2025年8月 ブラジル関連情報
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2025年8月ブラジル関連情報
1.伯米関係・クーデター未遂
(1)アルキミン副大統領は31日、TVグローボの番組に出演した際、「米国の関税措置は、予想より酷くはなかったが、政府としては、より多くの輸出品目を追加関税の対象から外すべく、米国に対する働き掛けを強化する。特に(追加関税の対象に入っている)コーヒーが鍵となる。米国との交渉はまだ終わっていない。それは今日から始まる」と述べた。また、アダッジ財務相によると、米財務省は、「本年5月の伯財務省との会合に続き、2回目の会合を行う用意がある」と通告した。尚、アダッジは、「米の関税措置は不当であり、伯政府は、米国の然るべき機関又は国際機関に対してその不当性を訴えることを検討している」と述べるとともに、「政府は、30日に発表された関税措置に基づいて、輸出企業支援策(融資、雇用を維持するための支援等)の調整を行っている。これは近日中に発表される」と述べた。(1日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)
(2)ルーラ大統領は31日、STF判事を招いて夕食会を開き、「米国のモラエス判事に対する制裁は、伯の国家主権と公的機関に対する攻撃である」として、本件に関しては全面的にSTFとモラエス判事を支持すると表明した。夕食会には、バホーゾ・STF長官の他、モラエス、メンデス、ファキン、ザニン及びディーノ各判事が出席した。尚、モラエス判事は、本件に関して政府の支援を受けるつもりはないとしているが、連邦弁護庁(AGU)は、米国の外国資産管理事務所(OFAC)に対して不服申立を行うと共に、米国の裁判所に提訴する方向で検討を進めている。尚、米国務省の報道官は31日、「モラエスは、活動家の判事であり、米国の市民と企業等の自由を制限するために権力を乱用している。米国は、米国市民の表現の自由を侵害する、外国の邪悪な当局者は容認しない」と表明。(1日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)ダタフォーリャ社が7月29日から30日にかけて2004人を対象に実施した米国の関税措置に関する世論調査の主な結果は以下の通り:
・米国の関税措置が伯経済に与える影響:「大きな損害を被る」66%、「少し損害を被る」23%、「影響なし」7%、「分からない」4%。
・トランプ米大統領がボルソナーロ前大統領の裁判中止を要求しているのは正しいことか:「間違っている」57%、「正しい」36%、「分からない」7%。
・トランプが言うように、ボルソナーロは迫害されており、不当な扱いを受けていると思うか:「思わない」50%、「思う」45%、「分からない」5%。
・米国の関税措置に対して伯政府は何をすべきか:「交渉により、トランプを説得する」72%、「米国に報復関税をかける」15%、「米国の要求を全て呑む」6%、「分からない」7%。
・以下の主要貿易相手国の内、伯はどこを信頼すべきか:
中国:「非常に信頼できる」23%、「少しは信頼できる」43%、「信頼できない」29%、「分からない」5%。
米国:「非常に信頼できる」19%、「少しは信頼できる」32%、「信頼できない」46%、「分からない」3%。
EU諸国:「非常に信頼できる」18%、「少しは信頼できる」56%、「信頼できない」19%、「分からない」6%。
メルコスール諸国:「非常に信頼できる」17%、「少しは信頼できる」55%、「信頼できない」23%、「分からない」5%。 (1日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(4)バホーゾ連邦最高裁判所(STF)長官は1日、本年下半期の審理再開に関する式典において演説した際、米国から制裁を科せられたモラエス・STF判事を擁護し、「(クーデター未遂に関する)裁判は、適正手続と透明性に基づき、(外国の)干渉を一切受けることなく、行われる」と述べた。モラエス判事は、「司法の独立は、曲げてはならない原則の一つであり、STFはこれを守り抜く。STFには、国家主権、民主主義、並びに法治国家の敵に立ち向かう勇気がある。(米国のモラエスに対する)制裁は無視する」と述べた。(2日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(5)1日、PT等の左派政党や労働組合が在伯米国大使館前でデモを行い、トランプ関税とモラエス判事に対する制裁に抗議すると共に、エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員(PL-SP)の議員資格剥奪を要求した。デモ隊は、「恩赦反対(sem anistia)」や「伯をリスペクトせよ」と書かれたプラカードの他、ニワトリに扮し、胸に「TACO」と書かれたトランプ米大統領のイラストを掲げて気勢を上げた。(2日コレイオ・ブラジリエンセ)
(6)トランプ米大統領は1日、ブラジルの記者の質問に対し、「ルーラは、いつでも私に電話をかけてもいい。どうなるか、見てみようではないか」と述べた。これに対し、ルーラ大統領は、「我々には常に対話を行う用意があった。伯の将来を決めるのは伯の国民と政府である。今、我々は、我国の経済と企業と労働者を守るため、米国の関税措置に対する回答を用意しているところである」とXに投稿した。(2日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(7)ダタフォーリャ社の世論調査によると、「ボルソナーロ前大統領は、クーデター未遂により逮捕されるべき」と答えたのが全体の48%に達したのに対し、「逮捕されるべきではない」は46%で、ほぼ拮抗している。(2日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(8)3日、サンパウロ等、少なくとも20の州都、並びに複数の地方都市において、ボルソナーロ派が大規模デモを実施し、ボルソナーロ前大統領の恩赦、並びにモラエス判事の弾劾を要求した。デモ隊は、「伯を独裁から守ってくれて、サンキュー、トランプ」と英語で書かれたプラカードの他、伯と米国とイスラエルの国旗を掲げた。また、「ボルソナーロ 2026年」、「ルーラとモラエスは出ていけ」と書かれたプラカードも数多く見られた。尚、ボルソナーロは、週末の外出が禁止されているため、参加できなかった。また、フレイタス・サンパウロ州知事、カイアド・ゴイアス州知事、ゼマ・ミナスジェライス州知事、ラチーニョ・Jr・パラナ州知事といった、右派の大統領候補と目される州知事は今回のデモには参加しなかった。サンパウロ市のデモは、パウリスタ大通りで行われた。ドローンとAIを使用した集計によると、デモがピークに達した午後3時半の参加者数は3.76万人であった。これは、前回(6月29日)同じ場所で行われたボルソナーロ派のデモ(参加者1.24万人)より多かったが、昨年2月のデモ(18.5万人)よりは少なかった。(4日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)
(9)アルキミン副大統領は4日、「伯政府は、米国の関税措置についてWTOに提訴することにした。但し、提訴するタイミングについては、ルーラ大統領が決める」と述べた。また、アダッジ財務相は4日、「米国とは、希少鉱物の開発を視野に入れた交渉ができるかもしれない」と述べた。(4日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(10)モラエス判事は4日、ボルソナーロ前大統領に対し、SNS使用禁止等の制限措置に違反したとして、自宅軟禁と携帯電話の押収を命じた。これにより、ボルソナーロは、モラエス判事の許可がなければ自宅から外出することができなくなり、弁護士と許可を受けた者以外はボルソナーロを訪問することはできなくなった、また、携帯電話等、電子機器の使用は禁止され、第三者を介して使用することもできなくなった。ボルソナーロは、3日のボルソナーロ派による抗議活動の際、携帯電話を使って支持者らにメッセージを送り、その様子を記録した動画を長男フラヴィオ・ボルソナーロ上院議員等を通じてSNSに投稿した。また、モラエス判事は、「新たな違反があった場合には、(拘置所や刑務所等の)閉鎖式施設への収監に切り替える」と強調した。この決定に対し、ボルソナーロの弁護団は、「予想外のことであり、驚いている。ボルソナーロは、制限措置に違反しておらず、連邦最高裁判所に対して不服申立を行うことにしている」と述べた。フラヴィオ・ボルソナーロ上院議員等、ボルソナーロの息子達は、「これは、マグニツキー法の適用に対するモラエス判事の報復であり、卑劣な行為である。伯は、司法の独裁下にあり、モラエス判事は弾劾されなければならない」と反発。米国務省西半球局は、「人権侵害により米国から制裁を受けているモラエス判事は、反政府派を黙らせ、民主主義を脅かすために国家機関を使い続けている。ボルソナーロが公の場で抗弁する権利を更に制限することは、公益に反する。ボルソナーロには喋らせるべきである。米国は、このような行為を支援し、奨励する者に対して責任を取らせるであろう」とSNSに投稿した。尚、伯政府内では、ボルソナーロの自宅軟禁により、益々、米国との交渉が困難になる、または伯に対して新たな制裁が科されることが危惧されている。(5日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)
(10)モラエス判事は、STFの出国禁止命令に背いて渡米したボルソナーロ派のマルコス・ド・ヴァル上院議員(Podemos-ES)に対し、GPSの装着、外交旅券の押収、夜間外出禁止、銀行口座の凍結、SNS使用禁止等の制限措置を課した。同議員は、連邦警察官に対する脅迫、司法妨害等の容疑で捜査対象となっている。(5日付コレイオ・ブラジリエンセ)
2.ルーラ政権
(1)伯地理統計院(IBGE)は31日、第2四半期の失業率が第1四半期の7%から5.8%に低下したと発表した。これは、2012年以降、最も低い数字である。専門家は、「政府の景気浮揚策に寄るところが大きい。但し、短期的に雇用水準が改善されても、景気が過熱し、インフレが上昇すれば、中長期的にはどうなるか分からない。米国の関税措置の影響もこれから出てくる可能性がある」と見ている。 (1日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(2)ルーラ大統領は30日、化粧品、衛生用品及び香水の動物実験禁止法を裁可した。これにより、伯は、動物実験禁止法を制定した40ヶ国以上の仲間入りを果たした。(1日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)IntelAtlas社が7月25日から28日にかけて7334人を対象に実施した世論調査によると、大統領選が現時点で実施された場合、ルーラ大統領が何れの組み合わせでも1位で決選投票に進出し、決選投票でも勝つとの結果が出た。第1回投票に関しては、前回の(6月)の調査ではボルソナーロ前大統領が支持率46%で、ルーラ(44.4%)を上回っていたが、今回の調査では、ルーラ47.8%、ボルソナーロ44.2%と逆転した。決選投票でもルーラ50.1%、ボルソナーロ46.3%で、ルーラが勝つとの結果が出ている。フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)が対抗馬となる場合、第1回投票ではルーラ48.5%、フレイタス33%で(両者の差は、前回の10.6ポイントから15.5ポイントに広がった)、決選投票では、ルーラ50.4%、フレイタス46.4%(両者の差は前回の0.7ポイントから3.8ポイントに拡大)となっている。(7月31日付ヴァロール・エコノミコ電子版)
(3)ダタフォーリャ社が7月29日から30日にかけて2004人を対象に実施した世論調査の主な結果は以下の通り:
・政府支持率:「支持」46%(本年6月比±0)、「不支持」50%(±0)、「分からない」3%(±0)。トランプ関税等により、政府支持率が上昇するのではないかとの予想は外れた形となった。
・ルーラ政権に対する評価:「悪い/非常に悪い」40%(±0)、「普通」29%(2ポイント減)、「非常に良い/良い」29%(1ポイント増)、「分からない」1%(±0)。
・次期大統領選:(ボルソナーロ前大統領が出馬する場合)ルーラ(PT)39%、ボルソナーロ(PL)33%、ラチーニョ・Jr・パラナ州知事(PSD)7%、カイアド・ゴイアス州知事(ユニオン・ブラジル)5%、ゼマ・ミナスジェライス州知事(Novo)4%、白票/無効票9%、分からない2%。
(フレイタス・サンパウロ州知事が出馬する場合)ルーラ(PT)38%、フレイタス(Republicanos )21%、ラチーニョ・Jr・パラナ州知事(PSD)12%、カイアド・ゴイアス州知事(ユニオン・ブラジル)7%、ゼマ・ミナスジェライス州知事(Novo)6%、白票/無効票14%、分からない3%。
・ルーラがボルソナーロの息子又はミシェーレ夫人と争った場合、ルーラがエドゥアルドとは19ポイント差、フラヴィオとは22ポイント差、ミシェーレ夫人には15ポイント差をつけて勝つとの結果が出ている。
・決選投票に関しては、ルーラ47%(前回比3ポイント増)、ボルソナーロ43%(2ポイント減)。ルーラ対フレイタスの場合は、ルーラ45%(2ポイント増)、フレイタス41%(1ポイント減)。
・ルーラ不出馬の場合、誰が与党の大統領候補になるべきかとの問いには、アダッジ財務相29%、アルキミン副大統領26%との結果が出た。尚、本年4月の時点では、アダッジは37%、アルキミンは18%で、アルキミンに対する期待が高まっていると見られる。
・「明年の選挙では、ボルソナーロ前大統領、他のクーデター未遂犯、並びに三権襲撃犯の恩赦又は減刑を公約に掲げる候補者には投票しない」と答えたのが全体の61%に達したのに対し、「絶対に投票する」は19%、「投票するかもしれない」は14%であった。(3日及び4日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(4)ルーラ大統領は3日、ブラジリアで開催されたPT全国会合に出席した際、「再選立候補するためには、健康状態が100%でなければならない。立候補しても、バイデン(前米大統領)のようなことになったら元も子もない。年齢は80でも、30代の体力があるなら出馬する。出るからには勝たなければならない」と述べた。また、ルーラは、「PTは、連邦議会において少しでも多くの議席を確保するため、連邦議員、特に上院議員選挙に力を入れるべきである」と主張した。(4日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
4.連邦議会
(1)モッタ下院議長は31日、連邦最高裁判所(STF)が比例代表選の議席配分に関する選挙法の規定(2021年に改正され、2022年の選挙から施行された)を無効としたことにより、連邦下院議員7名の入れ替えを発表した。これにより、ジルヴァン・マッシモ(Republicanos-DF)、アウグスト・プッピオ(MDB-AP)、レブラォン(ユニオン-RO)、ラーザロ・ボテーリョ(PP-TO)、プロフェッソーラ・ゴレッチ(PDT-AP)、シルヴァイ・ワイアピ(PL-AP)及びソニゼ・バルボーザ(PL-AP)の7名が議席を失い、その代わりにプロフェッソーラ・マルシヴァ―ニア(PCdoB-AP)、パウロ・レモス(PSol-AP)、アンドレ・アブドン(PP-AP)、アリーネ・グルジェル(Republicanos-AP)、ロドリゴ・ローレンベルギ(PSB-DF)、ラファエル・ベント(Podemos-RO)及びチアゴ・ディマス(Podemos-TO)が繰り上げ当選することになった。(1日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)野党PLは31日、表現の自由は尊重するとしながらも、トランプ米大統領を批判し、モラエス・STF判事を擁護したアントニオ・カルロス・ロドリゲス下院議員(PL-SP)を除名処分にすることを決定した。(1日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
5.外交
(1)COP30の開催地ベレンでは、開催期間中の宿泊費の高騰(通常料金の10~30倍。過去のCOPでは、通常料金の2~3倍が相場であった)が問題化しており、7月29日には本件に関してUNFCCCCOPの緊急会合が開かれた。ラゴ・COP30議長は31日、「途上国等、参加国の一部は、ホテル代の高騰を理由に開催地の変更を求めている」として、ベレンのホテル業界を批判した。ラゴ議長は1日、「COP30の開催地はベレンであり、(開催地変更の)プランBは存在しない」と述べた。COP30開幕まであと100日を切った。(1日付フォーリャ・デ・サンパウロ及び2日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)PTは2日、「イスラエルは、ガザ地区で戦争犯罪を行っている」として、ルーラ大統領に対し、イスラエルとの外交及び通商関係の停止を求める書簡を送ることを決定した。(3日付コレイオ・ブラジリエンセ)
1.伯米関係・クーデター未遂
(1)ルーラ大統領は5日、経済社会持続可能開発審議会(Conselhão)の会合において、「トランプ米大統領は、自分(ルーラ)と話すつもりがないため、(米国の関税措置について)交渉をするため、自分から彼に電話をかけるつもりはない。但し、COP30に招待し、彼が気候問題についてどう考えているのかを聞くためであれば、トランプに電話をかけるつもりはある」と述べた。(6日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(2)ボルソナーロ派は、ボルソナーロ前大統領の自宅軟禁を受け、米国が伯に対して新たな制裁を科すことを期待している。エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員(PL-SP)は、先ず、モラエス・STF判事夫人に対してマグニツキー法を適用し、その後、他のSTF判事に対して同法を適用するよう、米国政府に対して働きかけを行っている。エドゥアルドは、「他のSTF 判事がボルソナーロの自宅軟禁を支持すれば、マグニツキー法の対象になるであろう」と警告している。また、エドゥアルドは、9月に欧州諸国を歴訪し、モラエス判事に対する制裁を呼び掛けることにしている。(6日及び7日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(3)5日、ボルソナーロ派の議員が上下両院の本会議場を占拠し、三権襲撃犯恩赦法案とモラエス・STF判事の弾劾を議題に取り上げることを要求して、座り込みを開始した。フラヴィオ・ボルソナーロ上院議員(PL-RJ)は、モラエス判事の弾劾、三権襲撃犯及びクーデター未遂犯に対する完全且つ全面的な恩赦、並びに公職者の裁判管轄特権(foro privilegiado)の廃止を条件とする「和平のためのパッケージ」を発表した。これに対し、リンジベルギ・ファリアス・PT下院院内総務等の与党議員は「これは議会と民主主義に対する攻撃である。ボルソナーロ派の議員を倫理委員会にかけるべきである」と非難した。6日夜、モッタ下院議長が下院本会議のセッションを強行しようとしたところ、ヴァン・ハッテン下院議員(Novo)等、ボルソナーロ派の議員に阻まれた。モッタ議長は、しばらく揉み合いになった後、議長席に着席することができ、セッションの開始を宣言した。同議長は、対話による解決を呼び掛け、本会議場の占拠等の実力行使は議会運営のためにならないと強調した。一方、上院では、ボルソナーロ派による占拠が続いているが、アルコルンブレ上院議長は、恫喝には屈しないとして、7日からリモートにより、法案審議を再開すると宣言した。(6日及び7日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(4)ヴィエイラ外相は5日、米国政府が「Pix(オンライン決済システム)等、伯の不当な貿易慣行について調査を開始する」と発表した件に関し、「Pix及び伯の貿易慣行は正当である。伯外務省は、米国に対する回答を今月18日までに送付する。我々は、(米国と)貿易について話し合う用意があるが、伯の国家体制、民主主義及び国家主権が取引材料となることはない」と述べた。(6日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(5)ルーラ大統領は6日、ロイター通信のインタビューに応じた際、「大統領というものは、へり下るべきではない。私は、(外国の)大統領は全てリスペクトしており、自分もリスペクトされることを望んでいる。最も優れた交渉人が(米国との)対話を行っており、私からトランプ米大統領に電話をかけることはない」と述べた。また、ルーラは「トランプ関税の通告は、強権的であり、我々はそのような形で交渉することに慣れていない。米国大統領が伯の内政問題に干渉するのは容認できない」と批判したが、相互主義法に基づく報復は否定した。更にルーラは、「BRICSが米国の関税措置に対する答えを共同で模索する可能性について探っている。先ず、7日にモディ・インド首相と電話会談を行い、その後、中国の習近平主席とも話し合うことにしている」と述べた。(7日付コレイオ・ブラジリエンセ及びオ・エスタード・デ・サンパウロ)
(6)6日、伯の輸出品に対する米国の追加関税(40%)が発動された。これにより、オレンジジュース等、一部の例外を除いて、伯の輸出品に対する関税は50%に引き上げられた。伯政府は6日、WTOの紛争解決システムを通じて、米国に対し、トランプ米大統領の関税措置に関する説明を求めたが、これが実質的な効果を生むことはない。尚、アダッジ財務相は、「トランプ関税の影響を被る輸出産業の支援策は、既にルーラ大統領に提出されており、大統領の許可が下り次第、暫定措置令(MP)の形で発表する」と述べた。(7日コレイオ・ブラジリエンセ)
(7)ボルソナーロ前大統領の弁護団は6日、連邦最高裁判所(STF)に対し、ボルソナーロの自宅軟禁、並びにGPSの装着、SNS使用禁止等の制限措置に対する不服申し立てを行った。弁護団は、モラエス判事がこれらの決定を撤回しないのであれば、本件を速やかにSTF大法廷にかけることを求めている。メンデス・STF判事は、「STFは、ボルソナーロの自宅軟禁に関し、モラエス判事を支持している」と述べ、モラエスがSTF内で孤立しているとの見方を否定した。尚、モラエス判事は、ボルソナーロの息子(次男エドゥアルドは除く)、その妻及び孫に対し、事前の許可無しで、ボルソナーロを訪問することを許可した。(7日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(8)6日、下院財政税制委員会(CFT)では、エスコバル在伯米国臨時代理大使を今月13日か20日に議会に招き、トランプ関税について説明を求めるとの決議が採択された。CFT委員長のロジェリオ・コヘイア下院議員(PT-MG)は、「伯と米国の貿易は、米側の黒字になっているにも拘わらず、何故、米国がこのような措置を講じることにしたのか、その理由について説明してもらう」と述べた。(7日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(9)中国の王毅外交部長は、アモリン大統領補佐官と電話会談を行った際、「中国は、法外な関税による恫喝に抵抗している伯を支持している。また、中国は、伯の内政問題に対する非理性的な干渉に反対している」と述べた。また、中国外交部のLin Jian報道官は、中国が企業183社に対して伯産コーヒーの輸入を許可したと発表した。(6日付フォーリャ・デ・サンパウロ電子版)
