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世界幸福度調査2026に見るラテンアメリカ

  • 24 時間前
  • 読了時間: 6分

 執筆者:桜井 悌司 氏

            (ラテンアメリカ協会&日本ブラジル中央協会顧問)


「はじめに」

 

2026年3月20日、恒例の世界幸福度調査報告2026年版(World Happiness Report 2026)が発表された。毎年「国際幸福デー」(3月20日)に合わせて公表される。国連の支援を受けて、「持続可能な開発ソリューションネットワーク」(Sustainable Development Solution Network)が公表する。世論調査で有名な「Gallup World Poll data」も関与している。このレポートは、2012年に開始され、今年は15回目を迎えるが、対象国は世界の147ヶ国をカバーしている。レポートは268ページにもわたる。今回の調査では、SNSとの関わりを重点的に取り上げた。(https://files.worldhappiness.report/WHR26.pdf?_gl=1*slgl34*_gcl_au*MTUwMzQ1MzIwOS4xNzcyNzE0Mjk0

各国の国民に「どれくらい幸せと感じているか」を評価してもらった調査に加えて、不平等(Inequality)、1人当たりのGDP(GDP per capita) 社会的支援(Social Support)、健康寿命(Health Life Expectancy)、人生の選択の自由度(Freedom to make Life Choices)、寛容性の度合Generocity)、腐敗の認識(Perception of Corruption)、ディストピア(人生評価/主観満足度)といった要素をもとに幸福度を計るものとなっている。幸福度を最低のゼロから最高の10までの数字で表す。米ギャラップ社がまとめる調査データを、今回は英オックスフォード大学率いる国際チームが分析し、過去3年の平均から順位を算定したものである。

表1は、左側に今回の幸福度調査のベスト15の国のリストと得点、その他日本、スペイン、アジアの諸国の順位と得点、右側には、ラテンアメリカ諸国21カ国の順位と得点を示している。

上位に位置する国は、北欧諸国、欧州諸国がほとんどで、ベスト15の内10ヶ国が入っている。今回の調査で注目すべき点は、コスタリカが、前年の6位から4位に躍り出たこと、メキシコが前年の10位からランクを落としたものの12位にとどまっていることである。上記以外の非欧州国は、イスラエル(8位)、ニュージーランド(11位)、オーストラリア(15位)の5ヶ国のみである。

メキシコのラテンアメリカ社会科学大学(FLACSO)の教授であるマリアーノ・ロハス氏によれば、コスタリカが4位にランクされた理由として、質の高い無料の医療・教育を提供する福祉国家と、人々の「関係性の温かさ」の組み合わせを挙げている。

 

昨年の調査では、ラテンアメリカ諸国の強みとして下記の点を挙げている。

「思いやりと分かち合いのもうひとつの重要な形は家族である。世帯人数が多く、家族の絆が強いという特徴を持つラテンアメリカの社会は、より高く持続可能なウェルビーイングを求める他の社会にとって、貴重な教訓を与えてくれる。」

「世帯のサイズと家族の絆が幸福とどう関係するか – 世界中のほとんどの人にとって、家族は喜びと支えの源である。メキシコとヨーロッパでは、4~5人の世帯が最も幸福度が高い。少なくとも1人の子どもと同居している夫婦、あるいは子どもや親戚のメンバーと同居している夫婦は、特に平均的な生活満足度が高い。」

日本はランクを6ポイント下げ、61位であった。日本は、2023年の47位を最高に、2024年、51位、2025年、55位と振るわない。今後も、日本人の完璧主義、悲観主義的傾向、萎縮傾向、経済の低迷、格差の拡大等によって上位は望めないように思われる。

表1 2026年版世界幸福度調査報告書にみる世界ランキングと得点

「ラテンアメリカ・カリブ諸国の幸福度は」

ラテンアメリカ・カリブ海諸国のランキングは、表2と表3の通りであるが、コスタリカ、メキシコ、ベリーズ、ウルグアイ、ブラジル、エルサルバドル、パナマ、グアテマラ、アルゼンチン、グアテマラ、ジャマイカがベスト10で、以下、チリ、ニカラグア、パラグアイ、エクアドル、ホンジュラスと続き、ワースト5は、下からベネズエラ、ボリビア、ジャマイカ、ペルー、コロンビアとなっている。

