コラム「ブラジルの素顔」
- 5 時間前
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2026年4月
加藤 巌
「病院、タイヤ、謙遜、スタートアップ・・・ / 嗚呼ブラジルは続く」
こんにちは!!
相変わらず、いろいろな事象が発生していて、毎日が本当に新鮮です。
【医療事情】
当地の医療事情について少し触れることにします。
以前のコラムや、過去に私が登壇してきた数々のブラジル投資セミナー等でもコメントしていますが、ブラジルの医療水準は高いです。日本の医師友人たちも
「まずブラジルは手術数が圧倒的に多いので技術がある」
とコメントします。
この点では日本人駐在員は家族を含めて安心できると思います。勿論、支払金額によっての病院、医療水準、その対応には大きな差がありますが。
先日、親しくしている先輩からの依頼で、日本からの医師団の訪伯ミッションのお手伝いをしました。私の役回りは、ブラジルの医療実態を中心に、文化、商習慣、世界からみたブラジルを先生方に説明をすることでした。 聞けばこのミッションの行程の中にサンパウロ中心地にある超一流と言われる数件の病院見学が繰り入れて あったので、ツアー最終日の会食時にその感想を尋ねると、想像していた通りに彼らは一様に驚いていました。それは最新鋭の医療機器の存在、またその機器台数が多いこと、整備体制に対するシフト等の運営体制面について明らかに来伯前とのギャップがあり、ここまで揃っている日本の病院もあまりない、というコメントでした。
さて本題。
「トホホ」なことですが、私自身が入院・手術をする羽目になり、貴重な体験をしました。
入院した病院はサンパウロ中心部にある誰もが知っている南米でも随一の超高級な病院ではないものの、 有名な2番手グループぐらいの位置づけの約250床を有する病院を選択しました。この病院は昔からある施設ですが、想像していたよりも数段上の快適な入院生活を送ることが出来ました。
清潔という基本事項は勿論でしたが、自室から手術室への移動にしても、自室に戻る時にしても、くどいほど、本人確認作業が徹底しており、配膳時の受取時も徹底していました。また全ての看護師はテキパキとしていました。担当看護師の引継ぎも、患者である私にも見えるように部屋備え付けのボードに記入しての対応だったので安心感がありました。また夜中に部屋に蚊がいたので日本人的に「こんなことで夜中に呼ぶのは気が引けるなぁ」と思いながら、蚊の攻撃に耐えられず、ナースコールを押したら、本当に直ぐに対策を取ってくれました。
そういえば数十年前からサンパウロで出産に取り組む日本人駐在員の奥様方が多かったのですが、実体験を通して解った気がしました。それは患者にとって一番大切な「安心感」がそこにはあったからです。
私の場合、入院したその日の午後に手術というスケジュールだったのですが、先ずは入院時に担当看護師からシャワーを薦められました。でも頭は濡らしてはダメと強く言われたので、理由を聞いたところ、万が一、手術中に心肺停止になった時にAEDを使用することを想定しているようでした。怖いけど、素人としても納得するコメントでした。
そうそう、手術室に向かう際、迎えに来た看護師くんが
「僕はガブリエル、よろしく!これからあなたを手術室に連れて行くよ」
と満面の笑顔でいうので、人生初の大きな手術ということから神経質になっていた私は、聖書に登場するガブリエルという大天使を思い出し
「天使のお迎えか・・・・」
と言ってしまい、その場にいた全員が苦笑いをしていました。
入院患者は3食(私の場合は流動食でしたが)配膳されるのですが、付き添いの人、家族等の分も用意してくれるとのことでした。日本では無い?制度に驚きました。
病院系話題の最後は当地の最新の処方箋について。
この病院で私の執刀医が処方してくれた処方箋は電子処方箋であり、QRコードを読み込めば、薬剤の処方ミスがなく、かつクイックに処方できるという進んだIT処方箋でした。しかし、その処方箋の説明を読むと、「既にブラジル全土で使用できるかもしれません(?)」というなんとも頼りない説明があったので、ブラジルらしいなぁと思いながら、早く薬を手にいれて帰宅したい一心で病院の2ブロック横にある薬局に寄るように運転手君にお願いしました。
この最新のIT処方箋を発行した病院の近くにある薬局なので、当たり前のようにIT処方箋を見せたら、
「これは何?取り扱えないよ」
とのこと。ガーンです。
やはりというか、地元ですらまだ浸透していないシステムということが判明。やはり当国の強みのひとつ、日本ではなかなか浸透しない「取り敢えず実行してみる、トライ&エラー」が実践出来ている事例を体感しました。
嗚呼、ブラジルです。
【パンクの対応】
当地で会員になっているゴルフ場へいつもの通り行った週末の出来事です。
ラウンド後に車に乗り込もうとしたところ、右前輪のタイヤの空気圧がかなり少ないように見えました。
クラブからかなりの徐行状態で走行して、高速道路に入る前のガソリンスタンドに寄り、タイヤの空気圧を測ってもらったところ、適性値が242kPaのところ96kPaしかない!!明らかにパンクじゃん!!
