top of page

2025年4月 ブラジル関連情報


 

1.クーデター未遂

(1)ルーラ大統領は27日、ベトナム訪問に向けて日本を出国する前に行った記者会見において、「(ボルソナーロ)前大統領がクーデターを試みたのは明らかであり、また、大統領である自分と(アルキミン)副大統領と(モラエス)選挙高等裁判所長官の殺害に加担していたのも明らかである。彼(ボルソナーロ)が強がったり、迫害されていると訴えても無駄である。ボルソナーロにも推定無罪の原則が適用されるべきであるが、クーデター未遂に加担したことが裁判で認められれば、処罰されるべきである。(ボルソナーロは)泣き言をいう代わりに現実を直視すべきである」と批判した。これに対し、ボルソナーロは「ルーラの酒飲みめ、伯国民は、お前がどういう人間で、ここまで何をしてきたのかを知っているぞ。(ルーラ等の)殺害計画などという戯言を信じるのは馬鹿か悪人しかいない。唯一、殺害されそうになったのは自分(ボルソナーロ)だけである。ルーラの味方であるPSolの元運動員の手によってだ。だが、彼らは成功しなかった。クーデターの件にしてもそうだ。彼ら(PT)は、テメル(が副大統領から大統領に昇格した)の時もクーデターだと騒ぎ立てた。そんなバカげた作り話には誰もがうんざりしている」と反論した。 (28日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)STF第1小法廷は全会一致でボルソナーロ等8名に対する起訴状を受理したが、フックス判事だけは、マウロ・シディ元大統領付副官の供述に「供述内容が二転三転する場面があった」として、その信憑性に疑義を呈し、STF第1小法廷には管轄権はないとする弁護側の主張にやや理解を示す等、弁護側に希望を持たせる発言を行った。但し、専門家は、「フックス判事も大筋ではモラエス判事の主張に賛同しており、同判事の発言が今後の裁判に影響を及ぼすことはない」と見ている。(28日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)ゴネー検事総長は27日、「ボルソナーロ前大統領とグーテンベルギ・レイス下院議員(MDB-RJ)がボルソナーロの新型コロナワクチン接種証明書の偽造に関与していたとの証拠は見つからなかった」として、両者に関する捜査の打ち切りをモラエス・STF判事に対して求めた。ボルソナーロは、他の15名と共に、保健省のシステムに対する不正アクセス及び犯罪組織結社罪の容疑で立件されていた。モラエス判事は28日、ゴネー検事総長の求めに応じて本件に関する捜査を打ち切った。(28日及び29日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(4)ボルソナーロ前大統領の甥(レオナルド・ロドリゲス・ジェズス。通称レオ・インディオ)は、三権襲撃に参加したため、クーデター未遂の容疑で起訴され、今月5日に起訴状が受理され、刑事裁判の被告となることが確定した。その後、レオ・インディオは、旅券を押収されたにも拘らず、国外に逃亡し、26日、現在、アルゼンチンに滞在していることをSNS上で明らかにした。これに対し、モラエス・STF判事は、レオ・インディオの弁護団に対し、48時間以内に説明を行うよう命じた。(28日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(5)ボルソナーロ前大統領は、フォーリャ・デ・サンパウロ紙のインタビューに応じた際、「2022年12月初頭に戒厳令または緊急事態宣言を布告することについて当時の国防大臣等、軍の上層部と話し合った。話し合うだけなら何の問題もないはずだ。但し、実行には移せないとの結論に達したため、忘れることにした。(それはクーデターではないのかとの問いに対し)クーデターとは憲法を無視したものである。戒厳令や緊急事態宣言については、憲法に規定があり、それらについて話し合うこともできないというなら、それらは廃止すべきである」、「自分は恩赦を求めているわけではない。そもそも、(三権襲撃が起きた)1月8日には米国に滞在しており、自分は(襲撃とは)全く関係がない」、「自分はもう70歳を過ぎており、逮捕されたらお終いである」、「自分にはプランBがあり、明年の選挙に出馬するために最後まで戦う」等と発言した。(3月30日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(6)PT等の左派政党と市民団体は30日、ブラジリア、サンパウロ、フォルタレーザ、サンルイス、ベロオリゾンテ、ベレン、レシフェ及びクリチバの8都市において、三権襲撃犯恩赦法案反対デモを実施した。サンパウロ市のデモはパウリスタ大通りで実施され、約1.8万人が参加した。この数字は、ボルソナーロ前大統領が3月16日にリオデジャネイロのコパカバーナ海岸で実施した集会の参加者数と同じである。尚、モッタ下院議長は、恩赦法案が今週の議題に上る可能性はゼロであると述べている。(3月31日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(8)ザニン・STF判事(STF第1小法廷裁判長)は31日、クーデター未遂により起訴された34名の内、第3グループを構成する軍関係者12名の審理(起訴状の受理)を4月8日及び9日から5月20日及び21日に延期した。ボルソナーロ前大統領等、第1グループ(8名)に対する起訴状は先週、全会一致で受理された。(4月1日付コレイオ・ブラジリエンセ)


2.ルーラ政権

(1)連邦政府は28日、軍人の給与改定(本年4月に4.5%、明年1月に4.5%の合計9%の賃上げ)に関する暫定措置令を官報に掲載した。文民の公務員給与については現在、手続き中であるが、政府と公務員組合の合意では、本年1月に遡って9%、明年4月には5%の賃上げが行われることになっている。(3月29日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)連邦政府は、4月3日にブラジリアのコンベンションセンターにおいて、ルーラ政権のこれまでの成果をアピールするためのイベント「O Brasil Dando a Volta por Cima(逆境を乗り越えるブラジル)」(一般公開)を実施する。経済成長率や失業率等の経済指標の改善、中等教育支援プログラム(Pé-de-Meia)等、ルーラ3期目に実施された目玉政策、並びに所得税の非課税枠を月5千レアルに引き上げるための法案提出が成果として紹介されることになっている。これは、パルメイラ大統領府広報庁(Secom)長官が打ち出した、ルーラ大統領の人気を回復するための広報戦略の一環である。パルメイラの就任以降、テレビ、ラジオ、インターネット、デジタル・メディア及び雑誌を介して合計1211回の広報キャンペーンが実施された。(4月1日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)ルーラ大統領は31日、1964年の軍事クーデター61周年に際し、「本日は、民主主義、人権及び主権在民の重要性について思い起こす日である。我々は、不幸なことに未だに生き延び続けようとしている権威主義の脅威に立ち向かわなければならない。民主主義以外に伯がより公平で格差の少ない国になれる方法はない」とのメッセージをSNSに投稿した。連邦最高裁判所(STF)は、「民主主義は常に最良の道である。軍事政権下で基本的人権が奪われたようなことを二度と起こさないためにも(軍事クーデターが発生した)1964年3月31日を思い出すべきである」と投稿した。(4月1日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(4)AtlasIntel社が3月20日から24日にかけて4659人を対象に実施した世論調査によると、ルーラ政権の支持率は44.9%で、不支持率は53.6%(2月比0.6ポイント増)であった。ルーラ政権に対する評価は、「非常に良い/良い」37.4%(0.2ポイント減)、「普通」12.5%(1.2ポイント増)、「悪い/非常に悪い」49.6%(0.4ポイント減)、「分からない」0.5%。現時点において大統領選が行われた場合、各候補の支持率は以下のようになる:ルーラ(PT)41.7%、フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)33.9%、マルサル(PRTB)5.4%、カイアド・ゴイアス州知事(União Brasil)3.8%、レイチ・リオグランデ・ド・スル州知事(PSDB)3.6%、テベチ企画予算相(MDB)3.3%、ゼマ・ミナスジェライス州知事(Novo)1.6%、マリーナ・シルヴァ環境相(Rede)0.5%。但し、決選投票では、フレイタスが47%、ルーラ46%で、フレイタスが逆転する。ボルソナーロ前大統領が出馬する場合、ボルソナーロ(PL)45.6%、ルーラ(PT)40.6%となり、決選投票でもボルソナーロ48%、ルーラ46%で、ボルソナーロが勝つとの結果が出ている。(4月1日付ヴァロール・エコノミコ電子版)