2.ルーラ政権
(1)連邦政府は5日、0歳から6歳までの乳幼児を対象とする「国家乳幼児総合政策(Pnipi)」を発表した。これは、保健省、教育省、人権省、開発・福祉・家庭・飢餓対策省等、複数の関係省庁が連携して、乳幼児の健やかな成長、教育、人権保護等に取り組むというものである。(6日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)政府内では、アルキミン副大統領(PSB)がトランプ関税に対する対応により、存在感を増していることから、明年の大統領選では、再びルーラ大統領の副大統領候補になる可能性が高まっていると見られている。尚、与党PTの一部は、ルーラの副大統領候補はPTから指名し、アルキミンはサンパウロ州知事または上院議員に立候補させることを望んでいる。(6日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
3.世論調査
ダタフォーリャ社が7月29日から30日にかけて2004人を対象に実施した世論調査によると、連邦議会及び連邦最高裁判所(STF)に対する評価は以下の通り。
・連邦議会:「非常に良い/良い」18%(昨年3月比4ポイント減)、「普通」41%(12ポイント減)、「悪い/非常に悪い」35%(12ポイント増)。尚、「連邦議員は、国民より自分自身の利益のために働いている」と答えた割合は全体の78%に達したその逆は18%に過ぎなかった。
・連邦最高裁判所:「非常に良い/良い」29%(昨年3月比±0)、「普通」31%(9ポイント減)、「悪い/非常に悪い」36%(8ポイント増)。今回の調査は、モラエス判事がボルソナーロ前大統領に対して自宅軟禁を命じる前に実施された。(6日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
4.外交
(1)ファン・デア・ベレン・オーストリア大統領は6日、「予算上の都合」を理由に、伯のベレンで開催されるCOP30には参加しないと発表した。ベレンでは、COP30開催期間中の宿泊費が暴騰している。オーストリアは、Totschnig環境相を同国政府代表として派遣する予定。(7日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(2)駐中国伯大使館の駐在防衛武官の階級が将官クラスに格上げされることになった。駐米伯大使館以外では初めてのことである。新しく駐在防衛武官に任命された陸軍のロヴィアン・ジャンジャール将軍は、本年12月に赴任する予定。海軍の駐在防衛武官も本年12月から提督クラスに格上げされることになっている。空軍の駐在防衛武官だけは、大佐級のままである。(7日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
1.連邦議会
(1)7日、上院では、野党がモラエス・STF判事弾劾の発議に必要な上院議員の署名41筆(上院の過半数)を集めることに成功し、発議案を提出したが、アルコルンブレ上院議長は、「仮に80筆集まったとしても、受理しない。最高裁判事の弾劾手続の開始は、上院議長の専権事項である。ボルソナーロ派が上院本会議場の占拠を止めるまで、(モラエス判事の弾劾に限らず)野党議員の法案を議題に取り上げることはない」と突っぱねた。これにより、ボルソナーロ派による占拠は、開始から2日後に終了した。野党代表のロジェーリオ・マリーニョ上院議員(PL-RN)は、「我々は、審議の妨害を止め、伯国民の代表として、国益に関する議論に参加する」と述べた。ボルソナーロ派は、議会を占拠していた時は「上下両院議長が我々の要求を呑まなければ、マグニツキー法の制裁が科されるであろう」と息巻いていたが、一転して、低姿勢に徹するようになった。カヴァルカンテPL下院院内総務もモッタ下院議長に対して、議会を占拠し、同議長を強く非難したことを謝罪した。(8日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(2)7日、下院では、PT等の与党が、ボルソナーロ派による下院本会議場の占拠において特に問題行動が目立った議員5名(ヴァン・ハッテン(Novo-RS)、ジューリア・ザナッタ(PL-SC)、マルコス・ポロン(PL-MS)、パウロ・ビリンスキー(PL-SP)及びゼー・トロヴァォン(PL-SC))を6ヶ月間の議員資格停止処分とすることを申し入れた。モッタ下院議長は8日、ヴァン・ハッテン・Novo下院院内総務、カヴァルカンテ・PL下院院内総務等、14名の下院議員を懲罰委員会にかけることを決定。ファリアス・PT下院院内総務は、「ボルソナーロ派の議会占拠は、三権襲撃とクーデター未遂の延長線上にあり、連邦検察庁は、これが暴力による民主的法治国家転覆罪に該当する可能性について検討すべきである」と述べた。一方、エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員(PL-SP)は、ヴァルデマール・コスタ・ネット・PL党首が議会の占拠を積極的に支持しなかったことを不満とし、PLを離党すると述べており、PLは対応に追われている。(8日~11日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)7日、上院において、月収が最低賃金2倍以下の労働者及び年金受給者に対する所得税の免除に関する法案が可決され、大統領の裁可に付された。下院では、社会保障省及び国家社会保障院(INSS)職員に対する特別報奨金の支給に関する暫定措置令(MP)が可決され、上院に上程された。(8日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(4)現在、伯では「未成年者の画像や動画をSNSに投稿し、ユーザーを児童ポルノのサイトに誘導することで収益を得ているインフルエンサーが存在し、大勢のフォロワーを獲得している」との告発が大きな反響を巻き起こしており、モッタ下院議長は、「下院には、児童ポルノや児童の性的搾取禁止に関する法案が200以上も提出されており、その中で審議が進んでいる法案を優先的に議題に取り上げて、その早期成立を図ることにしている」と述べている。ダマレス・アルヴェス上院議員(PL-DF)やマリア・ド・ロザリオ下院議員(PT-RS)は、本件に関する議会調査委員会の設置を主張。コスタ文官長は12日、「ルーラ大統領は、近日中にビッグテック企業規制法案を議会に提出する。(児童ポルノ等)犯罪に該当する投稿に関しては、投稿者だけでなく、それを公開しているSNS企業も罰せられるべきである」と述べた。(11日付コレイオ・ブラジリエンセ及び12日付ヴァロール・エコノミコ電子版)
2.伯米関係・クーデター未遂
(1)在伯米国大使館は7日、「米国は、人権侵害により、マグニツキー法の制裁が科されたモラエス・STF判事を取り巻く状況を注視している。モラエス判事の味方に対し、同判事を支持したり、協力することのないよう、警告する」とXに投稿した。その前日には、メンデス・STF判事が「STFはモラエス判事を支持している」と表明したばかりであった。伯外務省は8日、エスコバル在伯米臨時代理大使を呼び出し、上記の投稿に関して遺憾の意を伝えた。同臨時代理大使が外務省に呼び出されたのはこの30日間で3度目である。尚、ランドー米国務副長官は9日、「モラエス判事は米伯関係を破壊した。三権分立は自由を保障するためにあり、何人であっても過大な権力を持つべきではない」とSNSに投稿した。これに対し、伯外務省は、「伯の主権と民主主義に対する新たな攻撃である。(伯が)圧力に屈することはない」と反発。ホフマン政治調整庁長官は、「傲慢な投稿であり、伯とSTFを侮辱している。権力を強奪しようとしたのはボルソナーロ(前大統領)である。また、米伯関係を破壊しようとしているのは、伯に重い関税をかけ、伯の司法機関に圧力をかけるよう、トランプ大統領をけしかけているボルソナーロ一家である」と批判した。(8日~10日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ、11日付ヴァロール・エコノミコ電子版)
(2)7日、イバネイス連邦直轄区(DF)知事(MDB)の呼びかけにより、右派及び中道派の州知事9名がブラジリアにおいて会合を開き、米国との関税交渉、緊急対応策等について連邦政府を批判し、立法・行政・司法の三権に対して関係改善を呼びかけると共に、上下両院議長に対し、米国との関税交渉に関して何らかの役割を果たすことを求めた。また、フレイタス・サンパウロ州知事は、この会合に出席した後、モラエス判事の許可を得て、自宅軟禁中のボルソナーロ前大統領と面会した。(8日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)アダッジ財務相は10日、「今月6日にベッセント米財務長官とオンライン会議を行い、米国の関税措置について話し合う予定であったが、エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員等の極右勢力がホワイトハウスに働きかけたことで、会談は中止となった。同長官との会談が実現する目途は立っていない」と述べた。また、アダッジは、フレイタス・サンパウロ州知事の批判(ルーラは一刻も早く、トランプ米大統領に電話をかけるべき)に対し、「外務省、開発産業・貿易・サービス省及び財務省の大臣3名が米国との交渉のテーブルに着けないでいるのに、ルーラがトランプに電話をかければ、全てが解決すると考えるのは単純すぎる」と反論した。尚、モッタ下院議長は、「エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員が伯の国益に反する行為を行っているのは容認できない。下院倫理委員会は、(エドゥアルドの議員資格剥奪について)公正な立場から判断すべきである」と述べた。(11日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(4)トランプ米大統領は11日、首都ワシントンの治安悪化を理由に緊急事態を宣言し、ワシントンの警察を連邦政府の指揮下に置き、州兵を首都の治安維持に投入することを発表した際、「ワシントンの犯罪発生率は、バグダッドやパナマシティーやブラジリアやボゴタ等、治安の悪いことで知られる都市のそれの2倍である。君達はこれらの都市に住みたいとは思わないだろう?」と記者団に対して述べた。この発言は、伯、特にブラジリアにおいて大きな反響を巻き起こした。連邦直轄区政府(GDF)の保安長官は、「昨年、連邦直轄区において発生した殺人事件は207件で、人口10万人当たりの数字は6.9件である。これは、1977年以降、最も低い数字であり、欧州諸国並みの水準である。確かに、トランプ大統領の言う通り、ブラジリアは、ワシントンより安全である」とコメントした。(11日付コレイオ・ブラジリエンセ)
3.ルーラ政権
(1)ルーラ大統領は7日、カサビ・PSD党首と昼食を共にした際、PSDやユニオン・ブラジル等、中道派の一部が米国の関税措置やボルソナーロ派の議会占拠を支持している件に関して「このような行動が国民の理解を得られることはない。実際、世論調査によると、トランプ関税の伯経済に対する悪影響の責任は野党にあると多くの国民が考えている」と苦言を呈した。PSDは、明年の大統領選では同党のラチーニョ・Jr・パラナ州知事またはレイテ・リオグランデ・ド・スル州知事を擁立する方向で検討しており、3つの閣僚ポスト(鉱山エネルギー、農務、漁業・養殖)を有しているにも拘らず、ルーラ政権からは距離を置きつつある。尚、ルーラは、先月末にユニオン・ブラジル所属の閣僚3名に対し、ルエダ党首等、ユニオン・ブラジルの幹部が政権批判を行っていることに対して不満を表明した。(8日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(2)ルーラ大統領は8日、7月に連邦議会で承認された「環境ライセンス法」の内、63の条文に対して拒否権を行使した上で、これを裁可した。拒否されたのは、環境に対する影響が中規模程度の事業の場合、自己申告制により、IBAMAの審査なしに環境ライセンスを取得できるという、「LAC制度」の導入や環境ライセンスに関する権限を連邦から州に移管することや大西洋森林の再生林の伐採は無許可で行えること等である。尚、ルーラは、「特別環境ライセンス制度(LAE。6か月間の審査期間を経ることなく、迅速に環境ライセンスを取得できることが可能)」の導入に関する暫定措置令に署名したが、これは、アマゾン川河口の海底油田開発を求めているアルコルンブレ上院議長に対する配慮と見られている。(9日付コレイオ・ブラジリエンセ)
