(STF)第一小法廷は、21日、クーデター計画における偽情報の拡散に中心的な役割を果たしたメンバー7人全員を多数決で有罪判決とした。同グループは、電子投票に関する虚偽の情報を流布し、クーデターに反対する軍幹部を攻撃したとして、連邦検察庁(PGR)より起訴されていた。有罪判決では、報告者のモラエス判事、ザニン判事、カルメン・ルシア判事及びディーノ判事(第1小法廷裁判長)の投票により決定されたが、フックス判事は異議を唱え、被告全員に対して起訴されたすべての罪について無罪を主張した。(21日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)9月の最高裁第一小法廷におけるボルソナーロ前大統領の有罪判決後、同小法廷のフックス判事は、先週、判決文に関する文法上の再審査を行うために自身の投票を差し戻すよう要請し、判決文の公表を若干遅らせたと見られている。21日、フックス判事は、クーデター未遂を審理する最高裁第1小法廷から第2小法廷への異動を最高裁長官に要請し、夜間にボルソナーロ裁判に関する投票を提出した。これにより判決文の公表が可能となり、弁護側による異議申立ての期限が設定された。ボルソナーロ前大統領及びその他の被告人側の弁護士が利用可能な控訴手段としては、判決に不明瞭な点、不正確な点等があったと弁護側が判断した場合にのみ認められる、判決不明点解明願(embargos de declaração)がある。この場合、審理は事件を審理した小法廷で行われる。(22日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

4.最高裁判所(STF)判事後任人事

(1)ルーラ大統領はアルコルンブレ連邦議会上院議長に対し、連邦最高裁(STF)判事候補をメシアス氏に決定したことを伝えるものの、指名の公式発表はアジア訪問後に行われると見られる。ルーラ大統領は、連邦検事総長を全面的に信頼しており、ロドリゴ・パチェコ連邦上院議員がミナス州知事選の有力候補であると発言。(21日付エスタード・デ・サンパウロ)

(2)メシアス氏の連邦最高裁判所(STF)判事への指名は連邦上院議会で抵抗にあっている。政府は、上院において約35票の支持票を確保しているものの、メシアス連邦総弁護庁長官が連邦最高裁判所判事に承認されるには、41票が必要となる。(22日付コヘイオ・ブラジリエンセ)

(3)ルーラ大統領は、メシアス大統領府総弁護庁(AGU)長官を最高裁判事に指名する決定を延期した。これは、大統領が指名する司法権人事案には、上院の承認が必要であり、上院では同長官の指名に対する強い抵抗があるとの警告を受けたためである。また、ルーラ大統領は、20日夜、アルコルンブレ上院議長と会談した後、メシアス氏の最高裁判事への指名を延期する旨述べた。会談の際、同上院議長は、上院でパシェコ元上院議長(PSD)の判事指名を希望している旨、大統領に伝えた。これにより、新たな最高裁判事の指名は、ルーラ大統領が外遊から帰国した後、来週に持ち越される見通しとなった。(21日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

5.ルーラ政権

(1)ルーラ政権は2026年の中心課題として、公共の安全対策に関する4つの措置を準備。法務治安省は、犯罪対策の強化に向けて、年末までに一連の措置を発表する予定。犯罪組織の台頭と選挙が近づいていることに伴い、この分野の重要性が増している。(20日付エスタード・デ・サンパウロ)

(2)21日、TV Folha(YouTube)においてフォーリャ・デ・サンパウロ紙のプリシラ・カマザノ記者がコラムニストのモニカ・ベルガモと対談したところ、ルーラ大統領は任期3期の中で10人の大臣を指名する機会があったが、その中には女性は1人しかいなかったとコメント。(21日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