3.連邦議会

(1)野党PLは、モッタ下院議長がアジア訪問から帰国したのを見計らって、三権襲撃犯恩赦法案の早期成立に向けて攻勢をかけることにしている。PLは、モッタ議長が同法案の採決に応じるまで全ての法案の審議を妨害する構え。ボルソナーロ派の議員は、左派の恩赦法案反対デモが低調に終わったことに勢いづいて、主にSNS上で恩赦法案の早期成立を求めるための工作を行っている。(4月1日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)1日、上院経済委員会(CAE)において、相互主義法案(外国が伯の産品に対して保護主義的な措置をとった場合、伯政府が報復として相互関税をかけることを認める)が賛成16、反対0により可決された。5日以内に同法案を上院本会議にかけることが要請されなければ、同法案はそのまま下院に送られることになる。(4月1日付ヴァロール・エコノミコ電子版)


4.2026年選挙

1)ラチーニョ・Jr・パラナ州知事(PSD)は27日、企業団体(企業リーダー・グループ(Lide))のイベントに出席した際、「大統領に立候補することは夢であり、PSDの代表として出馬する用意がある」と述べ、大統領選出馬に意欲を示した。(28日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)先週、放送されたCidadania党のCMは、100%生成AIにより制作されたものであった。これは、伯の国政史上、初めてのことである。これにより、生成AIを政治に利用することの是非やAIの規制に関する議論が活発化していている。(3月29日付コレイオ・ブラジリエンセ)


5.外交

(1)ルーラ大統領は27日、東京での記者会見の際、「我々には、(米国の関税措置に関して)二つの選択肢がある。一つは、WTOに訴えることであり、もう一つは、米国製品に対する追加関税である。これは相互主義の原則に基づいている。彼ら(米国)が自分達だけが正しくて、彼らだけが関税をかけることができると考えているのを我々は黙って見ているわけにはいかない」と述べた。(28日付コレイオ・ブラジリエンセ

(2)ジャンジャ大統領夫人は27日、パリにおいて開催された「成長のための栄養サミット(N4G)」に伯代表として参加し、マクロン仏大統領夫人主催の昼食会に出席した。(28日付オ・エスタード・デ・サンパウロ)

(3)ファム・ミン・チン・ベトナム首相は28日、ルーラ大統領との会談において、伯産牛肉に対する市場開放を表明した。ルーラは、SNSに「素晴らしいニュースである。アルコルンブレ上院議長とモッタ下院議長が今回の訪問に同行して、我々がベトナムとの間で欲している友好の力強さを示したことが奏功した」と述べた。伯はその返礼として、ベトナムが市場経済であることを認めた。日本の石破首相は、伯産牛肉の市場開放に向けて調査団を伯に派遣すると述べたが、その時期は未定である。(3月29日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(4)ルーラ大統領は29日、ハノイにおいて記者会見を開いた際、「メルコスールとベトナムの通商協定締結は重要である。伯は、ベトナムにとって、中南米への窓口になり得るし、ベトナムは伯にとってアセアン諸国への窓口になり得る」と述べた。また、ルーラは、ベトナムがEMBRAER社製の航空機50機を購入する可能性があることを明らかにした。ベトナムを公式訪問したルーラは、同国のクオン大統領、チン首相、マン国会議長及びラーン共産党書記長と相次いで会談を行った。ベトナム訪問の最大の成果は、伯産牛肉に対する市場開放である。(3月29日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(5)シビハ・ウクライナ外相は、フォーリャ・デ・サンパウロ紙のインタビューに応じた際、「伯には深い外交の伝統があり、第三国に対して圧力をかける術を知っている。伯は、ロシアに対する影響力を持っており、停戦に向けてロシアを説得できるかもしれない」と述べた。ゼレンスキー・ウクライナ大統領がダボス会議で「伯は既にバスに乗り遅れており、(停戦)交渉のプレーヤーにはなり得ない」と発言したのとは対照的であった。(3月29日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(6)ルーラ大統領は29日、「トランプ米大統領は、ロシア及びウクライナと平和に関する話し合いを行うことを決定し、プーチン露大統領にも交渉の場を提供したが、この点に関しては、トランプは正しい方向にある。バイデン前米大統領もそうすべきであった。自分(ルーラ)は来週(今週)、ゼレンスキー・ウクライナ大統領と電話会談を行うことにしている」と述べた。また、ルーラは、戦勝80周年記念式典に出席するため、5月に訪露すると表明。(29日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(7)31日、ポータルサイト「Uol」が「連邦警察の捜査によると、伯情報庁(ABIN)の職員は、イタイプー水力発電所の電気料金を巡る伯とパラグアイの交渉に関して機密情報を入手するため、パラグアイ議会及び大統領府のコンピュータにハッキングをかけた」と報道。これにより、両国の関係がここ数年で最悪の状況を迎えた。ヴィエイラ外相は、レスカノ・パラグアイ外相と連絡を取り、「ルーラ政権は、本件には一切関与していない」と弁明した。また、伯外務省は、「ルーラ政権は、パラグアイに対する諜報活動には一切関わっていない。ハッキングは、ボルソナーロ政権下の2022年6月に許可され、ルーラ政権発足後の2023年3月に中止された」との声明を発表した。(4月1日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)

 

1.ルーラ政権

Genial/Quaest社が3月27日から31日にかけて2004人を対象に実施した世論調査によると、ルーラ政権の支持率は41%(本年1月比6ポイント減)で、不支持率は過去最高の56%(7ポイント増)を記録した。北東部、女性、低所得層、カトリック信者等、従来のルーラの支持層の間でも政府支持率の低下が止まらない状況が続いている。ルーラは、政府広報庁長官を交代させ、政府広報に力を入れているが、その効果は全く現れていない。今後も支持率の低下に歯止めがかからなければ、ルーラの再選は覚束なくなる。ルーラ政権に対する評価は、「ポジティブ」27%(4ポイント減)、「普通」29%(1ポイント増)、「ネガティブ」41%(4ポイント増)。過去のルーラ政権との比較では、「今の方が悪い」53%、「今の方が良い」20%、「変わらない」23%。ボルソナーロ政権との比較では、「ボルソナーロ政権の方が良かった」43%、「ルーラ政権の方が良い」39%、「どちらも同じ」15%で、初めて「ボルソナーロ政権の方が良かった」が「ルーラ政権の方が良い」を上回った。「伯は誤った方向に向かっている」と答えたのは56%で、「正しい方向に向かっている」の36%を上回った。「この1年間で経済は悪化した」と答えたのは56%(1月比17ポイント増)、「良くなった」は16%(9ポイント減)、「変わらない」は26%(6ポイント減)であった。回答者の88%が「食品の高騰が続いている」と答え、70%が「燃料が高騰している」と答えた。伯国民が今、最も深刻な問題として挙げているのは、治安29%(前回比3ポイント増)、社会問題23%(±0)、経済19%(2ポイント減)であった。尚、政府関係者は、今回の調査結果に衝撃を受けている。(2日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