4.外交
(1)ルーラ大統領は7日、モディ・インド首相と約1時間に亘って電話会談を行い、米国の関税措置(両国とも50%の関税が課されている)については共同歩調を取る必要があるとの点で一致した。また、両首脳は、通商(2030年までに二国間貿易を現在の120億米ドルから200億米ドルに拡大する)、防衛、エネルギー、希少鉱物、保健及びITの分野において二国間関係を強化することを主張し、両国のオンライン決済システム(伯のPixとインドのUpi)について意見交換を行った。ルーラは、モディ首相のブラジル国賓訪問(本年7月)の返礼として、明年初頭にインドを国賓訪問することを確認した。尚、アルキミン副大統領は、インドの市場を開拓するため、9月に同国を公式訪問する予定。(8日及び9月付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)9日、プーチン露大統領がルーラ大統領に電話をかけ、両首脳は約40分間に亘ってウクライナ紛争、トランプ関税、BRICS及び世界情勢について意見交換を行った。ウクライナ紛争に関しては、ルーラが対話による解決を主張し、「平和友好国グループ」を通じて協力する用意があるとの意向を伝えたのに対し、プーチンは、米国の特使と停戦について交渉しているところであると述べ、和平に対する伯の努力に対して謝意を表明した。(10日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)
(3)伯政府は、9日に発表した声明の中で、イスラエル政府がガザ地区の全面的な占領を決定したことを非難し、恒久的な停戦を主張すると共に、人質の解放とガザ地区の住民に対する人道支援を訴えた。(10日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
1.ルーラ政権
(1)政府は13日、トランプ関税に対する緊急対応策「主権あるブラジル計画(Plano Brasil Soberano)」に関する暫定措置令(MP)を発令した。これは、トランプ関税の影響を被っている輸出業者に対し、300億レアル相当の融資枠を設けると共に、納税期限の延長(2ヶ月)、連邦及び地方政府による食料品の購入等の支援策を実施するというものである。ルーラ大統領は、「我々は、(米国との)交渉を求めているが、我が国の主権が侵害されることはない。また、相互主義的な措置は導入しない。二国間関係の悪化を正当化するようなことはしたくない」と述べた。アダッジ財務相は、「伯は、その襲撃者(米国)より民主的であるが故に制裁を受けている。伯のように、政敵やメディアや大学や移民を迫害しない国が不当な制裁を受けるのは、画期的な出来事である」と批判した。(14日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)13日、サンパウロ市内で開催されたBTG Pactual投資銀行のイベントには、右派の大統領候補と目されているサンパウロ、パラナ、ゴイアス及びリオグランデ・ド・スル州の州知事が参加し、ルーラ政権を批判した。特にフレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)は、「伯はこれ以上、放漫財政、増税、汚職、PT、ルーラに我慢できない」と述べ、4人の中では最も激しくルーラ政権を批判した。(14日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
2.伯米関係
(1)米国務省が12日に発表した人権報告書には、「伯の人権を取り巻く状況は、ボルソナーロ前大統領の訴追、並びにモラエス・STF判事のXに対するサービス停止命令等、STFがSNSを規制していることにより、著しく悪化した。また、三権襲撃犯が不当に逮捕され、その未決拘留は長期間に亘っている。ルーラ大統領がイスラエルのガザ地区における軍事作戦をホロコーストと批判したのは反ユダヤ主義の表れである」と書かれている。エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員は、「世界では、伯の人権侵害国としてのイメージが益々強まっている」と述べ、報告書の内容を評価した。一方、ファリアス・PT下院院内総務は、「今回の報告書の内容は偽りである。トランプ政権に人権について語る資格はない」と批判した。ルーラ大統領は13日、「彼ら(米国)は、我々が(ボルソナーロ)元大統領を迫害しているとの理由により、伯では人権が尊重されていないとの報告書を発表したが、我々は、我国を告発している国が如何なる国なのかを見極める必要がある。伯は、多くの点に関して米国より民主的である。米国議会の襲撃が伯で起きていたならば、トランプは、伯において裁かれていたであろう。米国は、1964年の(伯の)クーデターにも関与していたが、我々は米国を許した」と述べた。(13日及び14日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)
(2)ルビオ米国務長官は13日、「伯政府が実施している医師派遣政策『より多くの医師プログラム(Mais Médicos)』は、キューバ人医師を参加させることで、腐敗したキューバ政府に資金を提供し、キューバ人医師を強制労働に駆り出すだけでなく、キューバ国民が医療サービスを受けられないようにしている。これに加担した伯保健省の職員とパンアメリカン保健機構(PAHO)の元職員に対し、米国への入国査証取り消しと査証制限措置を科す」と発表した。エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員は、「同長官に感謝する。官僚も米国の制裁から逃れることはできない」と表明。パジーリャ保健相は、「伯は、ワクチンや科学を否定する人達には屈しない。Mais MédicosやPixは、不当な攻撃を受けても生き延びるであろう」と反発。尚、Mais Médicosが開始された2013年(ルセーフ政権)には、大勢のキューバ人医師が参加していたが、2018年に当時のボルソナーロ大統領候補の発言が引き金となって、キューバ人医師は本国に引き揚げた。(14日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)ルーラ大統領は13日、中国、インド及びロシアの首脳との電話会談に続いて、南アフリカ、フランス及びドイツの首脳とも電話会談を行うと表明した。また、ルーラは、トランプ関税に対して共同歩調を取り、代替市場を開拓するため、BRICS諸国とオンライン会議を開くことを検討していると述べた。「BRICSとの関係強化は、伯のためにならない」との批判に対しては「伯とBRICS諸国の貿易は、既に1600億米ドルに達している。我々は(BRICS諸国に)より多くの物を売り、より多くの物を買いたい。それによって、この国は変わるであろう」と反論した。(14日付コレイオ・ブラジリエンセ)
3.クーデター未遂
(1)モラエス・STF判事は12日、ボルソナーロ前大統領に対し、今月16日にブラジリア市内の病院において診察と検査を受けることを許可した。ボルソナーロは、逆流症食道炎としゃっくりに悩まされている。(13日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)ボルソナーロ前大統領の弁護団は13日、最終弁論を提出した。弁護団は、その中で、「ボルソナーロがクーデターを画策し、実行に移そうとしていたとする連邦検察庁の主張は馬鹿げている。ボルソナーロがクーデターを起こそうと考えていたことはなく、逆に政権移行の手続を進めることを命じていた。検察側の主張は、マウロ・シディ元大統領付副官の供述だけを根拠としており、具体的な証拠に欠けている。ボルソナーロが軍の上層部とクーデターについて話し合ったとの事実はない。仮にボルソナーロが(戒厳令等)合法的な手段について検討していたとしても、それは犯罪ではない」と主張している。同じく13日に最終弁論を提出したブラガ・ネット文官長は、「検察の起訴状は、証拠を伴わないファンタジーに過ぎない。モラエス判事は当事者であり、公平さに欠ける」と主張。他の被告も全員、クーデター計画の存在を否定するか、またはクーデター未遂への関与を否定した。最終弁論の提出後は、STF第1小法廷の裁判長を務めるザニン判事が裁判日程を決めることになる。(14日付フォーリャ・デ・サンパウロ及びヴァロール・エコノミコ電子版)
4.連邦議会
(1)政府は、インターネット上の児童ポルノ及び未成年者の性的搾取が世間及び議会の注目を集めていることを利用し、右に関する法案を近日中に提出することで、三権襲撃犯の恩赦法案の早期成立、並びにモラエス・STF判事の弾劾を目指しているボルソナーロ派の動きを封じ込めると共に、これをSNS企業の規制につなげようとしている。尚、野党は、児童ポルノ及び未成年者の性的搾取撲滅を理由にSNSを規制することには反対しており、SNS企業は一切規制することなく、未成年者の性的搾取の厳罰化だけで対応しようとしている。(13日及び14日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)下院では、所得税の非課税枠を月5千レアル(現在は3036レアル)に引き上げるとの政府案が近い内に本会議にかけられることになっている。これによる減収を補填するための財源に関しては、政府が超富裕層と配当金に対する増税を提案しているのに対し、これに反対している経済界は、オンラインカジノの課税(15%)を主張している。政府案の報告官を務めるアルトゥール・リラ下院議員(PP-AL。前下院議長)は13日、起業議連との会合において、オンラインカジノの課税について前向きに検討すると述べた。尚、アダッジ財務相によると、この法案が成立すれば、約2千万人が所得税を免除され、約5百万人が所得税減税の対象となる。(13日付コレイオ・ブラジリエンセ)
5.司法
(1)13日、次期STF長官にファキン・STF副長官、副長官にはモラエス判事が選出された。就任式は9月29日に執り行われる予定。ファキン判事のSTF長官就任に伴い、STF第2小法廷の判事の入れ替え(ファキンの代わりにバホーゾ現長官が第2小法廷の判事になる)が行われるが、モラエス判事は、副長官になった後もクーデター未遂の裁判が行われる第1小法廷の判事であり続ける。(14日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)13日、上院において、マリア・マルルーセ・カルダス検察官とカルロス・ブランダァオン判事の司法高等裁判所(STJ)判事への指名が承認された。また、ヴェロニカ・ステルマン弁護士の軍事高等裁判所判事指名も承認された。カルダスは、カルダス・マセイオ(アラゴアス州都)市長(PL)の叔母であり、ルーラ大統領がカルダスを指名したのは、カルダス市長をPLからPSBに移籍させ、左派陣営に引き入れるためと見られている。リラ前下院議長(PP-AL)やカリェイロス上院議員(MDB-AL)もカルダス検察官の起用を支持している。(13日付ヴァロール・エコノミコ電子版)
6.外交