6.議会関連

(1)パウラ・コラジPSOL党首は、上院議員選挙でボウロス氏を支持、票の分散を認めるも、サンパウロ州での政治の刷新を確信。また、エルンジーナ下院議員が2026年選挙には出馬しないとの観測があるにもかかわらず、パウラ・コラジ党首は同議員を依然支持。党幹部は、ボウロス氏が上院議員選挙に出馬することで党の連邦議会下院選率への影響は予想よりも小さいと確信している模様。(21日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)シロ・ゴメス氏が22日にPSDBに復党、PTに挑戦することで、セアラ州での主導権奪還を目指し選挙情勢を揺るがす。対立候補は知事選出馬の可能性を軽視している中、ゴメス氏は「兄弟を悪く言うつもりはない」と発言。(21日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)レナン・カリェイロス連邦上院議員はアルトゥール・リラ連邦下院議員が作成した所得税法案には「違憲性」があると指摘。上院の法案報告者によれば、月収5,000レアルまでの所得者に対する課税免除を規定しているところ、同議員らが法案に盛り込んだ内容については承認されなかった。これに対しリラ下院議員は法案を擁護した。(21日付コヘイオ・ブラジリエンセ)

(4)政府は税制優遇措置の見直しに関する法案の採決を試みる模様。連邦下院内PT党執行部によると、大統領府も同法案(IOF)に関する暫定措置令(MP)に代わる法案の起草に取り組んでいる状況。(21日付けヴァロール・エコノミコ電子版)

7.COP30関連

(1)ブラジル・フリードリヒ・ナウマン財団の自由権担当理事であるハンス・ディーター・ホルツマン氏(ドイツ出身)がUFMGのイベントに参加。同氏は、ブラジル・ベレンでの本イベントの開催は歴史的な出来事であることを強調し、「COP30の成功は経済的自由と持続可能性にかかっている。」と語った。(22日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

8.外政

(1)インドネシアを訪問中のルーラ大統領はプラボウォ大統領との共同記者会見において、トランプ米大統領との会談を前に、同大統領を名指しすることなしに米国の保護主義的な政策を批判した。ルーラ大統領は、今年7月にプラボウォ・インドネシア大統領が行ったブラジル国賓訪問の返礼として、インドネシアを訪問している。ルーラ大統領は続けてASEAN首脳会合に出席するためにマレーシアのクアラルンプールを訪問する。ヴィエイラ外務大臣、ファバロ農務大臣、シルヴェイラ鉱山・エネルギー大臣、サントス科学・技術・イノベーション大臣、ガリポロ中央銀行総裁、ロドリゲス連邦警察長官と共に訪問する。(23日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

 

1.外交関係

(1)マレーシアを公式訪問したルーラ大統領は、アンワル・マレーシア首相と会談した後、二国間関係は「レベルが変わる」と述べた。伯大統領のマレーシア訪問は30年ぶり。この機会に、両首脳は半導体、科学技術・イノベーション等の戦略的分野を対象とした協力協定に署名した。また大統領府によれば、マレーシア政府による伯産鶏肉輸入の再開に加え、魚、ゴマ、メロン、リンゴの輸入が許可された。(26日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)24日、アモリン大統領府首席補佐官は、ベネズエラへの「外部介入」は南米に火をつける可能性があると述べ、トランプ大統領がこの地域で軍事攻勢をかけていることに言及した。(24日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

2.伯米関係

(1)ウーゴ・モッタ下院議長26日、ルーラ大統領とトランプ大統領の会談は、米国とブラジルの関係を強化するとし、対話と外交が再び両国関係の中心となったと述べた。関税引き上げの理由の一つとして挙げたボルソナーロ前大統領については、会談では一切言及されなかった模様。(26日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)ルーラ大統領は、トランプ大統領に、ウクライナとロシアの戦争を共に解決できると伝えたと述べた。27日の朝、ルーラ大統領は「戦争が始まって3年になる。プーチン大統領はすでに自分の望みを知っているし、ゼレンスキー大統領も知っている。足りないのは交渉のテーブルにつくことである。そして、我々は世界におけるこの戦争を終わらせるところまで来ていると思う。そして、これ以上の戦争は必要ない。」と記者会見で述べた。(27日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)27日、ルーラ大統領は、トランプ政権がマドゥーロ・ベネズエラ独裁政権との対話に協力する意向を明らかにした。ルーラ大統領は、マドゥーロ大統領との交渉のテーブルを設け、伯が同席することを提案した。(27日付エスタード・デ・サンパウロ)