2.次期大統領選

Genial/Quaest社の世論調査によると、現時点で大統領選の決選投票が行われた場合、何れの場合でもルーラ大統領が勝つとの結果が出ている。ルーラ(PT)44%対ボルソナーロ前大統領(PL)40%、ルーラ(PT)44%対ミシェーレ・ボルソナーロ夫人(PL)38%、ルーラ(PT)43%対フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)37%、ルーラ(PT)42%対ラチーニョ・Jr・パラナ州知事(PSD)35%、ルーラ(PT)44%対マルサル(PRTB)35%、ルーラ(PT)45%対エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員(PL)34%、ルーラ(PT)43%対ゼマ・ミナスジェライス州知事(Novo)31%、ルーラ(PT)44%対カイアド・ゴイアス州知事(União Brasil)30%。拒否率に関しては、ルーラとボルソナーロが共に55%で拮抗している。尚、「ボルソナーロ前大統領が大統領に返り咲くことを恐れている」と答えたのが44%であったのに対し、「ルーラの再選を恐れている」は41%であった。「ルーラは再選を試みるべきではない」が62%であったのに対し、「ルーラは再選立候補すべきである」は35%にとどまった。(3日付ヴァロール・エコノミコ電子版)


2.クーデター未遂

ゴネー検事総長は1日、三権襲撃に参加したことで起訴された、ボルソナーロ前大統領の甥(レオナルド・ロドリゲス・ジェズス。通称レオ・インディオ)に対する逮捕状の発付をモラエス・STF判事に求めた。レオ・インディオは、起訴後、旅券を押収されたにも拘らず、アルゼンチンに逃亡した。モラエス判事は2日、レオ・インディオに対する逮捕状を発付した。 (2日及び3日付フォーリャ・デ・サンパウロ)


3.連邦議会

(1)野党PLは1日、三権襲撃犯恩赦法案を緊急案件として取り上げることを求めたが、モッタ下院議長はこれを拒否した。これに対し、PLは、委員会における法案審議を妨害したが、下院本会議では、政府の干ばつ及び森林火災対策に関する暫定措置令(MP)の採決を阻止することができず、同MPは、賛成多数により可決された。1日夜、モッタ議長は、与野党の院内総務と恩赦法案の取り扱いに関して会議を開いた。リンジベルギ・PT下院院内総務は、「恩赦法案を緊急案件として扱うために必要なだけの議員の署名は集まっていないため、これに関する採決が行われることはない」と述べた。尚、PLは、クーデター未遂により起訴されたアレンシャンドレ・ラマージェン下院議員(PL-RJ)に関する訴訟手続の中断を求めると表明した。PLは2日、下院において、経済相互主義法案の採決を妨害しようとしたが、奏功せず、同法案は各党の合意により可決された。また、カヴァルカンテ・PL下院院内総務は、下院のサロンにおいて、三権襲撃犯の家族を呼んで記者会見を開こうとしたが、モッタ下院議長によって阻止された。これにより、ボルソナーロ派は、2日連続で敗北を被った形となった。(2日及び3日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)1日、上院において、経済相互主義法案(外国の関税措置に対し、伯政府に報復関税をかけることを認める)が賛成多数により可決された。翌2日、下院において、各党の合意による「シンボリックな投票」により、同法案は可決され、大統領の裁可に付された。2日には、トランプ米大統領が各国に対する相互関税を発表した。伯に対する相互関税は10%であった。(2日及び3日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(3)2日、下院倫理委員会において、パウロ・マガリャンエス下院議員(PSD-BA)がグラウベル・ブラガ下院議員(PSol-RJ)の議員資格剥奪を主張した。グラウベル・ブラガ議員は昨年4月、下院の施設内で政治団体「MBL(伯自由運動)」のメンバーと口論の末、このメンバーを暴力を振るって追い出したことが問題視されている。(3日付コレイオ・ブラジリエンセ)


4.司法

トフォリ・STF判事は、アントニオ・パロッシ(第1次ルーラ政権では財務相、第1次ルセーフ政権では文官長を務めた)の不正疑惑に関するラヴァ・ジャット捜査は無効であるとして、パロッシの無罪を決定した。これに対して連邦検察庁が控訴し、STF第2小法廷において控訴審が開かれた。1日、トフォリ及びメンデス両判事が捜査の無効を支持したところで、ファキン判事が「他の捜査対象者に関する捜査が無効になったからといって、パロッシに関する捜査も自動的に無効とするのには無理がある」と、反対を唱えたところで休廷となった。(2日付フォーリャ・デ・サンパウロ)


5.外交

(1)パラグアイ政府は1日、伯情報庁(ABIN)が同国議会及び大統領府のコンピュータにハッキングを仕掛けたとの報道に関して伯に対する態度を硬化させた。同国のレスカノ外相は、「ハッキングは国際法違反であり、内政干渉である」として、マルコンデス在パラグアイ伯大使を外務省に呼び出し、説明を求めるとともに、デルガジージョ在伯パラグアイを本国に呼び戻した。また、イタイプー水力発電所の電気料金に関する交渉は中断されることとなった。伯側は、「ハッキングは、ボルソナーロ政権により始められたもので、ルーラ政権の発足とともに中止された」と説明したが、パラグアイはこれを拒否している。(2日付コレイオ・ブラジリエンセ

(2)ルーラ大統領は3日、トランプ米大統領が伯に対する10%の相互関税を発表した件に関し、「我国の企業と労働者を守るため、取りうべき全ての措置をとる。我々は、保護主義を押し付けようとする試みには対抗措置をとる。連邦議会では、経済相互主義法案が可決された。我々は相互主義を求めており、国家主権については譲歩せず、他国の国旗に対して敬礼するようなことはしない」と述べた。この発言は、ルーラ政権のこれまでの成果を強調するためのイベントにおいて行われた。一方、ボルソナーロ前大統領は、トランプ米大統領の相互関税措置を支持すると表明し、「米国との関税戦争は伯にとって得策ではない。米国の相互関税に対して取りうべき唯一の方策は、ルーラ政権が社会主義的なメンタリティーを捨てて、米国に対する関税を撤廃し、伯国民が安く米製品を買えるようにすることである。トランプがやっていることは、社会主義のウイルスから米国を守ることに過ぎない」と批判し、トランプを擁護した。(3日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

 