(1)ルーラ大統領は12日、中国の習近平国家主席と電話会談を行った。両首脳は、多国間主義とBRICSの重要性について確認した他、伯産鶏肉の対中輸出再開(鳥インフルエンザにより、本年5月17日から停止している)について話し合った。中国メディアの報道によると、習近平主席は、「中国は、グローバルサウスの団結と自給自足に向けて伯と取組を行う用意がある。また、中国は、伯の国家主権防衛について伯を支持しており、全ての国に対して単独主義と保護主義に立ち向かうよう呼び掛けることで、伯がその正当な権利を守ることを支持している」と述べた。伯側の発表によると、両首脳は、BRICSとビジネスチャンスについて意見交換を行った。(13日付フォーリャ・デ・サンパウロ及びコレイオ・ブラジリエンセ)
(2)ルーラ大統領は13日、「トランプ米大統領に対してCOP30の招待状を送付した。COP30は、各国首脳が科学者達の言うことを信じているのか否かに拘わらず、彼らに対して気候変動の深刻さに関して問題提起する機会となる」と表明した。尚、開催地のベレンでは、全国の知事が会合し、COP30に向けて各州が共同歩調を取ることについて協議を行った。(14日付コレイオ・ブラジリエンセ)
1.伯米関係
(1)トランプ米大統領は14日、ホワイトハウスで記者会見を行った際、「こと関税に関しては、伯はひどい貿易相手国である。我々は、彼らの輸出品には殆ど関税をかけていなかったのに、彼らは(米国の輸出品に対して)法外な関税をかけていた。伯は、長年に亘って我国をひどく扱ってきた最悪な国の一つである。今、伯は、50%の関税をかけられてハッピーではないが、物事とはそういうものである」と述べた。トランプは、「伯や他のラ米諸国が中国に接近することについて懸念していないのか」との質問には「懸念などしていない」と答えた。また、トランプは、「伯のボルソナーロ前大統領に対する扱いは全くひどいものである。彼らは、ボルソナーロを政治的に処刑しようとしている。私はボルソナーロのことを知っているが、彼は誠実な人物である。私には人を見る目がある」と述べた。これに対し、ルーラ大統領は14日、「伯が米国にとってひどい貿易相手国というのは嘘である。伯は良い貿易相手国である。伯が米国に対して跪くことはない」と反発した。また、ルーラは15日、中国の自動車メーカー(GWM)の工場の完成式に出席した際、「トランプ大統領が伯に関して嘘を並べ立てているのは受け入れ難い。過去15年間に亘って、米国は、伯との貿易により、4100億米ドルもの黒字を得ている。米フォードは、4年前に伯から撤退したが、中国のGWMは、伯に進出した。同社がここを拠点として、中南米に自動車を輸出することを期待する」と述べた。両首脳による非難の応酬により、米伯関係を巡る緊張は更にエスカレートしている。尚、エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員は、トランプの発言を称賛し、「ボルソナーロ前大統領が有罪になったらどうなると思う? トランプ大統領がどう反応するか見物である。米国は、伯に新たな制裁を科し、関税を更に引き上げるであろう」とコメントした。(15日付コレイオ・ブラジリエンセ、フォーリャ・デ・サンパウロ及びヴァロール・エコノミコ電子版)
(2)在伯米国大使館は14日、「伯の医師派遣プログラム『より多くの医師(Mais Médicos)』は、キューバ人医師を搾取するための外交上の詐欺行為である。米国は、同プログラムに加担した関係者に対して責任を取らせるであろう」と批判した。これに対し、パジーリャ保健相は、「我々は、如何なる攻撃に遭っても、PixやMais Médicosを手放すことはない。ワクチンの開発者を迫害したり、Mais Médicosのように国際的に評価されている取組を攻撃しているトランプ米大統領は、公衆衛生の敵である」と批判した。在サンパウロ米国総領事館は15日、パジーリャ保健相の家族(妻及び10歳の娘)に対し、米国の入国査証を取り消したと通告した。パジーリャ本人の査証は昨年に失効していたので、対象外となった。これに対し、パジーリャは「卑劣な行為である。ボルソナーロ一家の差し金に違いない」と反発した。(15日付フォーリャ・デ・サンパウロ及び16日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員は15日、ベッセント米財務長官と一緒に撮影した写真をXに投稿し、同長官にアダッジ財務相とのオンライン会議を中止させ、その会議が行われるはずであった今月13日に同長官と面会していたことを明らかにした。尚、モッタ下院議長は15日、エドゥアルドの議員資格剥奪に関する動議(計4件)を下院倫理委員会に送った。(16日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(4)伯政府は、米国が伯に50%の関税をかけ、一連の制裁を行っているのは、単にボルソナーロ前大統領を支援するためではなく、明年の伯大統領選でトランプ米大統領と思想的に近い右派の候補を勝たせ、政権交代を促すことが目的であると見ている。仮にルーラが再選を果たした場合、米政府は、選挙の結果を承認しない等の対抗措置に出る可能性がある。実際、エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員は、「ボルソナーロ前大統領が次期大統領選に出馬できなければ、米政府は、選挙の結果を承認しないであろう」と警告している。(16日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(5)ダタフォーリャ社の世論調査によると、「米国が伯に50%の関税をかけたのは誰のせいか」との問いに対し、回答者の35%がルーラ大統領と答えた。その他の答えは、ボルソナーロ前大統領22%、エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員17%、モラエス・STF判事15%の順。これは、ボルソナーロ支持者の58%が「ルーラのせいである」と答えたことが影響している。(17日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(6)ルーラ大統領は16日夜、大統領公邸の庭にブドウの木を植えている動画をSNSに投稿した際、「トランプがここ(大統領公邸)に来ることがあったら、真の伯を知ってもらうために話し合いたい。これはその一例である。自分は、食べ物を植えているのであり、ヘイトや暴力の種を蒔いているのではない」と述べた。ルーラは、代替市場獲得のため、南ア等、BRICS諸国の首脳と電話会談を行う他、ライエン欧州委員会委員長、スターマー英首相等とも電話会談を行うことにしている。アルキミン副大統領は、今月中にメキシコを訪問する予定。(18日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(7)伯外務省は18日、米通商代表部が通商法第301条に基づき、伯の不公正な貿易慣行に関して調査を開始した件に関し、「伯の貿易慣行は、公正且つ透明で、(米国企業を)差別するものではなく、国際的なグッドプラクティスとWTOの義務に完全に対応している」との反論書を送付した。米国は、伯のオンライン決済システム「Pix」が米国企業に害を与えていると主張しているほか、伯の森林伐採対策、汚職対策、知的財産権保護を問題視している。(19日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(8)モラエス・STF判事は、米ワシントン・ポスト紙のインタビューに応じた際、「(ボルソナーロ前大統領の裁判に関しては)1ミリたりとも退くことはない。我々は、証拠について吟味し、有罪にすべき者は有罪にし、無罪にすべき者は無罪にするという、当たり前のことをするだけである」と述べた。また、同判事は、「(米伯)関係を害しているのは、(エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員のような)人達がSNS上で偽情報を拡散しているからである」、「米国のようにクーデターが起きたことのない国にとっては、伯の民主主義が脆弱であるということが理解し難いかもしれないが、実際、伯は何年にも亘って独裁を経験している。病原菌に攻撃されれば、されるほど、ワクチンによる予防が必要とされるのである」と述べた。これに対し、在伯米国大使館は、「モラエスは、米国とその市場にアクセスしようとしている全ての企業及び個人にとって有害である。米国の主権が及ばない企業や個人であっても、モラエスを支援する者は制裁の対象になり得る」とSNSに投稿した。(19日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(9)ディーノ・STF判事は18日、外国の司法機関の決定は伯国内においても有効か否かとの確認訴訟に関し、「伯の公的機関及び私企業に対する外国の決定は、連邦最高裁判所(STF)が許可する場合においてのみ伯国内で効力を発揮する。(外国の機関が決定した)資産凍結、契約の破棄、サービスの停止等の措置が伯において自動的に適用されることはない。それにはSTFの許可が必要である」と決定した。これは、モラエス・STF判事に対する米国の制裁とは直接関係はないものの、マグニツキー法は伯の金融機関等に対して自動的に適用されるものではないとの解釈が成り立つため、今後の展開が注目されている。(19日付コレイオ・ブラジリエンセ)
2.クーデター未遂
(1)STF第1小法廷の裁判長を務めるザニン判事は15日、クーデター未遂の裁判に関し、ボルソナーロ前大統領等、第1グループの被告8名(ブラガ・ネット元文官長、エレーノ元大統領府安全保障局長官、トーヘス元法務治安相等)の裁判を9月2日から開始し、9月第1週(2日、3日)と第2週(9日、10日、12日)の2週間をかけて審理を行うことを決定した。(15日付ヴァロール・エコノミコ電子版)
(2)ダタフォーリャ社の世論調査(8月11日から12日かけて2002人を対象に実施)によると、ボルソナーロ前大統領の自宅軟禁に「賛成」と答えたのが51%であったのに対し、「反対」は42%であった(「どちらでもない」3%、「分からない」4%)。「自宅軟禁を決定したモラエス判事は、法律に従っているか」との問いに対する答えは、「従っている」53%、「従っていない。ボルソナーロは、政治的な理由により不当な扱いを受けている」42%、「分からない」7%。「ボルソナーロは、他の政治家に比べて司法から厳しく扱われているか」:「他の政治家よりひどい扱いを受けている」43%、「同じ扱いを受けている」37%、「他の政治家より良い扱いを受けている」13%、「分からない」7%。(15日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(3)ボルソナーロ前大統領は16日、自宅軟禁を命じられてから初めて外出を許され、ブラジリア市内の病院で診察及び検査を受けた。その結果、食道炎及び胃炎と診断された他、肺炎が完治していないことが判明し、自宅で投薬による治療を受けることになった。尚、病院前にはブラジルと米国の国旗を持った支持者が大勢詰めかけ、ボルソナーロのために祈りを捧げたり、歌ったりした。(17日付コレイオ・ブラジリエンセ)
3.連邦議会