(4)27日、伯政府は米国との関税交渉を加速させたいと考えており、トランプ政権の閣僚に来週新たな会合を開くよう要請した。この要請は、ヴィエイラ外相、マルシオ・ホーザ開発・産業・貿易・サービス省筆頭次官、アウド・ファレイロ大統領府次席補佐官とベッセント米国財務長官、グリア米国通商代表の会談で行われた。伯政府筋によれば、両者は再会談を予定することで合意しており、おそらく来週(11月3日の週)ワシントンで開催される。(27日CNN Brasil)

(5)伯米首脳会談後の記者会見で、ヴィエイラ外相は、両首脳の相互訪問があるべきだと述べ、「トランプ大統領は伯に行きたがっているし、ルーラ大統領も喜んで米国に行く。」と強調した。ルーラ大統領によれば、マレーシアでのトランプ大統領との会談により、両首脳は貿易と国際問題について透明性のある個人的な方法で協議することができたという。(27日付CNN Brasil)

(6)マレーシアで行われた伯米首脳会談の目的について質問されマルコ・ルビオ米国務長官は、「伯は大きくて重要な国である。」と答えた。トランプ大統領が課した関税は米国経済にダメージを与えたが、両国間の和解には長期的な利益がかかっている。ルビオ国務長官によれば、米国は伯の優先的貿易相手国になり、中国を貶めたい。(26日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

3.2026年大統領選挙

(1)ルーラ大統領は、2026年の選挙運動を本格化させている。選挙まで残り1年となり、ルーラ大統領はインドネシアで4期目となる大統領選への出馬を表明。(24日付エスタード・デ・サンパウロ)

(2)ルーラ大統領は、健康状態に懸念はないとし、80歳を迎える準備はできていると語り、2026年大統領選挙への出馬を表明。(24日付オ・ヴァロール紙)

(3)AtlasIntel社によると、第1回投票ではルーラ大統領が48.8%、ボルソナーロ前大統領が41.3%を獲得すると予想したが、クーデター未遂事件裁判で有罪判決を受けたところ、ボルソナーロ前大統領が出馬できる可能性は低い。ボルソナーロ前大統領を入れない場合、ルーラ大統領は51.3%、フレイタスSP州知事30.4%、カイアド州知事は6%、ラチーニョ・ジュニア/パラナ州知事は3%、ゼマMG州知事は2.5%を獲得するとみられる。(24日付ヴァロール・エコノミコ紙)

(4)ミナスジェライス州MDB党の代表であるニュートン・カルドーゾ・ジュニア下院議員は、党のイベントで、同党が2026年の大統領選挙でタルシジオ・デ・フレイタス(共和党-SP)の立候補を支持することを決定したと発表。数分後、同議員は情報を修正し、実際にはタルシシオ氏のサンパウロ州知事再選を支持すると述べた。すでに慣例となっているように、MDBは党内で大統領選挙に関する意見が分かれており、現時点では各州に自由裁量権を与える可能性がある。北部および北東部の党幹部は、ルーラ大統領を支持している。一方、南東部および南部のMDB党員は、連邦政府に反対する候補者を支持することを望んでいる。(25日付エスタード・デ・サンパウロ)

4.ルーラ大統領支持率

(1)ルーラ大統領は南米で最も人気のある大統領であり、そのライバルたちは姿を消している。AtlasIntel社の調査によると、ルーラ大統領の支持率は10月に約51%で、3月の任期中の最低値から6ポイント上昇した。(24日付ヴァロール・エコノミコ)

5.最高裁判所(STF)判事後任人事

(1)ロドリゴ・パシェコ上院議員は最高裁判所裁判官に新たな人事に関し、「大統領の決定を待つことが非常に重要だ」と述べ、ミナスジェライス州知事選への出馬については言及を避けた。(23日付エスタード・デ・サンパウロ)

(2)パシェコ前上院議長はSTF判事人事に関する言及を避け、STF裁判官に名前が挙がっていることを光栄に思うと述べたが、決定はル-ラ大統領次第であると強調した。また、ミナス州の政治情勢についてコメントし、ゼマ知事の政権運営を評価した。(23日付コレイオ・ブラジリエンセ)