1.ルーラ政権

(1)ルーラ大統領は3日、ブラジリアのコンベンションセンターで開かれた、ルーラ政権の業績をアピールするためのイベントに出席した際、「(ルーラ政権が発足した際)伯は荒れ果てていた。我々は、僅か2年で立て直すことに成功した。伯は正しい方向に向かっている。所得を生み出し、生活向上の機会を与え、困窮者を中心に国民全員の面倒を見ている。我々が作ろうとしている国はそのような国であり、それが未来の伯である」と強調した。ルーラは、これまでの成果として、昨年の経済成長率が3.4%に達したこと、失業率が過去12年間で最も低い6.2%を記録したこと、ボルサ・ファミリアや中等教育支援プログラム(Pé-de-Meia)等、福祉政策の拡充を挙げた。また、新しい施策として、住宅供給プログラム(Minha Casa Minha Vida)拡充のためにプレサルト社会基金から180億レアルを拠出することや年金受給者に対する13ヶ月分の支給前倒し(11月と12月の支給を4月と5月に前倒しする)を発表し、「Minha Casa Minha Vidaの対象を中間所得層にも広げる。『安全な携帯電話(Celular Seguro)』プログラムをアップデートすることにより、携帯電話の盗難に対処する。テレビの地上放送とインターネットを融合させたTV3.0が近々導入される」と発表した。政府関係者は、政府支持率の低下に歯止めがかからないことに危機感を募らせており、政府広報に力を入れることで、これまでの成果を喧伝しているが、効果は現れていない。パルメイラ政府広報庁長官は、イベント終了後の記者会見において、「政府支持率の低下について自分に責任がないとは言わないが、責任は全ての閣僚にある。今回のイベントは、政府が提供しているサービスについて国民に広く周知させ、これらを活用してもらうことが目的であり、選挙目的ではない」と述べた。(4日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)ルーラ大統領は4日、マットグロッソ州シングー国立公園内の先住民保護区に赴き、先住民のラオニ代表に国家功労大十字勲章を授与した。ラオニ代表は、先住民の権利保護及び環境保全を訴える活動家として世界的に知られている。同代表は、ルーラ大統領を称賛しつつも、「先住民は、ルーラ3期目の最初の2年間に失望している。アマゾン川河口の海底油田は開発すべきではない」と批判した。(5日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)ダタフォーリャ社が4月1日から3日にかけて3054人を対象に実施したルーラ政権の評価に関する世論調査によると、「非常に良い/良い」が前回(本年2月)の24%から29%に上昇し、「悪い/非常に悪い」が41%から38%に低下し、支持率の低下に歯止めがかかった形となったが、それでも未だに不支持が支持を上回っており、今回の調査結果は、ルーラ3期目では2番目に悪い数字となっている。「普通」は32%で、前回と変わらず。地域別では、北東部において「非常に良い/良い」が38%に上昇したが、「非常に良い/良い」が「悪い/非常に悪い」を上回っているのは北東部だけである。ルーラ大統領の支持率は48%、不支持率は49%。今回の調査結果では、ルーラの支持率低下が底を打ったように見受けられるものの、今後は回復に向かうとまでは言い切れず、今後の調査結果を見極める必要がある。因みに、2005年12月(第1次ルーラ政権)の世論調査では、ルーラ政権を「非常に良い/良い」と評価した割合は、28%であり、今回の調査結果とほぼ同じである。当時は、メンサロン事件の影響で、ルーラの再選が危ぶまれていたが、翌2006年の大統領選ではルーラが再選を果たした。(5日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(4)連邦検察庁は8日、ジュセリーノ・フィーリョ通信相(União Brasil)を収賄等の容疑で起訴した。捜査当局によると、ジュセリーノ・フィーリョは、通信相に就任する前、下院議員として、親族が市長を務める市の公共事業に「議員割当金(emenda parlamentar)」を供与し、その見返りとして賄賂を受け取っていた。また、報道によると、ジュセリーノ・フィーリョは、自身及び親族が所有する農場の前を通る道路の舗装事業に議員割当金から500万レアルを充てていた。政府関係者は、ジュセリーノ・フィーリョに対して辞任を迫っている。ルーラ大統領は、ジュセリーノ・フィーリョが立件された昨年6月の時点で、「起訴されたら更迭する」と公言していた。(8日付Uol)

(5)連邦政府は7日、インフルエンザワクチンの接種キャンペーンを開始した。保健省は、同キャンペーンのために7360万回分のワクチン(13億レアル相当)を購入した。ミナスジェライス州モンテス・クラーロス市で行われたイベント(デンマークの製薬会社「Novo Nordisk」社の工場拡張の発表式)では、ルーラ大統領とアルキミン副大統領がインフルエンザワクチンの接種を受けた。(8日付コレイオ・ブラジリエンセ)


2.次期大統領選

(1)アルキミン副大統領は3日、Genial/Quaest社の次期大統領選に関する世論調査(決選投票では、ルーラ大統領がボルソナーロ前大統領等、全ての右派候補に勝つ)に関し、「現時点で選挙が行われれば、最有力候補はルーラである。(政府支持率の急落は)インフレが原因であるが、まだ任期の途中であるし、我々はインフレの解消に向けて努力している」と述べた。自身が再びルーラの副大統領候補になる可能性については「副大統領候補というものは乞われてなるものである。前回の選挙では自分が招かれて、非常に光栄に思った」と答えるにとどめた。(3日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

(2)カイアド・ゴイアス州知事(União Brasil)は4日、次期大統領選出馬を表明した。同知事は、「ルーラ政権には政府としてのプランがない。インフレが上昇している時に金利を14.25%に引き上げるのは無能の証であり、地方自治体に責任を押し付けている。ルーラには大統領は務まらない」と批判し、ボルソナーロ前大統領についても名指しすることなく批判した。尚、ルエダ党首やアルコルンブレ上院議長等、União Brasilの大物は今回の出馬表明式に欠席しており、同党の主流派は同知事の出馬を支持していないと見られている。また、同知事は、ゴイアス選挙地方裁判所から8年間の被選挙権停止を言い渡されており、この決定を覆さなければ、明年の選挙に出ることはできない。(5日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)ダタフォーリャ社が4月1日から3日にかけて3054人を対象に実施した大統領選に関する世論調査の主な結果は以下の通り。

●第1回投票:(ボルソナーロ派の候補がフレイタス・サンパウロ州知事である場合:ルーラ(PT)35%、フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)15%、シロ・ゴメス(PDT)11%、パブロ・マルサル(PRTB)11%、ラチーニョ・Jr・パラナ州知事(PSD)5%、レイチ・リオグランデ・ド・スル州知事(PSDB)3%、ゼマ・ミナスジェライス州知事(Novo)3%、カイアド・ゴイアス州知事(União Brasil)2%、白票/無効票/誰にも投票しない11%、分からない3%。(ボルソナーロ前大統領が出馬する場合)ルーラ(PT)36%、ボルソナーロ(PL)30%、シロ・ゴメス(PDT)12%、パブロ・マルサル(PRTB)7%、レイチ・リオグランデ・ド・スル州知事(PSDB)5%、白票/無効票/誰にも投票しない9%、分からない2%。

●決選投票:ルーラ(PT)48%対フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)39%、ルーラ(PT)50%対ミシェーレ・ボルソナーロ前大統領夫人(PL)38%、ルーラ(PT)51%対エドゥアルド・ボルソナーロ下院議員(PL)34%、アダッジ財務相(PT)43%対フレイタス知事(Republicanos)37%、アダッジ財務相(PT)45%対ボルソナーロ前大統領(PL)41%、ルーラ(PT)49%対ボルソナーロ前大統領(PL)40%。

 尚、「ボルソナーロ前大統領は大統領選に出馬すべきではない」と答えたのは全体の67%に上り、「出馬すべき」は28%にとどまった。(6日付フォーリャ・デ・サンパウロ)


3.クーデター未遂

(1)4日、STF第1小法廷において、クーデター未遂で起訴された34名の内、第2グループを構成する6名(フェルナンデス元大統領府官房副長官、ヴァスケス元連邦道路警察長官、フェリペ・マルチンス元大統領補佐官等)に対する起訴状の受理に関する審理を今月29日から22日に前倒しした。(5日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)6日にサンパウロ市パウリスタ大通りで開かれた三権襲撃犯恩赦要求デモには約4.5万人(サンパウロ大学による調査。ダタフォーリャ社によると約5.5万人)が参加した。デモ隊の槍玉に上がったのは、三権襲撃犯恩赦法案の採決に応じようとしないモッタ下院議長(Republicanos-PB)であった。コルテス下院副議長(PL-RJ)や主催者のマラファイア師(福音派)等は、モッタ議長を批判し、同法案の即時成立を求めた。ボルソナーロ前大統領は、連邦最高裁判所(STF)前の彫像に口紅でいたずら書きをして有罪になった女性(禁固14年の有罪判決を言い渡された後、現在は自宅軟禁中)の母親と共に登壇し、「何の罪も犯していない2児の母親がこれほどまでに厳しい刑に処されたことに関しては形容する言葉がない。(2023年)1月8日に起きたことをクーデター未遂などと考えるのはサイコパスだけである。恩赦法案に関しては、政府与党は既に敗北している」と批判した。ミシェーレ夫人は、「全ての女性は口紅を手に立ち上がるべきである」と呼びかけた。今回のデモには、サンパウロ、ミナスジェライス、パラナ、ゴイアス、サンタカタリーナ、マットグロッソ及びアマゾナスの州知事7名が参加した。尚、議会関係者の間では、モッタ下院議長に圧力をかけても無駄であり、かえって逆効果になる可能性があると見られている。モッタ議長は7日、「恩赦法案には真剣に向き合うべきだとは思うが、伯には他にも優先すべき案件が山積している。但し、三権襲撃犯の刑罰で行き過ぎと思われるものについては見直されるべきだと思う」と述べ、恩赦法案の早期成立には否定的な意見を述べた。(7日及び8日付フォーリャ・デ・サンパウロ及びコレイオ・ブラジリエンセ)

