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「ブラジル雑感」その90ブラジルの伝説と神話 その4

  • 4月28日
  • 読了時間: 9分

執筆者:田所 清克 氏(京都外国語大学名誉教授)



ブラジルの伝説と神話 7 --- コブラ・ノラト ---

As lendas e os mitos no Brasil --- Cobra Norato ---

 

はじめに

 ずいぶん前に、ブラジルの伝説と神話を紹介していたが、裁ち切れになっていた。

 機会をみて、あまたあるこの国のそれらを引き続きご披露したい。

 次回から取り上げるCora Noratoの伝説は、留学先の大学の授業で近代主義について学ぶ課程で知った。より正確に言えば、食人運動の影響を受けた、近代派詩人の代表者の一人であるRaul Boppの同名の詩を通じて知るに及んだ。

 日本の八岐大蛇の伝説を踏まえた上での、ラウル・ボップの大蛇伝説への興味が湧き、いつしか論文にまでしている。怖いもの見たさの私なので、実際にアナコンダを見ては、ブラジルでよく知られている、アマゾン伝説の筆頭を飾るコブラ・ノラトを思い出すのも稀ではなかった。

 ともあれ、次の回から、ポルトガル語の原文に拙訳を添えて、皆さんと共に、大蛇にまつわる伝説の世界に分け入って行きましょう!

伝説「コブラ・ノラト(=オノラート)」の要約

O resumo da lenda “ Cobra Norato”

 

  アマゾンの伝説のなかでおそらく、「コブラ・ノラト」はもっとも知られている一つであろう。それ故か、前回記したように、Raul Boppによって現代ブラジル文学の傑作“ Cobra Norato ”を生んだ。

 今回からそのパラー州起源の伝説を和訳と合わせて紹介するつもりであつたが、迂闊にも肝心の原文がどこかに紛れ込んだか、あるいは紙くずと一緒に捨ててしまったかで、見当たらない。従って、その伝説の大まかな梗概に触れておきたい。

 タプイア族のインディオ女は、クラーロ川で水浴びしている際に、イルカとの子を身もごつていることに気づいた。

 そして、アマゾン河とトロンベッタス川の間にある、カショエイリ川の岸辺で双子を産んだ。二人は蛇の姿でこの世に生まれたわけである。

 母親は、HoratoとMaria Caninanaというクリスチャンネームを命名した。彼らは陸で生きることができず、川の中で育った。

 住民はコブラ・ノラト、マリア・カニナーナと呼んでいた。双方とも魔法の蛇であったものの性格はまるっきり真逆で、Mariaが悪事を働く存在なのに対して、ノラトは強くて善良そのものであった。つまり、誰にも悪さをしないどころか、反対に溺死寸前の人を救った。のみならず、大魚や獰猛な魚と闘った。そして、夜の到来を待ち侘びながら、泳いで一日を過ごしていた。月が天空に現れると、ノラトは川から出て砂の上を這い回っていた。

 魔法のとけたノラトは、川岸に脱皮したのを置いて、美しい青年に変身した。祭が大好きで、ダンスに出かけては女の子や他の男の子たちとおしゃべりするのであった。

 夜明け前になると、脱いだ皮におさまり、川の中に潜り込んだ。

 一方のマリア・カニナーナは、船を転覆させたり、小魚に傷つけの狼藉ぶりで、生みの親を訪ねることはなかった。これに堪りかねたノラトは、マデイラ川の川中で、取っ組み合いの末、殺すに至った。穏やかだった川が荒い渦巻きになつたのもそのことによる。

 コブラ・ノラトが人間になるには、魔法をとき、彼の口に母乳を三滴たらし、頭の部分を傷つける必要があった。

 大蛇への怖さから、誰もそうする者はいなかった。

 ある日、ノラトはトカチンス川を泳いでダンスをしに出向いた。そこで、一人の兵士と仲間になり、その兵士は魔法をとくのに手伝ってくれた。そして、脱いだ皮を燃やした。焼き燃えた蛇の皮は灰となり、天に昇った。結果として、ノラトは人間になることができたのである。

※大まかな荒筋は以上の通りであるが、今もパラー州の住民は、川でも陸地でも、ノラトの存在を意識しているそうだ。とくにカヌー乗りは、ノラトが行き来し

た場所に詳しいという、たとえ伝説であったとしても。

 

ブラジルの伝説と神話 8 -「タモイオ族の忘恩-‐

Lendas e Mitos no Brasil  --“ A Ingratidão dos Tamoios –

 