6.COP30

(1)11月ベレンで開幕予定のCOP30を目前に控え、ファキンSTF長官は、環境への影響が大きい訴訟を本会議の審理議題に追加。ファキン長官は、環境保護活動家や伝統的民族の擁護者の主張を支持することが多いが、他の判事が常に同調するとは限らない。(24日付エスタード・デ・サンパウロ)

(2)ペトロブラスがアマゾン川河口(リオグランデ・ド・ノルテ州からフランス領ギアナ国境までの赤道沿岸地域)で探査井の掘削を開始することを許可したことで、ブラジルのエネルギー政策の方向性と環境政策に関する議論を再燃させた。アルコルンブレ上院議長は、同認可を歓迎し、この決定を国の発展にとって「歴史的な一歩」と評価。同氏によれば、「ブラジルは、責任を持って、安全かつ透明性をもって、その天然資源を開発する条件を備えている」とし、その恩恵が地元住民に届き、国のエネルギー主権を強化することを保証した。また、ルーラ大統領は、赤道沿岸での掘削許可はブラジルの環境への取り組みに反するものではないと述べた。同氏によれば、この地域での石油開発は、ブラジルのエネルギー転換の資金源となり得るという。(26日付コレイオ・ブラジリエンセ)

7.議会関連

(1)連邦上院憲法・司法委員会(CCJ)は女性嫌悪を差別犯罪とする法案を、13対2の賛成多数で可決。同法案は、人種差別法を改正し、女性嫌悪を差別犯罪に追加するものである。(23日付コレイオ・ブラジリエンセ)

8.ボルソナーロ前大統領に関する裁判

(1)ボルソナーロ前大統領の弁護側は、STFによる有罪判決に対する控訴を、27日までに提出しなければならない。弁護側が選択できる手段の一つは、いわゆる「判決不明点解明願(Embargos de Declaração)」であり、その主な目的は、判決文(“Acórdão”)における不明瞭な点、欠落、矛盾を解消することである。同判決文は、10月22日(水)に公表され、1991ページに及び、各判事の投票結果をまとめ、弁護側による控訴の根拠となる文書である。STF第一小法廷が弁護側による控訴を審理する予定であるが、この審理に期限は設けられいない。この手続きの終了後、「判決確定」となる。(27日付、コレイオ・ブラジリエンセ)

 

1.伯米関係

(1)ルーラ大統領は27日、前日のトランプ米大統領との会談に関し、「トランプは、伯との間で合意に達することができると保証した。それは予想より早いことになると思う。伯米間の問題は、近日中に解決すると確信している。トランプ大統領には、我々にはイデオロギー上の違いがあるが、お互い、選挙で選ばれた国の代表として、話し合うことに何の支障もないことを強調した。(両国間の)交渉では、触れてはならないテーマなどない。彼(トランプ)が希少鉱物、レアアース、エタノール、砂糖等について話し合いたいというのであれば、話し合いに応じる。両国間の問題は直に解決されるであろう。今後は、仲介者を挟むことなく、首脳同士でやり合える。互いに好きであろうがなかろうが、我々は、国家元首としての責任を果たさなければならない」と述べた。また、ルーラは、会談では、ボルソナーロ前大統領の裁判については軽く触れたことを明らかにするとともに、「トランプは、王が死去すれば、新しい王が即位することを知っている。ボルソナーロは、伯の政治にとって既に過去の人物である。自分は、トランプには、自分と3回会議を行えば、ボルソナーロなど殆どとるに足らない存在であることに気付くであろうと伝えた」と述べた。尚、トランプ大統領は、「ルーラとの会談は、非常に良かった。ルーラが80歳の誕生日を迎えたことを祝福する。彼(ルーラ)は非常に精力的で、感銘を受けた」と述べたが、伯に対する関税については「伯は合意を望んでいるが、どうなるか見てみようではないか。今のところ、彼らは50%の関税を払っている」と慎重な姿勢を崩さなかった。27日、ヴィエイラ外相、マルシオ・ホーザ開発・産業・貿易・サービス省筆頭次官、アウド・ファレイロ大統領府次席補佐官とベッセント米国財務長官及びグリア米国通商代表の会談が行われ、両国が合意に向けた交渉のタイムテーブルを作成することで合意した。(28日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)Quaest社によると、ルーラ大統領がトランプ米大統領とがっしりと握手している画像をSNSに投稿したところ、インスタグラム、X、Tik—Tok及びフェイスブックにおける視聴回数の合計が7200万回に達し、ルーラの視聴回数としては過去最高を記録した。これまでの最高記録は、2021年にルーラがTシャツと水着という姿でジャンジャ夫人と撮った画像の6500万回であった。(29日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)28日、米国議会の上院では、賛成52(共和党議員の5票を含む)、反対48により、伯に対する追加関税は違法であるとの決議が可決された。但し、下院では、トランプ関税に反する法案等については審議しないとのルールが採択されているため、この決議が下院の承認を得られることはない。(29日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(4)ルーラ大統領は、26日のトランプ米大統領との会談で、伯が米国とベネズエラの仲裁を務めることを提案したが、米国務省は、マドゥロ政権に対しては軍事的なアプローチを取ることにしており、ルーラの提案には否定的である。ルビオ国務長官の周囲は、伯政府はベネズエラに好意的であるとして、伯は本件に首を突っ込むべきではないとしている。(29日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