(3)Genial/Quaest社は6日、「伯国民の56%は三権襲撃犯の恩赦に反対している」との世論調査結果を発表した。これによると、「恩赦には反対。襲撃犯は、もっと長期間に亘って服役すべき」と答えたのが56%であったのに対し、「恩赦に賛成。襲撃犯は無罪であり、即釈放すべき」は18%、「もう十分罪は償ったので、釈放すべき」は16%、「分からない/無回答」は10%であった。ボルソナーロ前大統領の支持者の間でも、襲撃犯の釈放を支持しているのは61%にとどまった。また、ボルソナーロ等に対する起訴状を受理したSTF第1小法廷の決定を支持すると答えたのは全体の52%に達し、反対は36%であった。(7日付オ・エスタード・デ・サンパウロ)

(4)ダタフォーリャ社の世論調査によると、三権襲撃犯恩赦法案に「反対」と答えたのは全体の56%(昨年12月比6ポイント減)で、「賛成」は37%(4ポイント増)、「分からない」6%(1ポイント増)、「どちらでもない」は2%(1ポイント増)であった。これまで三権襲撃犯に科された刑罰については「減刑すべき」36%、「適切である」が34%、「もっと重い刑にすべき」が25%、「分からない」は5%であった。また、「ボルソナーロ前大統領は、クーデター未遂により逮捕されるべきである」と答えたのは52%で、「逮捕されるべきではない」の42%を上回ったが、「ボルソナーロが逮捕されることはないであろう」は52%で、「逮捕されるであろう」の41%を上回った。(8日付フォーリャ・デ・サンパウロ及びヴァロール・エコノミコ電子版)


4.連邦議会

(1)PLは、クーデター未遂により起訴されたアレンシャンドレ・ラマージェン下院議員(PL-RJ)の訴追手続の中止を申し入れ、モッタ下院議長はこれを受理した。これにより、本件は、下院憲法司法委員会(CCJ)の後、下院本会議にかけられることとなった。尚、PLは、三権襲撃恩赦法案が議題に取り上げられるまで、「責任ある審議妨害」を行うとしている。(4日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)モッタ下院議長は3日、所得税の非課税枠を月5千レアルに引き上げるとの法案の報告官にリラ前下院議長(PP-AL)が選出されたと発表した。同法案に関しては特別委員会が設置されることになり、その委員長にはルーベンス・ペレイラ・ジュニオール下院議員(PT-MA)が選出された。リンジベルギ・PT下院院内総務は、リラ前議長が報告官に選ばれたことを歓迎。モッタ議長は4日、AI規制法案(上院は昨年12月に通過)及び2024-2034年度国家教育計画法案に関する委員会の設置を決定した。(4日及び5日付コレイオ・ブラジリエンセ)


5.司法

連邦警察は3日、議員割当金(emenda parlamentar)を巡る不正疑惑に関してサルヴァドール、サンパウロ及びベロオリゾンテにおいて強制捜査「Overclean・オペレーション」を実施した。バハル・ベロオリゾンテ市教育局長が強制捜査を受けた後に更迭された他、組織の中心人物とみられる企業家が家宅捜索を受けた。捜査当局によると、バイア、トカンチンス、アマパー、リオデジャネイロ及びゴイアス各州の市役所において、架空請求等による議員割当金の横領が組織的に行われており、その被害額は14億レアルに上るとされている。これらの議員割当金を割り当てた連邦議員が不正に関与していた可能性については捜査中。尚、モッタ下院議長(Republicanos-PB)の父親が市長を務めるパライバ州パトス市役所も捜査対象となっている。(4日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)


6.外交

(1)ボルソナーロ前大統領は、トランプ米大統領が伯に対して10%の相互関税をかけた件に関して「トランプは(関税をかけることで)社会主義のウイルスと戦っている。伯は、米国製品に対する関税を撤廃すべきである」と擁護しているが、フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)等のボルソナーロ派は、本件に関して沈黙を守っている。尚、米国滞在中のエドゥアルド・ボルソナーロ下院議員(PL-SP。休職中)は、「トランプの関税は報復関税ではない。伯議会が採択した経済相互主義法案には反対である。ルーラ政権は、米国製品に対する関税を引き下げるべきである」と主張している。エドゥアルドは、ホワイトハウスや米国務省の関係者と相次いで面会し、モラエス・STF判事に対する制裁を呼び掛けている。(5日付フォーリャ・デ・サンパウロ

(2)ルーラ大統領は8日、伯建設産業会議所(Cbic)が主催した国際会議に出席した際、「トランプ米大統領の言動は注視しているが、(追加関税は)うまく行かないと思う。米国の関税措置は、多国間主義、自由貿易及びグローバル化に反している。彼(トランプ)は、世界中で起きている、あらゆることに関するルールを一人で決められると思い込んでおり、世界は騒然としている。伯は、バランスの取れたポジションを維持し、我々の現実に即した決定を下さなければならない」と述べた。(8日付ヴァロール・エコノミコ電子版)

 

1.ルーラ政権

(1)ルーラ大統領は8日、ジュセリーノ・フィーリョ通信相(União Brasil)と電話会談した際、同通信相が収賄の容疑で起訴されたことに触れ、「大臣を辞めて裁判に専念したらどうか」と述べ、辞任を促した。これに対し、ジュセリーノ・フィーリョは、辞意を表明した。その後、ジュセリーノ・フィーリョは、「国民と政府に対するリスペクトから辞任を決意した。起訴状には根拠がなく、自分は無実である。裁判所の判断を信じる」との声明を発表した。後任の通信相にはペドロ・ルーカス・フェルナンデス下院議員(União Brasil下院院内総務)が有力視されている。(9日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)レヴァンドフスキ法務治安相とホフマン大統領府政治調整庁長官は8日、モッタ下院議長と各党下院院内総務に対し、治安対策に関する憲法改正案(PEC)を提示した。政府は来週、同PECを議会に提出する予定。具体的な内容としては、連邦、州及び市の治安機関が連携して組織犯罪の摘発を行うこと等が盛り込まれている。モッタ下院議長は、「組織犯罪は伯全国に蔓延しており、伯は、例えるならば、がんの転移が進んだ重症患者である」と述べ、同PECの迅速な審議に意欲を示した。但し、野党は一部の自治体は、「連邦警察の権限が強化されることで、連邦政府が地方の治安対策に介入するようになる」として、難色を示している。(9日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)ルーラ大統領は、10日にホンジュラスから帰国してからジュセリーノ・フィーリョ通信相(União Brasil)の後任人事についてUnião Brasilと協議する予定。大統領府では、ペドロ・ルーカス下院議員(União Brasil-MA)が任命されるのはほぼ確実と見られている。同議員は、ルーラの訪日に同行しており、その際、ルーラと知り合った。また、ディーノ連邦最高裁判所(STF)判事(元マラニョン州知事)とは近い関係にある。(10日付コレイオ・ブラジリエンセ)