はじめに

 フランス人にとってリオは、すこぶる魅力的に映ったのだろう、私が“麗しの都市(Cidade Maravilhosa)”と思うように。

 であるから事実、ブラジル発見間もなく、フランス人はリオに「南極フランス」(França Antártica)を、ポルトガル人から追放されるまで、建設・占拠していたのである。

 しかも、ポルトガルの植民地建設者と、彼らの強いる宗教などの文化変容に激しく抵抗するタモイオ族ともフランス人は結託することにもなる。

 かの有名な「タモイオ族の連盟」(Confederação dos Tamaios)がそうである。

 フランス人とインディオによって形成されたとしたら、むろん、ポルトガル人と彼らの文化を基層とした今のブラジルはあり得なかったであろう。

 tamoio族はtupinambá族の下位集団で、tupi 語のta’mõiに由来、「もっとも古い人たち」、「祖母たち」を意味するそうだ。

 そのタモイオ族は16世紀には、サンパウロ州北部からリオ州にかけて居住していた。

 では、早速、伝説の世界に分け入っみよう。

Os índios tamoios formava uma nação forte, aguerridada e respeitada.

タモイオ族は、戦闘的で恐れられる、強力な国家を形成していた。Seus do-

mínios eram imensos e abrangiam a região de praias, vales e montanhas,

que se estende do Espírito Santo ao Rio de Janeiro.

その勢力範囲は広大で、エスピリツト・サント州からリオ州に拡がる、海岸や渓谷、山岳地域を包含していた。

ブラジルの伝説と神話 --「タモイオ族の忘恩」-- 2

 

Suas canoas velozes e intrépida defendiam o litoral de sua nação, desde

o cabo de S. Tomé atéAngra dos Reis.

その軽速で豪胆なカヌーは、サン・トメー岬からアングラ・ドス・レイスまでの国の海岸線を防御していた。As tribos vizinhos, como as dos goitacas e goianases, não atreviam a atacar suas tabas bem fortificadas.[注記: atrever-se a +不定詞=〜する勇気がある、思い切って〜する、思い切って〜する大胆さを持つ; 対抗する]。 ゴイタカ族やゴイアナゼ族のような近隣の部族は、タモイオ族のきわめて堅牢な集落を攻撃するなど勇気を持ち合わせてはいなかった。

Apesar de valentes e poderosos, os tamoios não sabiam cultivar a terra.勇敢で頑強であったにもかかわらず、タモイオ族は土地を耕すことを知らなかった。Viviam somente da caça e da pesca.彼らは狩猟と漁労でのみ暮らしていた。Por isso, eram obrigados a mudar, frequentemente, de habitação quando os peixes e animais escasseavam em seus domí- nios.[注記:ser obrigado a +不定詞=〜するのを強いられる、〜するのを余儀なくされる。mudar de〜=〜を変える、交換する、とりかえる]。だから、居住圏で魚や獣が少なくなると、しばしば住居を変えることを余儀なくされた。

 

ブラジルの伝説と神話 3  - 「タモイオ族の忘恩」-

 

Um dia, os índios estavam reunidos à beira-mar, celebrando mais uma vitória de suas armas, quando avistaram,

sobre o oceano, um ho-

mem branco, de longas

barbas, que caminhava,

serenamente, sobre as ondas.

 ある日のこと、海辺に集まり、戦いの勝利をもう一度祝っていた折にインディオたちは、大洋の波の上を冷静沈着に歩いていた、長い顎髭の白人の男を遠くに見た。

Houve um grande espanto

entre os infígenas, pois nunca tinham visto um ser humano andar sobre as águas como em terra firme.

陸地さながらに水上を歩く人間をかつて見たことがなかったので、インディオたちの間には、大きな驚きが走った。

 

ブラジルの伝説と神話 4  --「タモイオ族の忘恩」--

 

Era Sumé, enviado de Tupã, senhor do céu e da terra.

 それは天使地の主であるトゥパン神に遣わされたスメーであった。

Esse homem fazia coisas extraordinárias.

その男は途方もない驚くことを行っていた。

Acalmava as tempesta- des, dominava as ondas do mar, abrandava as chu-

vas e as secas.

嵐を鎮めたり、海の波を抑えたり、雨や干魃を和らげたりしていた。

Os ramos das árvores afastavam-se à sua passagem e as feras mais bravias deitavam-se, mansas,a seus pés.

木の枝葉は、彼が通行で遠ざかって道を開け、もっとも獰猛な獣たちは、彼の足下におとなしくひれ伏していた。

Impressionados com seus poderes mágicos e atraídos pela sua bondade, os

tamoios tomaram Sumé  para seu conselheiro.