(1)モッタ下院議長は14日、インターネット上の未成年者の性的搾取を禁止するための法案の採決を近日中に行うと述べた。下院では、本件に関する法案が80以上も提出されているが、アレサンドロ・ヴィエイラ上院議員(MDB-SE)の提出した法案が既に上院を通過し、下院通信委員会での審議が進んでいることから、この法案を叩き台として早期成立を図ることが検討されている。尚、ルーラ大統領は14日、本件に関する政府案を近日中に議会に提出すると発表した。政府案は、児童ポルノ、ヘイトスピーチ及びフェイクニュースを「犯罪的コンテンツ」と位置付け、これらをインターネット上で公開したプラットフォーム企業の責任も追及するというものである。野党は、児童ポルノの撲滅には反対していないものの、SNS企業の規制には猛反対しており、拙速な審議によりSNSの規制が法案に盛り込まれることのないよう、慎重に審議すべきと主張している。(15日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)フォーリャ・デ・サンパウロ紙の調査によると、モッタ下院議長の所有する農場の使用人が議員秘書として議会から給与を受け取っており(議員秘書としての勤務実態はなし)、同議長の議員事務所の責任者が委任状により、その給与を代わりに受け取っていたことが判明した。(17日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(3)明日(20日)、年金受給者から組合や関連団体の会費が詐取されていた問題に関して議会合同調査委員会(CPMI)が設置される予定。委員長にはオマール・アジス上院議員(PSD-AM)、並びに報告官にはリカルド・アイレス下院議員(Republicanos-TO)が選出される予定。ボルソナーロ派が、コロネル・クリゾーストモ下院議員(PL-RO)、コロネル・フェルナンダ下院議員(PL-MT)、ヴァン・ハッテン下院議員(Novo-RS)等をCPMIに送り込み、問題の責任をルーラ大統領に擦り付けようとしているのに対し、政府与党は、エドゥアルド・ブラガ上院議員(MDB-AM)やレナン・カリェイロス上院議員(MDB-AL)等のベテラン議員を中心とした布陣を敷き、不正はボルソナーロ政権から始まったとして、ボルソナーロの責任にしようとしている。(19日付コレイオ・ブラジリエンセ)
4.次期大統領選
(1)ゼマ・ミナスジェライス州知事(Novo)は16日、サンパウロ市内において、次期大統領選出馬を表明したが、ボルソナーロ前大統領からの要請があれば、いつでも出馬を見直す可能性があると述べた。同知事は、「自分の見立てでは、大統領選の第1回投票では、右派の候補が乱立するが、決選投票では、右派はまとまるであろう」と述べた。(17日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(2)ボルソナーロ前大統領の次男カルロスと三男エドゥアルドは、「(父ボルソナーロを差し置いて次期大統領選出馬を狙っている)右派の州知事達は、ネズミであり、日和見主義者である」と罵倒した。これに対し、カイアド・ゴイアス州知事(ユニオン・ブラジル)、ゼマ・ミナスジェライス州知事(Novo)及びフレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)は18日、「父親が自宅軟禁を命じられて気が立っているのであろう」、「そんなことを気にしている暇はない」等とコメントした。尚、フレイタス知事は、「自分はサンパウロ州知事として再選することを望んでいる」と述べた。(19日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)
5.外交
(1)伯政府は、COP30の開催地ベレンにおけるホテル不足に対処するため、クルーズ船2隻を借り上げて、水上ホテルとして利用することを決定した。最大6千人収容可能とされている。クルーズ船は、会場から25km離れたカラタテウア島に停泊するため、参加者はボートを使って上陸した後、バスで会場まで移動する。主催者側は、30分で移動可能としているが、専門家は、ボートで上陸するだけで30~40分はかかると見ている。(18日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)18日、訪伯したノボア・エクアドル大統領と首脳会談を行ったルーラ大統領は、警察アタッシェの派遣再開等、治安対策に関する協力を申し出た。その際、ルーラは、SNSの規制について発言した。ノボア大統領は、伯側の申し出に謝意を表明したが、SNSの規制についてはコメントしなかった。(19日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)プーチン露大統領は18日、ルーラ大統領に電話をかけ、15日の米露首脳会談に関する情報を共有し、「会談はポジティブであった」と伝えた。ルーラは、謝意を表明し、「伯は、ウクライナ紛争の平和的解決に向けた努力を支持する」と述べた。両首脳は、米露首脳会談の直前にも電話会談を行っている。プーチンは、モディ・インド首相にも電話をかけ、米露首脳会談の結果について報告している。(19日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
1.ルーラ政権
(1)Genial/Quaest社が今月13日から17日にかけて2004人を対象に実施した世論調査によると、政府支持率は、前回7月の43%から46%に上昇し、不支持率は、53%から51%に低下した。支持率の回復は、トランプ関税とインフレの低下にあると見られている。ルーラ政権に対する評価は、「ネガティブ」39%(1ポイント減)、「ポジティブ」31%(3ポイント増)、「普通」27%(1ポイント減)。ボルソナーロ前政権との比較では、「ルーラ政権の方が良い」43%(3ポイント増)、「ボルソナーロ政権の方が良かった」38%(6ポイント減)、「どちらも同じ」16%(3ポイント増)。トランプ関税に対する対応に関しては、「政府の対応は正しい」が48%であるのに対して、「ボルソナーロ派の主張が正しい」は28%、「どちらでもない」は15%であった。(20日付ヴァロール・エコノミコ電子版)
(2)Genial/Quaest社の大統領選に関する世論調査の結果は以下の通り。何れの場合もルーラ大統領が支持率を伸ばし、他候補との差を広げている。
・第1回投票:ルーラ(PT)34%、ボルソナーロ前大統領(PL)28%、シロ・ゴメス元国家統合相(PDT)8%、ラチーニョ・Jr・パラナ州知事(PSD)7%。ボルソナーロの代わりにフレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)がボルソナーロ派の候補として出馬する場合は、ルーラ35%、フレイタス17%。ミシェーレ前大統領夫人の場合は、ルーラ34%、ミシェーレ21%。
・決選投票:ルーラ47%(先月比4ポイント増)対ボルソナーロ35%(2ポイント減)、ルーラ43%(2ポイント増)対フレイタス35%(2ポイント減)、ルーラ47%(4ポイント増)対ミシェーレ34%(2ポイント減)、ルーラ44%(3ポイント増)対ラチーニョ・Jr34%(2ポイント減)、ルーラ46%(5ポイント増)対レイテ・リオグランデ・ド・スル州知事(PSD)30%(6ポイント減)、ルーラ46%(4ポイント増)対ゼマ・ミナスジェライス州知事(Novo)32%(1ポイント減)、ルーラ47%(5ポイント増)対カイアド・ゴイアス州知事(ユニオン)31%(2ポイント減)。
・拒否率:ボルソナーロ前大統領(PL)57%、エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員(PL)57%、ルーラ(PT)51%、ミシェーレ夫人(PL)51%、シロ・ゴメス50%、フレイタス39%、レイテ33%、ラチーニョ・Jr33%、ゼマ33%、カイアド33%。(21日付ヴァロール・エコノミコ電子版)
2.伯米関係
(1)18日、フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)が「伯は、トランプ米大統領に幾つかの『勝ち』を譲ることで、関税を引き下げてもらうべき」と発言したのに対し、ホフマン大統領府政治調整庁長官(PT)は19日、「国家主権というものは、誰かにプレゼントするものではない。フレイタス知事は、ビリオネアや銀行家とばかり会っていて、国益や国民からは遠ざかっている」と批判した。(20日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)19日の株式市場では、ディーノ・STF判事が「外国政府の決定や法律が伯国内で効力を持つためには連邦最高裁判所(STF)の許可が必要」と決定したことにより、米国が伯の金融機関に対して何らかの制裁を科すのではないかとの憶測が広まり、イタウー、サンタンデール、ブラジル銀行、ブラデスコ、BTG Pactual等、主要金融機関の株が暴落した。これら金融機関の評価額は、全体で420億レアルも失われた。モラエス・STF判事は20日、「米国の命令により、伯国内の資産凍結に応じる伯の金融機関は、罰せられる可能性がある」と述べた。尚、モラエス判事は、マグニツキー法の制裁により、米国系のクレジットカードが使用できなくなっているが、伯の金融機関は、代わりにブラジル系のクレジットカード(Elo)の利用を勧めている。(20日及び21日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)
3.クーデター未遂
(1)連邦警察は20日、ボルソナーロ前大統領から押収した携帯電話を解析した結果、ボルソナーロ及び三男エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員を司法妨害と強要罪の容疑で立件した。連邦警察によると、ボルソナーロは、モラエス判事の命令に逆らって、複数の動画をSNSに投稿したり、ブラガ・ネット元文官長等と接触する等、命令違反を繰り返していた。また、ボルソナーロとエドゥアルドは、Rumble及びTrump Mediaの弁護士と結託して、伯の連邦最高裁判所(STF)、特にモラエス判事を繰り返し攻撃していた。更に、連邦警察は、ボルソナーロがエドゥアルド等とSNS上でやり取りしたメッセージの一部を公開した。それによると、父ボルソナーロから「未熟者」と批判されたエドゥアルドが極めて汚い言葉遣いで父親を罵倒したり、フレイタス・サンパウロ州知事のことを口汚く非難する等、ボルソナーロ派が水面下で諍いを繰り広げていたことが明らかになった。尚、連邦警察が公開したデータによると、ボルソナーロがアルゼンチンに政治亡命を求めるため、ミレイ大統領宛の書簡を書いていたことが判明。モラエス判事は20日、ボルソナーロに対し、SNS使用禁止等の命令違反及びアルゼンチンへの逃亡について48時間以内に説明するよう、命じた。(21日付フォーリャ・デ・サンパウロ、コレイオ・ブラジリエンセ及びヴァロール・エコノミコ電子版)
(2)連邦警察は、ボルソナーロ前大統領と緊密な関係にある福音派のマラファイア牧師がボルソナーロに司法妨害を唆し、SNSの使用を促していたとして、捜査を行っている。20日、リスボンから帰国したところを連邦警察に連行され、携帯電話を押収されたマラファイア牧師は、「犯罪者のモラエス判事は、意見表明罪をでっち上げた。自分は宗教的リーダーである。独裁者は怖くない」と記者団に対して述べた。(21日付コレイオ・ブラジリエンセ)
4.連邦議会