表3を見ると世界ランキングの中でベスト30位に入っている国は。コスタリカ、メキシコ、ベリーズ、ウルグアイの4ヶ国で、50位までにランクされている国は、ブラジル、エルサルバドル、パナマ、アルゼンチン、グアテマラ、チリ、ニカラグアの7ヶ国で前年調査と同様である。

日本は、61位であることは前述したが、ラテンアメリカ・カリブ海諸国の対象国21か国で日本を上回るランクの国数は、14ヶ国となっている。

表4は、「はじめに」のところで紹介した具体的項目に従ったランキングである。不平等,1人当たりのGDP、社会的支援、健康寿命、人生の選択の自由度、寛容性の度合、腐敗の認識、ポジティブな感情が含まれる。ラテンアメリカ諸国の幸福感における強みは、ポジティブな感情と人生選択の自由度にあることが理解できる。

表5は、2026年調査と前回の2025年調査でどのように上昇・下落の変化を示したものである。これによると、上昇した国は、8ヶ国でとりわけ、ジャマイカが34ポイント、ドミニカ共和国が12ポイントが注目される。反対に下落した国は、コロンビア、ペルー、トリニダードT,チリ等11ヶ国となっている。表6は、過去8年間にどのようなランクの変化があったかを示す。これによると、上昇した国数は、8ヶ国、下落した国数は10ヶ国、変化なしは1ヶ国となっている。

今回の調査の要旨(エグゼクティブサマリー)の欄でラテンアメリカを含む主要ポイントについて紹介する。

*コスタリカが4位に上昇したが、ラテンアメリカ諸国として史上最高の順位を示した。*北アメリカと西ヨーロッパでは、若者の幸福度は15年前よりも大幅に低くなっている*47か国の15歳を対象としたPISA調査によると、ソーシャルメディアを1日7時間以上     

使用する子どもは、1時間未満しか使用しない子どもよりも幸福度がはるかに低い

ことがわかった。

*ラテンアメリカ諸国は、ソーシャルメディアの使用率が高いと同時に若者の幸福度も高い一方で、英語圏の国々はインターネットの使用パターンが比較的典型的であるにもかかわらず、若者の幸福度が低くなっている。

ラテンアメリカのデータは、プラットフォームのタイプが重要であることを示している。社会的つながりを促進するように設計されたプラットフォームは幸福感と明確な正の関連を示す一方で、アルゴリズムによってキュレーションされたコンテンツに基づくプラットフォームは、高頻度の使用時に負の関連を示す傾向がある。

 

表2 ラテンアメリカ諸国の過去8年の順位の推移〈2018年~2026年〉

表3ラテンアメリカの項目別採点 2026

(注):①ライフ評価(3年平均) ②変化(2012年以降)③不平等 ④社会的支援 ⑤一人当たりGDP ⑥健康寿命 ⑦自由度 ⑧寛大さ ⑨腐敗に対する認識 ⑩ポジティブな感情
(注):①ライフ評価(3年平均) ②変化(2012年以降)③不平等 ④社会的支援 ⑤一人当たりGDP ⑥健康寿命 ⑦自由度 ⑧寛大さ ⑨腐敗に対する認識 ⑩ポジティブな感情

表4 上位30位・50位内に入っているラテンアメリカ諸国名(2018~2026年)

表5 過去1年(2025年~2026年)のランキングの変化

表6 過去8年(2019年~2026年)のランキングの変化

「過去の世界幸福度調査の執筆状況」

当協会のホームページの「投稿欄」で、世界幸福度調査について掲載した原稿は下記の通りである。

 

連載レポート44 「統計に見るラテンアメリカ 世界幸福度ランキング」 2020年5月  https://latin-america.jp/archives/43076

連載レポート85 「世界幸福度報告書2022とラテンアメリカ」  2022年4月

    https://latin-america.jp/archives/52514

連載レポート110 「世界幸福度調査2023に見るラテンアメリカ」2023年5月

    https://latin-america.jp/archives/57750

連載レポート 132:「世界幸福報告書2024にみるラテンアメリカ」2024年4月  https://latin-america.jp/archives/61997

連載レポート 147:「世界幸福報告書2025にみるラテンアメリカ」2025年4月

  https://latin-america.jp/archives/65551



 
 
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