スタンドの店員君に
「このままサンパウロまで戻ることは出来ると思うか?」
と尋ねたところ
「大丈夫、大丈夫」
と無責任な答え。
「何かあれば国道沿いにはガソリンスタンドが沢山あるでしょ?彼らは助けてくれるよ」
と続く。
「君たちは助けてくれないんかーい・・・」
と私は心の声・・・・
命がけということもあり、納得せずに心配だったので更に粘りました。
「このスタンドでスペアタイヤと交換したほうが良いのでは?」
と尋ねると、面倒くさいのか
「ここから数分のところにタイヤ屋があるからそこで相談しなよ」
とのことでした。
なんだ、近くにあるじゃん、と私は日本で言う自動車用品、大手チェーン店などをイメージして、そのお店を 探したところ、ようやく見つかったのがこの写真の小さな店でした。確かにタイヤ屋ですが・・・・
二度目のガーン・・・。
大丈夫かなと、心配になりましたが、他の良策も思いつけない緊急時ということで、意を決して、古びた鉄格子を開けたところ、おじいさん店主が 中から出てきて丁寧に対応してくれました。

調査の結果、タイヤに刺さっていたものは ボルト式の釘だったので、それを引っこ抜いて くれて、そこに茹でる前のマカロニに似ている「麺」とポルトガル語で称される修理材料を無理矢理にその穴に押し込め、出っ張った部位を削って修理完了となりました。横で見ていたこの一連の修理では心配でした。だって単に茹でる前の麺の色が同じ、約2cmのマカロニ型の物体で塞いだだけです・・・
修理完了後はそれでもプロらしく空気漏れがないかタイヤ自体を水の中に沈めて、手際よくチェックをしてくれましたが、空気漏れもなく、修理は完璧!という感じだったので、仕方が無いのでそのまま帰ろうと思いました。料金を尋ねたところ、料金表が存在しないようで(!)
「んん・・・・、じゃあ30レアルでいいかなぁ・・・」(当時の為替で換算すると約900円)
と申し訳なさそうに言われました。
そうです、想定よりもかなり安く、むしろ心配な位に安いので商談成立として、コラムでもよく書いている当地の決済システムPIX(自分のスマホの銀行アカウントから相手口座へ送金)を実行しました。
おまけですが、この店の周辺の電波状況はかなり悪く、彼の口座に着金するまでに約3分待ちました。
その後無事に自宅まで高速を使ってたどり着いたのですが、当然、翌日にわが社の運転手君にタイヤの状況について再確認してもらったのは言うまでもありません。名誉のために加えますが、パンク修理は例のおじいさん店主の応急処置方法は正しかったようです・・・・・
ここからの学びは超大手のガソリンスタンドだからと言って信用してはいけない。常に自分で体験して自分で判断、対応することで経験値が上がっていくと言うことでした。この年齢になってもまだまだ新しいことがたくさん当地で起きています。
嗚呼、ブラジルです。
【ブラジル流の謙遜に遭遇】 オーナー以下、ほぼ全店員が顔馴染みのランチやコーヒー等の軽食を提供してくれる店が私のアパートの 近くにあり、頻繁に利用しています。このオーナーは新しいメニューにも積極的にトライしているので、新メニューを試食して、フィードバックをしてあげています。
先日、いつも私のお腹を満たしてくれ、随分とお世話になっていることから従業員にも配布できる充分な数のプレゼントを持参したところ、オーナーから以下のコメントがありました。
「あー、こんな素敵なプレゼントを頂くなんて、なんと言うことでしょう。いつも来店頂きありがとうございます。 何か不具合があれば何でも言ってくださいね。本当に配慮頂きありがとうございます。従業員も喜びます!!」
この遠慮、謙遜トーンを綺麗なポルトガル語で言われて、なんだか新鮮でした。
これも、嗚呼、ブラジルです。
【ガソリンスタンド・燃料関連ネタ】
ちょっと田舎にでかけた時、燃料タンクが半分以下だったので、燃料を補給しておこうと、目の前にあったスタンドに行った時の会話。
「エタノール(当地に存在する乗用車用の燃料種類)を15、頂戴」
「わかったよ、セニョール。15レアル分ね?」(当時の為替で換算すると約450円)「15レアルではなく、15リットル分を給油してね」
と言いなおしました。確かに田舎での燃料補給だったし、その水準でいれる市民もいるということなのだと納得しました。