2.次期大統領選

ゴイアス選挙地方裁判所(TRE。第2審)は8日、カイアド・ゴイアス州知事(União Brasil)とマベル・ゴイアニア市長(União Brasil)が昨年のゴイアニア市長選で選挙違反を犯したことは認めたものの、両者に8年間の被選挙権停止を言い渡した第1審の判決を覆し、被選挙権停止ではなく、罰金を科すことを全会一致で決定した。これで同知事は明年の大統領選に出馬できることになったが、まだ、選挙高等裁判所(TSE)において控訴が行われる可能性がある。(9日付フォーリャ・デ・サンパウロ)


3.連邦議会

(1)ギマランエス・PT下院院内総務は9日、政府が早期成立を目指している重要法案として、①所得税非課税枠引き上げ(月5千レアル)法案、②正規雇用者を対象とする新たな貸付制度(crédito consignado)、③FGTS(勤続年限補償基金)の引き出し、④コンセッション方式による民間委託に関する法改正、⑤2024-2034年度国家教育計画法、⑥アルディール・ブランク文化事業支援法の改正、⑦AI規制法、⑧循環式経済促進法、⑨連邦政府職員キャリア改正法、➉治安対策に関する憲法改正を挙げた。ギマランエスによると、この中で最も優先されるべき法案は①である。ダタフォーリャ社の世論調査によると、国民の70%が所得税の非課税枠を月5千レアルに引き上げることを支持している(反対派26%)。また、それに伴う減収を補填するため、月収5万レアル以上の富裕層から「最低限税(imposto mínimo)」を徴収するとの案については76%が賛成している(反対は20%)。(9日付コレイオ・ブラジリエンセ及び10日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)モッタ下院議長は9日、連邦最高裁判所(STF)や司法高等裁判所(STJ)の要望に応じて、連邦裁判官及び職員の増員等に関する法案の審議を優先的に進めることを決定した。これは、同議長が、司法府との衝突や摩擦は望んでいないことを示しており、同議長が野党PLの圧力に屈して、三権襲撃犯恩赦法案の審議を行うことはなさそうである。(9日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)野党代表のルシアーノ・ズッコ下院議員(PL-RS)は8日、野党による審議妨害は中止すると発表した。野党は、三権襲撃犯恩赦法案の採決が行われるまで審議を妨害するとしていたが、これを中止したことにより、モッタ下院議長に歩み寄った形となった。尚、オ・エスタード・デ・サンパウロ紙の調査によれば、恩赦法案を支持している下院議員の数は200名に達している。賛成が下院の過半数に達するまであと57名である。(9日付オ・エスタード・デ・サンパウロ)

(4)9日、下院倫理委員会において、賛成13、反対5により、グラウベル・ブラガ下院議員(PSol-RJ)の議員資格剥奪が可決された。同議員は、政治団体「MBL(ブラジル自由運動)」のメンバーを暴行した件で倫理委員会にかけられていた。同議員は、倫理委員会の決定に抗議するため、ハンストを行うと表明。尚、同議員が議席を失うためには、下院の過半数(257名)による承認が必要(下院本会議における採決は未定)。(10日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(5)9日、上院において、電力、電話、インターネット等、銅線ケーブルの窃盗の厳罰化に関する法案が可決された。これは現在の禁固1年~4年及び罰金から2年~8年及び罰金に厳罰化するものである。盗まれたケーブルを買い取った業者も同罪となる。同法案は、上院で修正を受けたため、再び下院に戻される。また、上院憲法司法委員会(CCJ)では、常習的な税金滞納者の扱いに関する法案が可決された。(9日付ヴァロール・エコノミコ電子版)


4.司法

連邦検察庁と連邦警察は、連邦総弁護庁(AGU)の求めにより、ボルソナーロ派のジルヴァン・ダ・フェデラル下院議員(PL-ES)を犯罪教唆と脅迫の容疑で捜査することになった。同議員は8日、下院治安対策委員会において、「自分が最も望んでいるのはルーラの死である。奴をこの手で殺すとまでは言わないが、とにかく、奴が死んで地獄に落ちることを切望している」と発言した。その際、同委員会では、大統領及び閣僚の警護官の非武装化に関する法案について審議が行われていた。(10日付コレイオ・ブラジリエンセ)

5.外交

(1)ルーラ政権は、今月10日から米国、カナダ及び豪の旅行者に対して再び入国査証を求めることにしている。この措置は、昨年1月に導入されるはずであったが本年4月に延期された。2019年3月に当時のボルソナーロ政権が上記3ヵ国と日本に対して一方的に入国査証の免除を認めたが、ルーラ政権は、相互主義を理由に同措置を打ち切ることにした。日本とは、2023年9月に相互免除協定が締結されたので、査証は免除されたままとなる。(9日付フォーリャ・デ・サンパウロ

(2)ルーラ大統領は9日、ホンジュラスで開催されたラ米・カリブ海諸国首脳会議(Celac)に出席した際、「関税は、世界経済を不安定化させ、物価の高騰を招く。貿易戦争に勝者がいないことは歴史が証明している。ラ米及びカリブ海諸国が分断されたままなら、再び超大国に従属することになる」と述べた。但し、米国を名指しで批判したメキシコ、コロンビア、キューバ、ボリビア及びホンジュラスの首脳よりは控え目なスピーチであった。ルーラは、シェインバウム・メキシコ大統領とバイ会談を行い、二国間貿易等について意見交換を行った。ホスト役のカストロ・ホンジュラス大統領との会談は行われなかった。また、ルーラは、記者団に対し、「(米国の関税措置については)WTOに訴えるか、相互主義を発動するかの何れかである。それは尊厳と主権を持った国家に最低限求められることである。我々は、言葉を尽くして交渉する」と述べ、外交による解決を優先させることを示唆した。(10日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

 

1.ルーラ政権

(1)ルーラ大統領は10日、アルコルンブレ上院議長、ジュセリーノ・フィーリョ前通信相及びペドロ・ルーカス下院議員(ルーラ以外はUnião Brasil所属)と会議を行った後、ペドロ・ルーカスを後任の通信相に任命すると発表した。ホフマン大統領府政治調整庁長官は、「União Brasilは、ジュセリーノ・フィーリョの後任にペドロ・ルーカスを指名し、大統領はそれを受け入れた」と述べた。ペドロ・ルーカスは、「個人的な問題を解決してから大臣に就任したい」として、イースター休み(今月18日)明けに就任することを明らかにした。それまではメンデス通信次官が大臣代行を務める。ペドロ・ルーカスは、マラニョン州の政治家一家に生まれ、サルネイ元大統領(MDB)の一族とも親交のある有力者一族の出身である。União Brasilは、政府支持派と反政府派に分かれているが、ペドロ・ルーカスは前者に属している。(11日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)アルコルンブレ上院議長(União Brasil)は先週、União Brasilの関係者やホフマン大統領府政治調整庁長官等との昼食会に出席した際、シルヴェイラ鉱山エネルギー相(PSD)は汚職に関与している等と激しく批判した。同議長は以前からシルヴェイラを批判しており、その更迭を目論んでいるのではないかと見られている。アルコルンブレとシルヴェイラは、ルーラ訪日に同行したが、両者が言葉を交わすことはなかったとされている。(12日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)ルーラ大統領は8日、ゲオルギエバ・IMF専務理事のことを「どうでもいい女性(uma mulherzinha)」と呼んだことで批判を受けている。ルーラは、建設業界のイベントに出席した際、「広島のG7サミットに出席した時、IMFのどうでもいい女性と会った。彼女は自分(ルーラ)のことを知らなかった。彼女は、伯経済は苦境にあり、今年(2023年)の経済成長率は0.8%にとどまるであろうと言った。そこで自分は、あなたは私のことも知らないのに、何故、そのようなことが言えるのかと言ってやった。案の定、伯は年3%以上の成長を遂げた」と述べた。これに対し、ボルソナーロ派は「女性蔑視である。フェミニスト達はどこへ行った」と批判している。(12日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(4)ルーラ大統領は12日、経済相互主義法を裁可した。拒否権は行使しなかった。これにより、経済相互主義法は、今月14日付の官報に掲載された後、発効する。尚、アルキミン副大統領は、「米国の関税措置については、対話と交渉による解決を模索しているところであり、現時点においては、経済相互主義法を発動させるつもりはない」と述べている。(13日付コレイオ・ブラジリエンセ)