魔力に感動し思いやりに惹きつけられたタモイオ族は、スメーを自分たちの相談役に迎えた。

Vendo que os índios lutavam com a falta de bons alimentos, Sumé resolveu auxiliá-los

 インディオたちが良質の食料に恵まれず、苦闘していることを知ると、スメーは彼らに助けの手を差し伸べることにした。

 

ブラジルの伝説と神話 5  --「タモイオ族の忘恩」--

 

Reuniu os homens, as mulheres e as crianças da tribo e disse-lhes: “ A

grande mãe é a terra: grande mãe generosa; basta acariciá-la, basta amá-la,

para que ela se abra logo prodigamente em toda a sorte de bens e de venturas”. Em seguida, mandou que os índios abatessem os matos fechados e revolvessem a terra. E, dando-lhes sementes de várias espécies, ordenou que as enterrassem no solo preparado.

 スメーは部族の男、女、子供たちを集めて、彼らにこう言った:“偉大な母なる土地: 偉大なる寛大な土地; 全ての財や福を直に物惜しみなく開放してくれるのには、土地を慈しみ愛するだけで十分”、と。続いて、インディオたちが密林を切り倒し、土地を耕すことを命じた。そして、多くの種類の種を彼らに与えながら、開墾した土壌に種を撒いて埋めるように指図した。

 

ブラジルの伝説と神話 6 --「タモイオ族の忘恩」--

 

Temos depois, voltou com os índios ao lugar onde haviam plantado as

sementes. E o espanto e a alegria foram grandes, quando eles viram e

provaram as plantas que tinham nascido: bananas,mandiocas, carás, milho,

feijão... Sumé ensinou- lhes então a arte de fabricar farinha, moendo a

mandioça; revelou-lhes ,em seguida, os segredos da navegação, aperfeiço-

ando suas rústicas canoas; mostrou-lhes como se podia fazer tecidos e cordas, bem como construer cabanas mais fortes e resistentes. Daí por diante,

os tamoios viveram feli-zes na paz e na abastança.

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 時が去って、スメーはインディオたちと種を撒いたところに戻ってみた。成長していたバナナ、マンディオカ、カラー芋、トウモロコシ、フェイジョン豆等を見て、試食した時の、インディオたちの驚きと喜びと言ったら。そこでスメーは彼らに対して、マンディオカを挽いてファリーニャ粉を作る技術を教えた。それに引き続いて、原始的なカヌーを改良しながら、航海術の極秘を伝授した。はたまた彼は、堅固で耐久性のあるカバーナ同様、どうしたら布地や綱を作ることができるかを教示した。それからというもの、タモイオ族たちは平和と裕福の中、幸せに暮らした。

 

ブラジルの伝説と神話 7  [最終回]

 

Mas, com o decorrer do tempo, os tamoios foram esquecendo tudo o que

deviam a Sumé. E os pajés, com inveja do poder do homem branco, começaram a insuflar na alma dos índios o ódio e a aversão àquele que tanto fize- ra pela felicidade de sua tribo.

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 ところが、歳月の流れと共に、タモイオ族はスメーへの恩義を全て忘れていった。しかも、白人の魔力を妬んだ祈祷師たちは、部族をたいそう幸せにしてくれたあのスメーへの憎悪と嫌悪の情をインディオたちに吹き込み始めた。

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Um dia, quando saía de sua cabana, Sumé viu diante de si todos os tamoios, armados, e com gestos ameaçadores. Quis dirigir-lhes a palavra, mas

não pôde. Uma flecha certeira veio cravar-se em seu peito. O bom homem

sorriu, arrancou a flecha do corpo e foi andando de costas, olhando para os

índios. Outras flechas o atingiram. Ele continuou a sorrir, sem mágoa, enquanto arranca a as flechas do peito. E foi andando até a praia. Aí chegando, as ondas vieram beijar-lhe os pés. E Sumé , sempre de costas e sorrindo, foi caminhando, lentamente, sobre as águas, até que desapareceu no horizonte. E nunca mais voltou à taba dos ingratos tamoios. [Fim]

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 ある日のこと、家から出かけようとしていたスメーは、武装して脅すような仕草の全てのタモイオ族を面前にした。彼らに話かけようとしたが、叶わなかった。スメーの胸元に一本の矢刺さった。人の良いその白人は笑い身体から矢を抜いて、インディオたちに目をそらせないで前向きのまま退いた。




 
 
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