2.ボルソナーロ前大統領に関する裁判

(1)ボルソナーロ前大統領の弁護団は27日、STFによる有罪判決に対する異議申し立て(判決不明点解明願(Embargos de Declaração))を行った。これは、合議判決文(“Acórdão”)における不明瞭な点、欠落、矛盾を解消するためのものであるが、これにより、判決が覆されることはほぼないとされている。弁護団は、主に手続き上の不備を訴え、十分に弁護が行えなかったとして、裁判の無効を求めている。また、フックス判事がボルソナーロの有罪に対して反対意見を述べたことを引用して、ボルソナーロの無罪を訴えている。(28日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)STF第1小法廷の裁判長を務めるディーノ判事は28日、ボルソナーロ前大統領、並びにブラガ・ネット元文官長等、他の被告6名が提出した異議申し立て(判決不明点解明願い(Embargos de Declaração))の審理は11月7日に開始し、11月14日までに終えたいと述べた。異議申し立てが棄却された場合、12月に有罪判決が確定し、年内に刑の執行が行われる可能性が高い。尚、ボルソナーロの裁判では、唯一、有罪に対して反対意見を述べたフックス判事は先週、第1小法廷から第2小法廷に異動したため、異議申し立ての審理には参加しないことになっている。(29日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)ボルソナーロ前大統領は、STFによる有罪判決に対する異議申し立てが不発に終わる可能性が高いことから、刑務所への収監が現実味を帯びてきていることに加え、ルーラ大統領とトランプ米大統領の会談が実現し、トランプ政権とのパイプをルーラに奪われそうになっていることに焦燥感を募らせている。また、カイアド・ゴイアス州知事(ユニオン・ブラジル)とシロ・ノゲイラ・PP党首がSNS上で口論を行う等、右派が分裂し、諍いが生じているにも拘わらず、ボルソナーロは、自宅軟禁中であるため、右派をまとめることもできないでいる。更に、三男エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員が米国から次期大統領選に出馬すると公言し、フレイタス・サンパウロ州知事、シロ・ノゲイラ・PP党首、ヴァルデマール・コスタ・ネット・PL党首等と衝突を繰り返していることも右派の分裂に拍車をかけている。ボルソナーロは、エドゥアルドを鎮めるために長男フラヴィオ・ボルソナーロ上院議員(PL-RJ)を米国に派遣した。その結果、父ボルソナーロが指名する大統領候補を支持することで、エドゥアルドは納得した模様。(29日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