2.クーデター未遂及びボルソナーロ前大統領の健康問題

11日、連邦最高裁判所(STF)では、ボルソナーロ前大統領等、クーデター未遂の首謀者と見られる8名の起訴状の受理に関する決定が告示された。これにより、本件に関する刑事訴訟手が開始され、送達が行われた後、被告8名は、5日以内に予備的な答弁書を提出しなければならない。尚、ボルソナーロ前大統領は11日、訪問先のリオグランデ・ド・ノルテ州で腹痛を訴え、病院に搬送された。ボルソナーロは12日、ブラジリア市内の私立病院「Star DF」に移送された。検査の結果、腸閉塞が悪化していたことが判明。2018年に刃物で腹部を刺されたことの後遺症と見られている。ボルソナーロは13日、腸の詰まりを改善し、腸壁を修復するための手術を受けた。手術は複雑で、12時間に亘ったが(これまで受けた5回の手術の中では最長)、医師団は、「手術は成功した。容体は安定している」と発表した。病院の前には支持者が集まり、3時間ごとに祈りを捧げていた。医師団は14日、「ボルソナーロは順調に回復しているものの、術後の48時間は非常にデリケートで注意を要するため、集中治療室での治療を続ける必要がある。回復は長期間に亘ることが予想されるため、退院の目途は立っていない」と発表した。(12日~15日付コレイオ・ブラジリエンセ)


3.連邦議会

(1)10日、先住民の一団が連邦議会前で抗議活動を行ったが、催涙ガス等を使用した議会警備隊によって鎮圧された。先住民出身のセーリア・シャリアバー下院議員(PSol-MG)は、「伯にはまだ制度的な人種差別が存在し、国家機関が先住民を暴力で抑圧していることが証明された」と抗議したが、議会側は、「先住民が防衛ラインを突破して、議会内に突入するのを阻止しただけ」と弁明している。先住民は、今月7日から11日にかけて、先住民保護区の画定等を要求するための運動「Acampamento Terra Livre(ATL)」をブラジリア市内において実施している。ATLは毎年、行われており、本年は従来の要求に加えて、COP30において先住民に発言権が与えられることを求めている(11日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)カヴァルカンテ・PL下院院内総務は14日、下院の過半数(257名)を超える262名の賛同を得たとして、三権襲撃犯恩赦法案の緊急審議動議を提出した。262名の内、半分以上の174名は、União Brasil、PP、PSD、Republicanos、MDB等、連立与党を構成する中道派(セントラン)の所属議員である。尚、ホフマン大統領府政治調整庁長官(PT)が「三権襲撃犯の一部については、議会において、恩赦乃至減刑について議論してもいいのではないか」と発言したところ、連邦最高裁判所(STF)の反発に遭ったため、「襲撃犯の量刑は、STFの専権事項である。自分は恩赦法案には反対である」と発言を撤回した。(12日及び15日付コレイオ・ブラジリエンセ)


4.司法

10日、連邦最高裁判所(STF)では、三権襲撃犯17名の刑事裁判が開かれた。ディーノ、ザニン及びトフォリの判事4名は、有罪を主張するモラエス判事(但し、「これら17名の犯行は軽微である」として、禁固1年、社会奉仕、民主主義及び法治国家に関する講習受講、罰金、SNS使用禁止等の権利制限等、比較的軽い刑に処する)を支持したが、メンドンサ及びヌネス・マルケス両判事は、「三権襲撃に居合わせていた者が全員、襲撃に賛成していたわけではなく、これら17名が積極的に襲撃に加わっていたのか否かを証明することはできない」として、無罪を主張したところで休廷となった。11日、審理が再開され、メンドンサ及びヌネス・マルケス両判事を除く判事8名が有罪を支持したことで、17名の有罪が決定された。量刑に関しては、モラエス判事は、17名中、16名には禁固1年、残りの一人は禁固2年5ヶ月に処すことを主張。(12日付コレイオ・ブラジリエンセ)


5.外交

(1)ルーラ大統領は、今月に入ってから2回に亘ってゼレンスキー・ウクライナ大統領に電話会談を求めたが、何れも断られていたことが判明。ルーラは、ロシアとウクライナの和平交渉について話したいとしていたが、ゼレンスキーは、ルーラが先月29日に訪問先のハノイで「ゼレンスキーは終戦について協議するのを望んでいない」と述べたことに激高しており、また、ルーラがロシアの招待により、戦勝記念式典に出席するため、訪露することも不満としている。ルーラとゼレンスキーが話し合ったのは、1年7ヶ月前にニューヨークで国連総会前に会談したのが最後である。(15日付コレイオ・ブラジリエンセ

(2)ルーラ大統領は14日、「ノボア・エクアドル大統領の再選に関し、同大統領とエクアドル国民を祝福する。伯は、エクアドルと共に、多国間主義、南米統合及びアマゾンの持続可能な開発に取り組み続ける」との声明を発表した。伯、米、チリ、アルゼンチン、パラグアイ、グアテマラ等は、ノボアの再選を認めたが、ベネズエラは「不正選挙であった」として、ノボアの当選を認めていない。(15日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

 

1.ルーラ政権

(1)政府(FGTS(勤続年限保障基金)運営審議会)は15日、月収8千~1.2万レアルの中間所得層を住宅供給プログラム(Minha Casa Minha Vida)の対象に加えることを決定した。これにより、月収8千~1.2万レアルの所得層(第4層)は、住宅購入のために最大50万レアルの融資を年10.5%の金利で受けられるようになった。政府は、そのための資金として、プレサルト社会基金から150億レアルを同プログラムに投入する。(16日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)政府は15日、2026年度連邦予算編成方針法案(PLDO)を連邦議会に提出した。これによると、明年度の財政収支は343億レアルの黒字(GDPの0.25%に相当)になると予想されている。明年のインフレ(INPC)は4.76%と予想されており、最低賃金は、本年の1518レアルから1630レアルに引き上げられる(インフレ+2.5%の実質的な賃上げ)。(16日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)シルヴェイラ鉱山エネルギー相は、6千万人の低所得層に対する電気料金の無料化、電力市場の自由化等からなる電力部門改革案を近々、大統領府に提出する予定。この内、電力料金の無料化については、アダッジ財務相が反対しており、公の場において両者が口論になったこともある。(17日付フォーリャ・デ・サンパウロ)


2.クーデター未遂及びボルソナーロ前大統領の健康問題

(1)ボルソナーロ前大統領は15日、歩行器を使用し、医師や看護師の助けを借りて病院内の廊下を歩行する動画を公開した。医師団によると、「痛みや出血はなく、安定した容体が続いている」とのことではあるが、退院の目途は立っていない。(16日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)伯政府は、クーデター未遂及び民主的法治国家転覆罪の容疑で最高裁から逮捕状が出される前にスペインに逃亡したボルソナーロ派のインフルエンサー(オズヴァルド・エウスターキオ)の引き渡しを求めたが、スペインの裁判所は、「伯の引き渡し要請は政治的な理由によるものである」として、引き渡しを拒否した。モラエス・STF判事は15日、スペイン政府の犯罪人引渡要請(麻薬密売によりスペインで有罪判決を言い渡されたブルガリア人)を相互主義に基づいて手続の停止を決定した。一方、伯政府は、「エウスターキオは、単なる批判者ではなく、クーデターを煽り、民主主義を攻撃した」として、控訴することにしている。これに対し、野党は、「モラエス判事は、単なる意見表明と麻薬の密売を同等に扱っている。密売人を保護しても何の得にもならない」等と批判している。(17日付フォーリャ・デ・サンパウロ)


