ブラジルのユネスコによる世界遺産 ③
- 4 日前
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★★この記事は執筆者の許可を得て伯学コラムに掲載させて頂きます★★
執筆者:田所 清克 氏(京都外国語大学名誉教授)
[11](ブラジル)発見の海岸の保護区[ Reserva da Costa de Descobrimento ]
ブラジル発見時に、ポルトガル人が到達したであろう沿岸部で、文化的に価値あるものとされている。
その拡がりは、バイーア州のウーナ(Una)からエスピリツト・サント州のリニヤーレス(Linhares)にまで及ぶ。
ユネスコのよって1999年に世界遺産に認定されたこの保護区には、二つの公園、すなわち「発見の国立公園](Parque Nacional do Descobrimento)とパウ・ブラジル公園(Parqe do Pau Brasil)が含まれる。
保護区内でもつとも有名なのは、バイーア南部のポルト・セグーロに位置するパッショ・ダ・ジャケイラ(Pataxó da Jaqueira)と言われる。この地はインディオ文化も垣間見ることができ、歴史文化、はたまた生態学的にも貴重なところだそうだ。
残念ながら私は、この保護区を訪ねたことは一度もなく、従って多くを語れない。
[12]ディアマンティーナの歴史中心地区(Centro Histórico de Diamantina)
ユネスコの諮問機関であるイコモスが、日本が世界文化遺産(自然、文化、複合がある)に推薦している「飛鳥・藤原の宮都(きゆうと)」を登録するように勧告したことで、遅かれ早かれ、正式に決定する見通しである。 登録されるとなると、日本の世界遺産は計27件[文化遺産22、自然遺産5]となる。
ブラジルもほぼ日本と同じで、計25件[自然遺産9、文化遺産15、複合遺産1]である。
ところで、ミーナス・ジェライス州は、さながら京都を想わせる土地柄で、州の至る所が文化の宝庫と言っても過言ではない。まさしく 山地に囲まれたディアマンティーナもしかり。バロックの影響下の植民地時代の街が際立っている。のみならず、よく保存された豪壮な屋敷、石の舗道、街の名前から伺えるように、ダイヤモンド発掘に関連した建造物、等に釘付けになる。 その一方で、ダイヤモンド博物館(Museu do Diamamte)、サン・フランシスコ・デ・アシス教会(São Francisco de Assis )、文字通り古い市場のメルカード・ヴェーリャ(Mercado Velha)など必見である。
価値ある歴史都市であることから国家歴史芸術遺産院(IPHAN=Instituto
Patrimônio Histórico e Artístico Nacional)ははや 1938年には、国家遺産に指定している。ユネスコもその持つ重要性に鑑みて、1999年には世界文化遺産に認定するに至る。
ブラジルのユネスコによる世界遺産
[13]中央アマゾンの複合保全地域(Complexo de Conservação da Amazônia Central)
ある意味で、私の心象はアマゾンの風景に投影され、アマゾンの風景はいつしか私の心象となっている。 それほどまでに憧れの地であるので、アマゾンのネグロ川やソリモンイス川を遡上したり、アマゾン河を下ってマラジョー島や、北部西端のロンドーニア州のポルト・ヴェーリョを訪ねたことも数限りない。
かと言って、北部アマゾン地域の全容を鳥瞰し、知っているわけでもない。土台、千態万容のその風景を隈無く認識することは困難に近い。それでもひたすら、アマゾンに惹かれ、旅したものである。
世界最大の熱帯樹林の拡がりを持つアマゾン。二番目に大きいコンゴ民主共和国のそれより、実に三倍というから驚く。
世界には、およそ150種の動物相と植物相が存在すると言われている。その10%ないし15%がアマゾンに見出されているらしい。その点でまさしくアマゾンは、生物多様性[生態系にあって、動植物相(fauna e flora)]、微小動植物(microorganismo)の多さ]から世界の頂点にある。 その世界自然遺産[2000年]に登録されている、中央アマゾンの複合地域は、イアウー国立公園、マミラウアー発展可能な保護区(Reserva de Desen-