3.ルーラ政権

(1)連邦政府は、明年の選挙に向けて、ルーラ3期目の目玉政策である高校生支援プログラム「Pé-de-Meia」に梃入れするため、その予算の上限を撤廃しようとしている。2024年に制定された「Pé-de-Meia」法では、2025年度の予算は200億レアルであるが、2026年には120億レアル、2027年には50億レアルに削減されることになっている。PTは、「Pé-de-Meia」の恒久化には上限の撤廃が不可欠と主張しているが、歳出削減を主張する野党はこれに反発している。(28日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)29日、ボウロス大統領府官房長官(PSol)の就任式が執り行われた。ボウロス長官は、28日のリオデジャネイロ州警察による犯罪組織の掃討作戦で犠牲になった警察官や住民のために1分間の黙祷を捧げた後、「この国の犯罪組織の幹部は、ファヴェーラ(貧民街)にはおらず、ファリア・リマ(サンパウロの金融街)で資金洗浄を行っている」として、同作戦を批判した。また、「政府は、民主主義を攻撃する人達との対話には応じない」と述べ、ボルソナーロ派を牽制すると共に、週休二日制の義務化に取り組むと述べた。尚、ボウロスは、明年の選挙には出馬しないと明言しており、サンパウロ州における左派の間では、早くもボウロスの票の奪い合いが行われている。ボウロスは、2022年の下院議員選挙では、100万票以上を獲得し、サンパウロ州でトップ当選を果たした。(30日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

6. COP30

(1)開催地ベレンでは、宿泊費の高騰が話題になっていたが、伯ホテル産業協会によると、開幕まで2週間となった時点で、ホテルの料金及び貸家の賃料が30%~60%も激減している。同協会所属のホテルの場合、96%が既に予約で埋まっているが、それ以外のホテル及び貸家の場合、予約が取れずに値下げに踏み切るところが少なからずある模様。(28日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)議長国の伯は、化石燃料からの移行に向けたロードマップ作りに着手することを望んでいる。伯は、温暖化効果ガスの排出責任、経済力、化石燃料への依存度、その国で生産される石油・ガス・石炭の質に応じて、どの国が優先的に化石燃料からの移行に取り組むかを決めることを検討している。但し、この方法では、米国等の先進国が優先的に取組を行うことになり、また、産油国であるサウジアラビアの順番は最後の方になる。伯の順番は、中間辺りである。(28日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

7.議会関連

(1)国家社会保障院(INSS)の不正疑惑(年金から不当に組合費等が天引きされていた問題)に関する議会合同調査委員会(CPMI)の報告官を務めるアルフレッド・ガスパル下院議員(ユニオン・ブラジルーAL)は27日、キン・カタギリ下院議員(ユニオン・ブラジルーSP)の要請を受け、ウェヴェルトン・ロシャ上院議員(PDT-MA)とエウクリデス・ペテルセン下院議員(Republicanos-MG)を同調査委員会に召喚すると表明した。前者は、疑惑の中心的人物とされる実業家(アントニオ・カルロス・カミーロ。通称INSSのハゲ)と共同でビジネスジェット機を所有していた。後者は、本件に関与していたとされるNGOに航空機を売却したことが判明。ガスパル報告官は、「取引の詳細について説明してもらうのが目的」と強調。(28日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)28日、下院において、民間航空機の預け荷物(国際線及び国内線)及び座席指定の無料化に関する法案が可決され、上院に上程された。尚、航空会社は、この法案に反対しており、上院に対して同法案の否決を求めている。(29日付フォーリャ・デ・サンパウロ及び30日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)最近、伯では、カシャッサ(サトウキビから作った蒸留酒)等の密造酒にメタノールが混入され、10名以上が死亡し、複数の被害者が失明したことが社会問題化しているところ、28日、下院において、飲料及び食品を偽造し、死者を出した場合には禁固5年~15年、失明等、深刻な健康被害を引き起こした場合は禁固6年~12年の刑に処す(それ以外の場合は禁固4年~8年)との法案が可決され、上院に上程された。同法案は、2007年に提出されたが、下院憲法司法委員会(CCJ)で審議が止まったままとなっていた。今回のメタノール混入事件を受けて、急遽、可決される運びとなった。(29日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(4)29日、下院では、不動産の評価額の改定に関する法案が賛成286、反対146により可決され、上院に上程された。同法案には、税金の相殺手続の厳格化等、今月8日に否決された財政規律に関する暫定措置令(MP)の内容の一部が盛り込まれたため、政府与党が勝利を収めた形ととなった。政府は、同暫定措置令の否決により、明年度予算の歳出を350億レアルも削減する必要に迫られていたが、この法案が成立すれば、削減額は150億レアルに減少することになる。(30日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