因みに当地で製造、販売されている車両の略100%はガソリン、エタノールのどちらでも対応できる車両です。あまり目立ちませんが脱ガソリンがかなり進んでいる国です。ついては、これもあまり知られていませんが、産油国のブラジルでは現在のホルムズ海峡問題の影響は低い状況です。
ついでに一つ。世界的には進行中とされている電気自動車ですが、確かに最近は市内でよくみかけるようになっているけど、インフラ面の整備が進まないので完全普及にはまだまだ時間がかかるものと考えます。
世界の国々とは明らかに違う速度で進化しているブラジルです。
これも、嗚呼、ブラジルです。
【領収書がその場でスマホに!!】
次の話題は日本でも普及しているスマホにクレジットカード機能を登録して決済をするケース。当地でもこの決済方法は普及しています。但しスマホの盗難が多いので私は利用していません。また想像ですがサンパウロやリオデジャネイロ等の大都市では復旧しつつあるけど、田舎ではまだまだ、だと思います。
さて話題を戻して、このコラムで記載したいのは、先日体験したこと。
それは市内の掘っ立て小屋のような小さなお店で、ちょっと特殊な電池を購入した時のこと。当然ながら支払いはクレジットカードで決済。店の女の子は手許の小型端末で決済をするようです。その手許機械はかなり軽量小型であり、所謂顧客が管理するレシートが発行できないタイプでした。

几帳面な管理大好きな私は
「紙がないと困る」
と言ったところ、売り子さんは
「大丈夫、大丈夫。あなたの電話番号を教えて」
と涼しい顔で言ってきた。夕食の誘いかと思ったが(笑)、そんなはずもなく、あっという間に私の携帯宛に領収書が送られてきた次第。その場で領収書が支払者のスマホ宛に送信できるというシステムがここまで普及してきているということは、驚きでした。技術的には当然可能だとはわかりますが、よもやブラジルでこれを体感するとは思っていませんでした。
嗚呼、ブラジルです。
【個室休憩室ビジネス – スタートアップ】
先日、市内でも高級オフイスが立ち並ぶ一角に行った時に遭遇したモノに驚きました。
写真がそれですが、簡単に説明すると昼寝の提供個室であり、15分とか30分とか少しだけ喧噪から離れて休憩をしたい人向けのサービスです。
自宅に帰って調べたところ、創業は2012年とのことでしたが、途中コロナ渦もあり、再び始動したようです。

比較的のんびりと業務時間が経過する国であると想像している読者も多いかと思いますが、近年のブラジルは様変わりです。もしかしたら東京以上のバタバタ感でもあるといえる証拠だと思います。現在市内の高級と呼ばれている地区、病院等にこの仮眠箱が設置されているようですが、果たして商売ベースになるのでしょうか???
でも、これも嗚呼、ブラジルです。
加藤 巌 (かとう いわお)
1987年上智大学外国語学部卒業。同年住友銀行(現三井住友銀行)入行。
89-90年ブラジル業務研修生、その後国際審査部、国際金融情報センター出向、ブラジル住友
銀行(現ブラジル三井住友銀行)にて企画、法務、システム、経理財務を所管、ブラジル三井住友
銀行及び三井住友銀行のグローバル・アドバイザリー部にてM&Aソーシング/アドバイザリー業務
を中心に従事、長きにわたり中南米ビジネスへのアドバイザリー業務を実施。
2021年7月末で銀行を退職し食品業界に転じて現在では5度目のブラジル生活中。ブラジルの
金融、社会、政治、文化、等について、いろいろな分野での南米の専門家が情報交換や提言を
する団体、日本ブラジル・クラブ CdNB (Clube do Nipo-Brasileiro)の共同主宰。
<主な執筆物>
「中南米における自国通貨のドル化の背景とその実効性」(JCIF/大蔵省委託調査)
「変動する世界の金融・資本市場(アルゼンチン)」 (金融財政事情研究会)
「日本企業がブラジルと上手に付き合うために必要なこと」 (日本ブラジル中央協会)
「新ブラジル事典/第4章:金融業」 (ブラジル日本商工会議所編)
<主なセミナー活動等>
「特集ブラジル経済と不動産市場の行方」(AREAS不動産証券化ジャーナル/2016年31号)対談
日本機械輸出組合主催「ブラジル進出支援セミナー」講演
経済産業省 大臣諮問勉強会「ブラジル勉強会」へ招聘されブラジル産鶏肉について解説
播磨国際協議会主催「ブラジル経済情勢」講演
上田市3商工団体共催「海外展開セミナー」講演
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