(1)20日、下院において、SNS上の未成年者の性的搾取禁止法案が可決された。野党は、「同法案の内容は検閲である」として反対していたが、野党議員の修正案が採択されたことにより、一部の野党議員は賛成に回った。例えば、未成年者のインターネット上における権利を保護するための行政機関の創設に関しては、原案では、連邦政府の裁量で創設されることになっていたが、野党の提案により、議会で設置法を制定することになった。同法案は、下院で修正されたため、再び上院に戻される。(21日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)ユニオン・ブラジルと進歩党(PP)は19日、政党連合「進歩連合(União Progressista)」を結成した。これにより、「進歩連合」は、下院第1党(109議席)となり、上院でも15議席を有する一大勢力となった。また、州知事7名及び市長1383名を擁し、地方でも他を圧倒する勢力を誇っている。「進歩連合」は、自らを野党と位置付け、明年の大統領選では独自候補を擁立し、ルーラ大統領の再選は支持しないとしているが、連立与党からの離脱については、ノゲイラ・PP党首が「一刻も早く離脱すべき」としているのに対し、アルコルンブレ上院議長(ユニオン)は離脱に消極的である等、意見がまとまっていない。(20日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)19日、下院において、議会の施設内で暴力を振るったり、議場の占拠等、実力行使による審議妨害を行った議員の議員資格を最高6ヶ月間停止するとの決議案の緊急審議動議が賛成266、反対114により可決された。これを提案したのはモッタ下院議長であり、先日のボルソナーロ派による議会の占拠に対する対抗措置と受け止められている。(20日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(4)20日、年金受給者から組合や関連団体の会費が詐取されていた問題に関する議会合同調査委員会(CPMI)が設置されたが、委員長には当初、確実視されていた政府寄りのオマール・アジス上院議員(PSD-AM)ではなく、反政府派のカルロス・ヴィアナ上院議員(Podemos-MG)が選出された。更に、ヴィアナ委員長は、ボルソナーロ派のアルフレッド・ガスパル下院議員(ユニオンーAL)を報告官に指名した。これにより、政府与党は予期せぬ敗北を被った。(21日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(5)20日、上院司法憲法委員会(CCJ)において、選挙法改正法案が可決された。主な改正点は、投票内容印刷方式(voto impresso)の導入(エスピリジアン・アミン上院議員(PP-SC)提案)である。これは、電子投票の結果を紙に印刷し、電子投票の開票結果が紙の開票結果と一致した場合にのみ、選挙の結果が承認されるというものであり、その導入は、以前からボルソナーロ派が主張していた。尚、この選挙法改正法案が明年の選挙から施行されるためには、9月中に上院本会議で可決される必要がある。(21日付コレイオ・ブラジリエンセ)
5.外交
(1)ルーラ大統領は20日、マクロン仏大統領に電話をかけ、トランプ関税を批判すると共に、伯政府の対応(WTOに対する協議要請、米通商代表部の調査に対する回答等)について説明を行った。また、両首脳は、EU・メルコスール・FTAについて意見交換を行い、本年末までに交渉を終結させることで一致した。更に、ルーラは、フランス等、欧州諸国の首脳がCOP30に出席することの重要性について強調した。(21日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)伯とコロンビアは、米国海軍の駆逐艦3隻がベネズエラ沿岸に派遣された件に関し、米国がベネズエラに軍事介入する可能性を危惧している。アモリン大統領補佐官は、「非常に憂慮すべき事態である。伯外交は不介入を基本原則の一つとしている」と述べた。ペトロ・コロンビア大統領は、軍事介入の場合、コロンビアが巻き添えになることを恐れている。(21日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)フォーリャ・デ・サンパウロ紙の取材によると、中国がCOP30に派遣する政府代表団の規模は約100人程度になる見込みで、これは、COP29の190人、COP28の219人に比べて格段に少ない。開催地ベレンにおける宿泊費の高騰が原因と見られている。尚、企業関係者等を含めれば、中国からの参加者は1千人程度になる見込み。(21日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
1.クーデター未遂
(1)連邦警察が金融活動監視委員会(Coaf)から得た情報によると、2023年3月から本年6月にかけて、ボルソナーロ前大統領の銀行口座に合計4430万レアルがPix(オンライン決済システム)により振り込まれていたことが判明。PLが振り込んだ約30万レアルの他、支持者のカンパが大半と見られているが、警察は、資金洗浄等の不正が行われていた可能性もあると見て、捜査を進めている。また、ボルソナーロが弁護士の支払いに680万レアルを使っていた他、本年5月に200万レアルをエドゥアルド・ボルソナーロ下院議員に送金し、6月4日に200万レアルをミシェーレ夫人の口座に振り込み、166万レアルを米ドルに換金していたことが判明。(21日付フォーリャ・デ・サンパウロ、コレイオ・ブラジリエンセ及びヴァロール・エコノミコ電子版)
(2)ボルソナーロ前大統領とエドゥアルド・ボルソナーロ下院議員の司法妨害及び強要罪に関する連邦警察の捜査報告書によると、両者は、「デジタル民兵組織(milícia digital)」の手法を用いてルーラ政権と司法機関を攻撃するためのフェイクニュースを拡散していた。また、福音派のマラファイア牧師がトランプ関税を引き下げさせることの条件としてボルソナーロの恩赦を要求するよう、指南する等、ボルソナーロ親子に対して並々ならぬ影響力を持っていることが判明。尚、ボルソナーロの弁護団は21日、「ボルソナーロがSNS使用禁止等の制限措置に違反したり、国外逃亡を企てていたとの事実はない」と反論した。(22日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)連邦警察がボルソナーロ前大統領の携帯電話のデータを一部公開したことにより、エドゥアルドが父ボルソナーロやフレイタス・サンパウロ州知事を罵倒したり、マラファイア師が「エドゥアルドは馬鹿者である。次に何かやらかしたら叩きのめしてやる」と批判する等、水面下では罵り合いを繰り広げていたことが明らかになったが、エドゥアルドが「自分はマラファイアと共にある」とSNSに投稿し、フレイタスが「親子の私的な会話であり、公開すべきものではない。自分とボルソナーロの関係は、常に忠誠、友情、そして感謝の念に基づいている」と述べる等、ボルソナーロ派は火消しに躍起となっている。(22日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(4)連邦警察が連邦最高裁判所(STF)に提出した捜査報告書によると、ボルソナーロ前大統領とエドゥアルド・ボルソナーロ下院議員は、RumbleとTrump Mediaの代表であり、トランプ米大統領と緊密な関係にあるマーティン・デ・ルカ弁護士を通じて、伯に50%の関税をかけさせ、モラエス・STF判事にマグニツキー法を適用させていたことになっている。専門家によると、これが事実であるとすれば、ボルソナーロ親子は国事犯と国際組織犯罪の罪に問われる可能性がある。(22日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(5)22日、リオデジャネイロ市内で開かれた企業団体のイベントには連邦最高裁判所(STF)のメンドンサ判事とモラエス判事が参加した。ボルソナーロ派のメンドンサ判事が「伯の司法機関は、伯は司法の支配する国であるとの印象を与えないためにも、自制すべきである。法治国家とは、法律を解釈する者の意思が優先される国ではない。司法は、法律を作ったり、イノベーションをするべきではない。裁判官は、恐怖ではなく、人々にリスペクトされることによって評価されるべきである」と述べ、暗にモラエス判事を批判した。これに対し、モラエス判事は、「過去の独裁政権では、司法は制限されなければならないとの誤ったスローガンにより、多くの裁判官が追放され、報道の自由も奪われた。裁判官は、独立した立場を守ってこそ、リスペクトされる。司法が卑屈になって圧力に屈し、一時的に混乱を収めるために取引に応じたとしても、それは独立した司法とは言えない」とメンドンサを名指しすることなく反論した。メンドンサ判事は、クーデター未遂の裁判には参加しないものの、重要な裁判を控えて、STF判事同士が非難の応酬を繰り広げるのは異例のことであり、STFの内外に波紋を投げかけている。メンデス・STF判事は25日、メンドンサ判事が所謂「STFの積極主義」を批判した件に関し、「STFには、行政府や立法府の不作為に対処する義務がある。例えば、新型コロナウイルスのパンデミックの際、当時の行政府が否定論者であったため、WHOの推奨する感染対策やワクチンを伯に導入するためにはSTFが決定しなければならなかった」と述べ、メンドンサ判事を批判した。(23日付フォーリャ・デ・サンパウロ、25日及び26日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(6)22日、連邦最高裁判所(STF)大法廷では、ボルソナーロ派のカルラ・ザンベーリ下院議員(PL-SP)の銃不法所持及び脅迫罪に関する審理が再開された結果、9対2により、禁固5年3ヶ月及び議員資格剥奪の有罪が言い渡された。ザンベーリは、2022年大統領決選投票の直前に銃を構えたまま、ルーラの支持者を追い回した。ザンベーリの無罪を主張したのは、ボルソナーロ派のメンドンサ判事とヌネス・マルケス判事だけであった。(23日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(7)22日、ファリアス・PT下院院内総務が連邦最高裁判所(STF)に対し、ボルソナーロ前大統領の国外逃亡を防ぐためと称して、その未決拘留(予防的拘束)を求めたのに対し、ボルソナーロの弁護団は、「ボルソナーロが昨年2月の時点でアルゼンチンへの亡命を企てていたとの事実はない。また、ボルソナーロは、SNS使用禁止等の制限措置に違反したとの事実もない」として、未決拘留には応じないよう求めると共に、自宅軟禁の解除を求めた。また、弁護団は、連邦警察がボルソナーロと息子達のメッセージのやり取りの一部を公開したことは「lawfare」であると批判した。(23日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(8)Genial/Quaest社が今月13日から17日にかけて実施した世論調査によると、「ボルソナーロ前大統領の自宅軟禁は正しい」と答えた割合が55%であったのに対し、「正しくない」は39%であった(「分からない又は無回答」は6%)。地域別では、南部だけが「正しくない」(49%)が「正しい」(47%)を上回った。ボルソナーロのSNS 使用禁止違反等のルール破りについては、57%が「モラエス判事を挑発するために意図的にやっている」と答えたのに対し、「ルールをよく理解できなかったのであり、意図的にやったのではない」は30%であった。また、「ボルソナーロは、クーデター計画に加担していた」が52%であったのに対し、「加担していなかった」は36%であった。(25日付ヴァロール・エコノミコ電子版)
2.連邦議会
(1)21日、下院において、所得税の非課税枠を月5千レアル(現在は3036レアル)に引き上げるとの法案の緊急審議動議が可決された。これは、ルーラ大統領の選挙公約の一つであり、明年から実施するためには、年内に法案を成立させる必要がある。(22日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)本日(26日)、年金受給者から組合費等が詐取されていた件に関する議会合同調査委員会(CPMI)で、誰を参考人として招致するかについて議論が行われる予定。カルロス・ガバス(ルセーフ政権)、ジョゼ・カルロス・オリヴェイラ(ボルソナーロ政権)、カルロス・ルピ(ルーラ政権)等、2012年から本年にかけて社会保障相を務めた大臣経験者が対象に挙がっている他、野党は、ケイロス現社会保障相とルーラの兄弟(フレイ・シコ)の招致を主張している。(26日付コレイオ・ブラジリエンセ)
3.2026年選挙
(1)Genial/Quaest社が今月13日から17日にかけてサンパウロ州等、8つの州において実施した州知事選挙に関する世論調査の結果は以下の通り。