volvimento Sustentável Mamirauá)並びにアマナン持続可能な発展保護区(Reserva de Desenvolvimento Sustentável Amanã)を抱え込んでいる。
乾季の間は歩道が現れるが、雨季には洪水が密林にまで達して、船での航行が可能となる。
ネグロ川とソリモンイス川も抱え込む、600万平方キロを優に超えるアマゾン河流域最大の保護区になったのには、いくつかの理由がある。
その主たる理由は、前述の生物多様性の宝庫であることから、生態学の観点からきわめて貴重であること。 更には、比類のない氾濫原(várzea)があり、アマゾン河流域の支流には、ピンクイルカ、ピラルク(pirarucu)、マナティー(peixe-boi)、鰐の一種であるジャカレー・アスー(jacaré-açu)などの貴重な動物が棲息しているからである。
私にはアマゾンはいわば、魚にとっての水のごとき存在かもしれない。ブラジル研究の世界に分け入ったのも、アマゾンがあったから、と言っても過言ではないだろう。
現に、自身の研究もアマゾンに関連するものが少なくなく、事実、論文や著書を通じてその成果を公にしてきている。
今現在も、緑の樹海と長大なアマゾン河を頭に浮かべながら、50回あまり踏査した在りし日の旅を反芻している次第である。

[13]中央アマゾンの複合保全地域(Complexo de Conservação da Amazônia Central)
ある意味で、私の心象はアマゾンの風景に投影され、アマゾンの風景はいつしか私の心象となっている。それほどまでに憧れの地であるので、アマゾンのネグロ川やソリモンイス川を遡上したり、アマゾン河を下ってマラジョー島や、北部西端のロンドーニア州のポルト・ヴェーリョを訪ねたことも数限りない。
かと言って、北部アマゾン地域の全容を鳥瞰し、知っているわけでもない。土台、千態万容のその風景を隈無く認識することは困難に近い。それでもひたすら、アマゾンに惹かれ、旅したものである。
世界最大の熱帯樹林の拡がりを持つアマゾン。二番目に大きいコンゴ民主共和国のそれより、実に三倍というから驚く。
世界には、およそ150種の動物相と植物相が存在すると言われている。その10%ないし15%がアマゾンに見出されているらしい。その点でまさしくアマゾンは、生物多様性[生態系にあって、動植物相(fauna e flora)]、微小動植物(microorganismo)の多さ]から世界の頂点にある。
その世界自然遺産[2000年]に登録されている、中央アマゾンの複合地域は、イアウー国立公園、マミラウアー発展可能な保護区(Reserva de Desen-
volvimento Sustentável Mamirauá)並びにアマナン持続可能な発展保護区(Reserva de Desenvolvi- mento Sustentável Amanã)を抱え込んでいる。
乾季の間は歩道が現れるが、雨季には洪水が密林にまで達して、船での航行が可能となる。ネグロ川とソリモンイス川も抱え込む、600万平方キロを優に超えるアマゾン河流域最大の保護区になったのには、いくつかの理由がある。
その主たる理由は、前述の生物多様性の宝庫であることから、生態学の観点からきわめて貴重であること。更には、比類のない氾濫原(várzea)があり、アマゾン河流域の支流には、ピンクイルカ、ピラルク(pirarucu)、マナティー(peixe-boi)、鰐の一種であるジャカレー・アスー(jacaré-açu)などの貴重な動物が棲息しているからである。
私にはアマゾンはいわば、魚にとっての水のごとき存在かもしれない。ブラジル研究の世界に分け入ったのも、アマゾンがあったから、と言っても過言ではないだろう。
現に、自身の研究もアマゾンに関連するものが少なくなく、事実、論文や著書を通じてその成果を公にしてきている。