8.治安

(1)28日、リオデジャネイロ州警察が警察官2500人を投入して、犯罪組織「Comando Vermelho」の掃討作戦を実行した。リオデジャネイロ市北部の貧民街「ファヴェーラ」では、大規模な銃撃戦が展開され、街のあちこちから煙が立ち上り、市街戦の様相を呈した。その結果、28日夜の時点で、警察官4名を含む64名の死亡が確認され、組織の構成員と見られる81名が逮捕された。ファヴェーラに通じる道路が封鎖され、重火器やドローン等を使った攻撃が繰り返されたことで、住民はパニックに陥った。犯罪組織の掃討作戦としては過去最大規模で、死傷者の数も最も多い。英ガーディアン等、海外メディアも本件を大々的に報道した。カストロ・リオデジャネイロ州知事(PL)は、批判に対し、「連邦政府の協力を得られなかったため、リオデジャネイロ州は単独で犯罪組織に立ち向かうしかなかった」と反論した。これに対し、レヴァンドフスキ法務治安相は、「連邦政府がカストロ州知事から協力を求められたことはない」と反論。ルーラ大統領は、マレーシアから帰国次第、本件に関して緊急会議を開くことを決定。(29日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)29日、リオデジャネイロにおける犯罪組織掃討作戦(Operação Contenção)の死亡者数が121人に達した。これは、1992年に発生した「カランジルー刑務所(サンパウロ州)の虐殺(受刑者111名が死亡)」を抜き、警察のオペレーションによる死亡者数では、伯史上最悪の記録となった。何十体もの遺体が道路に並べられたショッキングな映像が大々的に報道され、国民に衝撃を与えている。作戦が行われた地域の住民が「警察は、犯罪組織の構成員と住民を区別することなく発砲し、大勢の住民が巻き添えになった」として、抗議デモを行った他、人権団体が「これは警察当局による虐殺である」と批判しているのに対し、カストロ・リオデジャネイロ州知事(PL)は、作戦の成功を強調した。尚、国連人権高等弁務官事務所は、本件に関する調査の実施を求めた。(30日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)レヴァンドフスキ法務治安相は29日、カストロ・リオデジャネイロ州知事と会談した後、連邦政府とリオデジャネイロ州政府が共同で犯罪組織緊急対策本部を設置することを発表した。同大臣は、「連邦政府は、犯罪組織の幹部を連邦刑務所に移送したり、リオデジャネイロ州警察のインテリジェンス活動に協力する等して、リオデジャネイロの治安回復に努める」と述べた。また、同大臣は、政府が提出した治安対策に関する憲法改正案の早期成立を呼び掛けた。(30日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(4)ルーラ大統領は29日、関係閣僚を招集し、リオデジャネイロの犯罪組織掃討作戦に関して緊急会議を開いた。ルーラは、本件に関する報告を受けたのが作戦の終了後(28日夜の帰国後)であったことを問題視した。レヴァンドフスキ法務治安相は、連邦警察は事前にリオデジャネイロ州警察から連絡を受けていたが、連邦警察はこれに加わらなかったため、法務治安省への報告が遅れたと説明した。尚、今回の掃討作戦では、大勢の死者を出す等、必要以上とされる実力行使に対する批判が沸き起こったが、今のところ、連邦政府のリオデジャネイロ州介入(法と秩序を守るためのオペレーション(GLO))は見送られた。(30日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(5)アルコルンブレ上院議長(ユニオン・ブラジル-AP)は29日、リオデジャネイロの犯罪組織掃討作戦を受け、犯罪組織に関する議会調査委員会(CPI)を来月4日に設置すると発表した。また、STFのモラエス判事は、カストロ・リオデジャネイロ州知事に対し、今回の掃討作戦の詳細について説明するよう、命じた。(30日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(6)AP Exata社がSNSのコメント等を調査したところ、リオデジャネイロの犯罪組織掃討作戦を支持しているユーザーは、全体の46.8%で、不支持は53.2%であった。リオデジャネイロにおける治安悪化の責任はカストロ州知事にあると考えているのは全体の63.4%で、29.7%がルーラ大統領にあると考えている。右派は、治安悪化の責任はルーラにあると印象付けようとしているが、成功していないようである。(30日付コレイオ・ブラジリエンセ)

 
 
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