・サンパウロ州:フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)43%、アルキミン副大統領(PSB)21%、エリカ・ヒルトン下院議員(PSol)8%、パウロ・セーハ元サント・アンドレ市長(PSDB)3%、フェリペ・ダーヴィラ(Novo)2%。
・リオデジャネイロ州:パエス・リオデジャネイロ市長(PSD)35%、ロドリゴ・バセラール・リオデジャネイロ州議会議長(ユニオン)9%、ワシントン・レイス元リオデジャネイロ州政府運輸長官(MDB)5%、モニカ・ベニシオ・リオデジャネイロ市議会議員(PSol)4%。
・ミナスジェライス州:クレイチーニョ上院議員(Republicanos)28%、アレシャンドレ・カリル元ベロオリゾンテ市長(無所属)16%、パシェコ前上院議長(PSD)9%、マテウス・シモンエス・ミナスジェライス州副知事(Novo)4%。
・パラナ州:セルジオ・モーロ上院議員(ユニオン)38%、パウロ・マルチンス・クリチバ副市長(Novo)8%、エーニオ・ヴェーヒ(PT)7%、グト・シルヴァ・パラナ州政府都市長官6%(PSD)。
・リオグランデ・ド・スル州:ジュリアナ・ブリゾーラ元リオグランデ・ド・スル州議会議員(PDT)21%、コロネル・ズッコ下院議員(PL)20%、エデガール・プレット(PT)11%、ガブリエル・ソウザ(MDB)5%、フェリペ・カモザット(Novo)4%。
・バイア州:ACM・ネット元サルヴァドール市長(ユニオン)41%、ロドリゲス・バイア州知事(PT)34%、ジョアン・ローマ元下院議員(PL)4%、クレーベル・ローザ(PSol)2%、ジョゼ・アレルイア(Novo)1%。
・ペルナンブコ州:ジョアン・カンポス・レシフェ市長(PSB)55%、ラケル・リラ・ペルナンブコ州知事(PSD)24%、ジルソン・マシャード元観光相(PL)6%、エドゥアルド・モウラ(Novo)4%。
・ゴイアス州:ダニエル・ヴィレラ・ゴイアス州副知事(MDB)26%、マルコニ・ペリーロ元ゴイアス州知事(PSDB)22%、ヴィルデル・モライス上院議員(PL)10%、アドリアーナ・アコルシ下院議員(PT)8%、テレマコ・ブランダォン・ゴイアニア市議会議員(Novo)1%。(25日付ヴァロール・エコノミコ電子版)
(2)ヴァルデマール・コスタ・ネット・PL党首は25日、「ボルソナーロ前大統領は、次期大統領選に出馬できない場合、PLの正副大統領候補を指名することになっている。フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos )は、大統領に立候補する場合、PLに移籍して、PLから大統領選に出馬するであろう」と述べた。尚、フレイタス知事は25日、経済セミナーに出席した際、ルーラ政権の外交政策を批判し、小さな政府を主張すると共に、「中道右派の大統領になる人物は、40年分の成長を4年で実現するとのスローガンを掲げるべきである」と述べる等、大統領選を意識した発言を連発した。(26日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)
4.外交
(1)ヴィエイラ外相とジル・ベネズエラ外相は21日、コロンビアにおいて開催されたアマゾン協力条約機構(OTCA)首脳会議の準備会合と並行して外相会談を行い、両国の通商問題について協議を行った。また、米国が駆逐艦3隻をベネズエラ沖に派遣した件に関して意見交換を行った。伯政府は、マドゥロ政権に対して圧力を高めるのが目的と見ているが、伯にできることは、米国の艦船がベネズエラの領海を侵犯した場合にこれを非難する等、非常に限られている。(22日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(2)コロンビアでは、21日の爆弾テロにより数十名が死傷した翌日にアマゾン協力条約(OTCA)首脳会議が開催された。ペトロ・コロンビア大統領は、麻薬組織の犯行であるとして、中南米諸国の治安対策会議の開催に向けて、ルーラ大統領に協力を求めた。これに対し、ルーラは、9月9日に国際警察協力センターをマナウス市に開設し、麻薬密輸、金の不法採取、並びに武器密輸の取り締まりを強化すると述べた。尚、今回の首脳会議では、熱帯雨林保護基金(TFFF)の創設等を含む「ボゴタ宣言」が採択された。TFFFは、COP30の開催に合わせて正式に創設される予定。(23日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(3)UNFCCCが21日に伯政府に送った書簡によると、COP30に参加を予定している198ヶ国の内、宿舎を確保できているのは僅か18ヶ国であり、先進国も開催地ベレンにおける宿泊費の暴騰に不満を募らせている。UNFCCCは、途上国の宿泊費の一部を負担するよう、伯政府に求めているが、伯政府は、これを拒否し、国連が各国の代表団に対する補助を増やすべきと主張している。また、伯政府は、宿舎の予約を完了している国は47ヶ国に達していると主張。(23日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(4)イスラエル政府は、伯がガリ・ダガン在伯イスラエル大使に対するアグレマンを拒否したことを不満とし、伯との外交関係の格下げを決定した。アモリン大統領補佐官によると、伯がアグレマンを拒否したのは、メイヤー在イスラエル伯大使がイスラエルから屈辱的な扱いを受けたことが原因である。両国の関係は、ルーラ大統領が半年前に「イスラエルがガザ地区で行っていることはジェノサイドである」と批判し、イスラエル政府がルーラに対してペルソナ・ノン・グラータを宣告してから悪化の一途を辿っている。(26日付コレイオ・ブラジリエンセ)
1.ルーラ政権
(1)ルーラ大統領は、26日の閣議において、明年の大統領選では、フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)が最大のライバルになる公算が大きいとして、ユニオン・ブラジルやPP等、フレイタス支持に傾いている政党に所属している閣僚に対し、「公に私(ルーラ)を支持できないのであれば、政府から離脱すべき」と言い渡した。先日のユニオン・ブラジルとPPの政党連合結成式にはフレイタスが出席し、政府批判を行っている。また、ルーラは、「ブラジルは、ブラジル人の物である」とのフレーズが書かれた青い帽子を着用し、トランプ関税を批判すると共に、SNS企業の規制を主張した。レヴァンドフスキ法務治安相が米国の入国査証を取り消された件については、「これは、彼ら(米国)にとって恥ずべきことであり、君(レヴァンドフスキ)が恥じることはない。逆に誇りに思うべきである」と述べた。(27日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(2)ルーラ大統領は、ゴネー検事総長の再任を決定した。同検事総長の任期は本年12月で終了する予定であったが、再任されたことで、2027年まで検事総長を続けることとなった。(28日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(3)伯政府は、50%のトランプ関税やモラエス・STF判事に対する制裁に関し、米国の司法及び行政機関に対して働きかけを行うため、米国の法律事務所「Arnold&Porter Kaye Scholer LLP」と契約を結んだ。同事務所には、シャノン元在伯米国大使が国際政治の専門家として所属している。(28日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
2.クーデター未遂
(1)モラエス・STF判事は26日、連邦警察の要請を受け、ボルソナーロ前大統領がクーデター未遂の裁判が終了する前に在伯米国大使館に駆け込み、亡命を申請する可能性があるとして、ボルソナーロの自宅内に連邦警察官を配置し、四六時中、間近から監視することを決定した。また、STFは、9月2日から開始されるクーデター未遂の裁判に備えて、STF周辺の警備を強化したり、STF判事の自宅に盗聴器等が仕掛けられていないか、チェックを行っている。ボルソナーロ派は、9月7日の独立記念日に全国各地で大規模デモを行い、裁判に抗議する予定。(27日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
(2)ボルソナーロ前大統領とその周囲は、来週から開始されるクーデター未遂の裁判でボルソナーロが有罪になることはほぼ確実と見ており、無罪を勝ち取るのではなく、できるだけ刑を軽くする方向で裁判に臨むべきなのではないかと考え始めている。ボルソナーロが全ての罪状に関して最高刑を言い渡された場合、禁固刑の合計は40年になるが、ボルソナーロの周囲は、これを10年程度に抑えられないかと期待を寄せている。有罪となり、弁護側が控訴した場合、控訴審は本年11月に開かれる見込み。(28日付フォーリャ・デ・サンパウロ)
3.連邦議会
(1)26日、年金受給者が組合費等を詐取されていた件に関する議会合同調査委員会(CPMI)では、2015年以降の歴代の社会保障大臣及び国家社会保障院(INSS)総裁の他、本件に関して中心的な役割を果たしていたとされるアントニオ・カルロス・アントゥーネス(通称「INSSのハゲ」)の参考人招致が決定された。焦点となっていたルーラ大統領の兄(フレイ・シコ。全国年金受給者・高齢者組合(Sindnapi)副代表)の参考人招致は、ゲデス元経済相(ボルソナーロ政権)の招致も見送ることと引き換えに与野党が合意したことで、参考人招致の対象から外された。また、CPMIの副委員長には与党のドゥアルテ・ジュニオール下院議員(PSB-MA)が選出された。与党は先週、委員長と報告官を野党に奪われたことで、敗北を被っていたところ、副委員長の座を確保したことで、形勢がやや改善された形となった。(27日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(2)下院では、与野党から「議員特権に関する憲法改正案(PEC da Blindagem)」の早期成立を求める声が上がっており、モッタ下院議長は、同PECの採決を早急に行うよう、圧力をかけられている。これは、連邦議員の刑法犯に関する裁判管轄権を連邦最高裁判所(STF)から第1審の下級審に移管すると共に、保釈が認められない犯罪(人種差別、テロ、民主的法治国家転覆罪等)を犯して現行犯で捕まった場合を除き、議員には不逮捕特権を認める等、司法の権限を制限する内容になっている。現在、ディーノ・STF判事が「議員割当金(emenda parlamentar)」の不正使用に関して900件以上もの捜査を警察に行わせているところであり、議会サイドが同PECの早期成立を目指している背景には、これがあるのではないかと見られている。(28日付コレイオ・ブラジリエンセ)
(3)27日、上院において、インターネット上における未成年者の性的搾取防止法案が可決され、大統領の裁可に付された。これは、SNS企業に対し、未成年者が性的搾取、児童性愛、児童ポルノ等の有害コンテンツに接触するリスクを最小化するための措置(保護者が16歳未満のユーザーのアカウントを監視できるようにすること、より厳格な年齢確認等)を義務付けるというものであるが、ボルソナーロ派のカルロス・ポルチーニョ(PL-RJ)、エドゥアルド・ジラォン(Novo∸CE)及びルイス・カルロス・ハインゼ(PP-RS)上院議員は「SNSの規制につながる恐れがある」として反対票を投じた。(28日付コレイオ・ブラジリエンセ)
4.外交
カッツ・イスラエル国防相が「ルーラ大統領は反ユダヤ主義者で、ハマスの支援者」との批判をルーラに批判的なイラスト(操り人形のルーラがイランの最高指導者ハメネイ師に操られている)と共にSNSに投稿したところ、伯外務省は26日、「事実に反する中傷であり、無作法で、受け入れ難い投稿である。カッツ国防相には、イスラエルがガザ地区の病院を攻撃したことにより、多くの患者や報道関係者や人道支援者を殺害した件について真相を究明する責任がある」と批判した。(27日付コレイオ・ブラジリエンセ)