今現在も、緑の樹海と長大なアマゾン河を頭に浮かべながら、50回あまり踏査した在りし日の旅を反芻している次第である。


[14]パンタナルの保全地域 (Área de Conservação do Pantanal)
私はブラジルを留学で初めて訪ねた1976年、国土認識に努める意味からできるかぎり津々浦々を旅することにした。 世界自然遺産[2000年]になっている、今回のテーマであるパンタナルもそうだ。
アマゾンは私のブラジル研究の出発点、つまり動機になった、と前回述べたが、何を隠そう、パンタナルもアマゾンと並んで私の大好きなところで、主たる研究の対象となっている。 最大の湿原地帯であるパンタナルは、およそ15万平方キロの拡がりを持ち、それはセアラー州か、ポルトガルとベルギーとオランダを合わせた大きさに匹敵する。
であるから、その広大な沼沢の全容を把握すべく、50回に亘って訪ねた。それも、一度たりとも同じところに逗留することもなかった。おそらく、私ほどにパンタナルに出向いた方は、そうはいないだろう。 研究者、一般の社会人の方、大阪外大、龍谷大学、京都外大の学生さんを引率して、この地を幾度となく踏んだこともある。
そうした方々と、パンタナルの真っ只中で撮った幾葉もの写真を見ながら、懐かしんでいる。 彼らはパンタナルの世界に身を置いて、誰もが異口同音に、世界観が変わるほどの心境になり、水が支配する自然風景に癒されたことを吐露している。
ところで、アマゾン同様にパンタナルにすっかり虜になった私には、この湿原地帯を扱った論文や、翻訳を含めた著作がいくつかある。加えて、その地、その地で撮った膨大な量の写真や、現地のホテルから譲り受けたパンタナルの自然風景画もあり、大事にセンター内で保存している。
次回は、世界自然遺産に選ばれたそのパンタナルについて、立ち入って言及したい。

パンタナルの自然保全地域(Área da Conservação do Pantanal)14の2
パンタナルはブラジル西部からパラグアイおよびボリビアの一部を含む、およそ230万平方キロに拡がる、南北アメリカ大陸において最大の湿原地帯である。後に詳述するが、《生態学的聖域》(santuário ecológico)とみなされているように、中西部とってはきわめて重要な存在である。ブラジルでは北に位置するMato Grosso 州から南のMato Grosso do Sul州までがその地帯で、パラグアイ川と雨季の降水がもろに影響を及ぼしている。
平均高度は海抜80メートルほどで、巨大な盆の底のような形状を呈しているので、一旦、雨季[10〜3月から]にパラグアイ川が出水・氾濫すれば、平原は冠水する。
出水(cheia)の時期の、地域一帯を覆う満目の水の拡がりを目の当たりにして、当地を初めて訪れた白人植民者たちは、そこに住むインディオの名をとって“シャラアエースの海”(Xaraiés)と呼んでいた。
パンタナルは自然風土から言うと、典型的な熱帯サバンナ気候であるものの、アマゾン林、カアチンガ、セラードなどのビオーマも入り混じり、場所や季節によっても景観は異なる。
冠水した水が湿原から引き始める乾季[4月〜9月]を迎えると、パンタナル一帯の景観は一変する。 年中絶えることのない河川やそれらの河川に近い巨大な湖沼、平原のもっとも低いところにある湖、バニャード(banhado=出水時に水が流れ込む、河川近くの沼地で、ブレージョ(brejo)ともアラガディソ(alagadiço)と呼ばれるものを除いて、湿原の水はなくなり、中小河川さえも水無し川と化す。
歴史的には、当初のパンタナルは、後にサンパウロの奥地探検(bandeira)によって追放されることになる、スペインのイエズス会士の神父たちが18世紀に占有していた。
探検隊員たちはそこに牛を放し飼いにした牧畜業を営み始めた。初めは原始的な手法であったが、今日の主たる産業の基礎となった。そして、パンタナルの“首都”とみなされているコルンバーの港から水路、干し肉、牛革などが他の地域に運び出されていた。
繰り返すが、パンタナルの占める大きさは、前回、述べたが、改めて例えると、日本の本州ほどの拡がりを持つ。 地質学的には、形成途上の新世代第4紀の堆積平原と言われている。パラグアイ川およびその支流が運ぶ土砂などが、約30メートルの層を成す。しかもその形態は、地盤沈降によって盆地状を呈する。

パンタナルの自然保全地域 (Área da conservação do Pantanal) 14の3
ブラジルには7つのビオーマ[生物群系]があるが、パンタナルはその一つ。パラグアイ川流域に位置していて、国土の約1,8%を占める。 ビオーマの中では最小であるものの、淡水の水浸しになった領域としては世界最大である。そのこともあって、何千種の植物以外に、おびただしい数の鳥類、哺乳類、爬虫類、両生類が棲息している。
少年の頃に私は、パイロットか動物学者になることを夢みていた。私のようにそれほどまでに動物が好きな人にとっては、天国みたいなところであることは寸毫の疑いもない。
パンタナルが《生態学的聖域》と呼ばれるのも、自分の目で見て確かめて得心した次第。北はアマゾンとセラードの、南はパラグアイ川流域のチャコ(Chaco)との遷移地帯であることから、多くの植物や動物が存在するのであろう。
この生態系のモザイク状況は、セラード地域と湿潤林を混在させている。
パンタナルの植生は3つ、すなわち、水浸しになっている植生、定期的に冠水ところの植生、そして出水の影響を受けない、例えばカポン(capão=湿原の高台にある茂み)のようなところの植生に分類される。 最初の水浸しになっているところの代表はイネ科(gramíneas)の植物で、冬に生育して家畜の食料となる。定期的に浸水するところには、匍匐植物、灌木、椰子の一種のブリチなどが、出水の影響を受けない高台はセラードの様相を呈し、熱帯の灌木が見出される。
いずれにせよ、貴重な動植物を宿す生態学的聖域であるパンタナルにもかかわらず、昨今の環境破壊には目を覆うものがある。 要因はいくつか挙げられる。その最たるものは、牧畜の拡大(展開)だそうだ。農薬の使用による環境(水質)汚染、ケイマーダ(queimada=野焼もしくは焼畑)、パラグアイ川やパラナー川の航行による回廊林(matas ciliares)の破壊、密猟や略奪的な猟、牛の餌となる外来種の雑草の導入、日本でも問題になっている、生態観光(ecoturismo)ならぬ無秩序な観光、等々。
それでも、パンタナルはまだ保全されているビオーマだと言われている。
このかけがえのない世界的な自然遺産を、われわれは知恵を絞って護る必要があるのではなかろうか。 パンタナルに行くルートとしては、北のクイアバー、パンタナルの中央部に位置するコルンバー、南のカンポ・グランデからの三つがある。
パンタナルという美しい湖沼と湿原が点在する水の風景を目の当たりにできる、珍しい植物相と共に棲息する動物の世界に、皆さまも一度はお訪ねになったら、いかがでしょう。 50回訪ねてもいまだ、寝ても覚めてもパンタナルのことが忘れられない私です。
[15] ブラジルの大西洋の島しょ:フェルナンド・デ・ノローニャとアトール・ダス・ロッカス(Ilhas Atlânticas Brasileiras:Fernando de Noronha e Atol das Rocas)
ほぼリオ・グランデ・ド・ノルテ州の東部に浮かぶ島々は、その地域の海洋生物の繁殖にとってきわめて重要な生態系の一つを形作っている。
レシーフェから545キロの距離にある島の中心フェルナンド・ デ・ノローニア周辺には、21もの小さな島があり、貴重なイルカ、亀などの海洋動物や海鳥が棲息していることから、生態学的聖域として保全されている。
1988年以降は、島の一地域は国立公園となり、保全の意味から、漁(釣り)
が禁じられるようになった。のみならず、入島する者は、滞在する日数に応じて、環境保全税を支払う義務が課されることとなった。
文字通り還礁のAtol das RocasとFernando de Noronhaは今では、ブラジル人にとっては生態観光のあこがれの地となっている。
この島を何とかして訪ねるつもりでいたが、私の夢は叶わぬものとなった。