3.連邦議会

モッタ下院議長は15日、PLが三権襲撃犯恩赦法案の緊急審議動議を提出し、同議長に同法案の採決を迫っている件に関し、「民主主義では、一人で決められる権利は誰にもない。下院の議題は、各党の院内総務と協議した上で決められる。国民生活に影響を与える重要法案の審議を慎重に扱うことに関しては議長に責任がある」と表明した。ホフマン大統領府政治調整庁長官(PT)は、MDB、PSD、PP、Republicanos、União Brasil等、政府の支持基盤を構成する政党に所属する多くの議員が恩赦法案を支持していることは「馬鹿げている」と批判したが、政府がこれらの議員に対して何らかの報復を行う可能性は否定した。(16日付コレイオ・ブラジリエンセ)


4.司法

英エコノミスト誌は16日、「モラエス・STF判事は余りにも大きな権限を持っており、STFは、これを緩和しなければ、伯国民の信頼を失うであろう。STFが非中立のイメージを払拭するためには、ボルソナーロ前大統領の裁判をSTF第1小法廷ではなく、大法廷で行うべきである」との記事を掲載した。(16日付コレイオ・ブラジリエンセ電子版)


5.外交

15日、ウマラ元ペルー大統領夫人が在リマ伯大使館に駆け込み、政治亡命を求めた。同夫人は、夫のウマラ元ペルー大統領と共にOdebrecht社(伯の大手建設会社)の汚職事件に関与したとされており、資金洗浄の容疑で禁固15年の有罪判決を言い渡されていた。ウマラ元大統領は、既に身柄を拘束されており、刑務所に収監される予定。伯政府は16日、ウマラ夫人の亡命を受け入れた、同夫人はその日の内にサンパウロに到着後、連邦政府の車両で移動した。(16日付コレイオ・ブラジリエンセ及び17日付フォーリャ・デ・サンパウロ

 

1.ルーラ政権

(1)ルーラ大統領は17日、「国家犬・猫繁殖管理プログラム(ProPatinhas)」の実施に関する大統領令に署名した。これは、ペットの登録制度を導入するとともに、地域犬及び地域猫の予防接種、去勢、マイクロチップの埋め込みを実施するというものである。(18日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)伯政府がウマラ元ペルー大統領夫人の亡命を受け入れた件に関し、野党は、ヴィエイラ外相を議会に招集して説明を求めるとともに、伯政府が同夫人のために空軍機を派遣したことの違法性について連邦会計検査院(TCU)に問い合わせている。野党は、「政府は、三権襲撃犯に対しては厳罰を求めているのに、同じ左派のウマラ夫人の汚職には寛大である」と攻勢を強めている。ヴィエイラ外相は18日、「人道上の理由により、ウマラ夫人とその子息の亡命を受け入れた。本件について議会で説明を行う用意がある」と述べ、本件がペルーとの外交問題に発展する可能性は否定した。ボルソナーロ前大統領は19日、伯がウマラ夫人の亡命を受け入れ、モラエス・STF判事が相互主義を理由にスペインの犯罪引き渡し要請を拒否した件に関し、「伯の対外イメージは、ルーラ大統領とモラエス判事によって滅茶苦茶にされている」と批判した。これに対し、ホフマン大統領府政治調整庁長官は、「ボルソナーロは、(クーデター未遂という)深刻な罪状で裁判にかけられることになって、追い詰められており、外務省とSTFが採用している相互主義と亡命に関するルールを悪用して世論を誘導しようとしている」と反論した。(18日~20日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)コヘーア伯情報庁(ABIN)長官は17日、連邦警察の事情聴取を受けた。ボルソナーロ政権下において、ボルソナーロの政敵やSTF判事を標的にした諜報活動が行われていた疑惑(ABIN paralela)やイタイプー水力発電所の電力料金に関する交渉を巡ってAbinがパラグアイ政府のコンピュータをハッキングしていた疑いに関して警察の質問に答えたとされている。コヘーア長官は、「ABIN paralela」が行われていた時にはABINの長官ではなかったものの、ルーラ政権発足後、右に関する内部調査を妨害した疑いがあるとされており、警察は同長官を司法妨害等の容疑で立件する方向で調整中。(18日付フォーリャ・デ・サンパウロ)


2.外交

ルーラ大統領は21日、ローマ教皇の死去を受け、7日間の服喪を宣言するとともに、今週末の葬儀にはジャンジャ夫人とともに参列することを決定した。(22日付コレイオ・ブラジリエンセ

 

1.ルーラ政権

(1)ペドロ・ルーカス・União Brasil院内総務は22日、「ルーラ大統領から通信相就任を要請され、光栄に思ったが、議員としての活動を続けた方が国のためになると思い、(大臣就任は)辞退することにした」と表明。アルコルンブレ上院議長(União Brasil)は23日、ルーラ大統領に対し、フレデリコ・シケイラ・フィーリョ・伯通信公社(Telebras)総裁を通信相に推薦した。シケイラ・フィーリョは政治家ではなく、26年以上に亘り、通信部門でキャリアを積んだ実務家である。シケイラ・フィーリョを推薦したのはUnião Brasilではなく、アルコルンブレ議長である。ルーラは、24日夜、ローマに向けて出発(ローマ教皇の葬儀参列)する前にシケイラ・フィーリョの任命について決定する見込み。(23日及び24日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)ルーラ大統領は23日、治安対策に関する憲法改正案(PEC da Segurança Pública)を議会に提出した。その際、ルーラは、「同PECは、連邦政府が州の治安対策に干渉することなく、組織犯罪の摘発等に関して連邦警察と地方警察の連携を強化するためのものである」と強調し、同PECの早期成立を求めた。(18日~20日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)ルーラ大統領は23日、COP30の首脳級準備会合に出席した際、「温暖化は、予想を上回るペースで進行している。気候危機を否定しても、それが解消するわけではない。我々は、多国間主義と国際協力が気候変動対策の基盤であり続けるようにしなければならない。伯は、排出量の削減に全面的にコミットしている。我々は、COP30を気候に関するコミットメントを実施するための共同作業の場にすることを望んでいる。地球は既に実行されない約束には飽き飽きしている」と述べた。今回の準備会合には、中国の習近平国家主席、マクロン仏大統領、エルドアン・トルコ大統領、グテーレス国連事務総長、ライエン欧州委員長等が出席した。(24日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(4)23日、年金から組合、公務員協会等の会費が無断で徴収されていた件に関して連邦警察と連邦総監督庁(CGU)による強制捜査が実施された。これを受け、ルーラ大統領は、ステファヌット国家社会保障院(INSS)総裁を更迭した。INSSと関連団体は、会費を年金から源泉徴収するための協定を結び、年金受給者の承諾を取り付けることなく、当該受給者を関連団体の会員にし、会費を年金から徴収していた。その総額は63億レアルに上り、受給者には何も還元されなかったとされている。ルッピ社会保障相は、「不当に徴収された会費は返却する」と述べている。ステファヌットをINSS総裁に任命したのはルッピ社会保障相(PDT)であるが、ルーラ政権がダメージを被るのは避けられない。(24日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(5)ルーラ大統領は23日、モッタ下院議長及び各党の下院院内総務を夕食会に招いた際、議会との関係改善に努力すると述べるとともに、所得税の非課税枠を月5千レアルに引き上げるための法案と治安対策に関する憲法改正案を最優先案件として掲げ、その早期成立に向けて議会の協力を求めた。三権襲撃恩赦法案に関しては、「馬鹿げている」と批判。また、ルーラは、健康上の問題がない限り、明年の大統領選に出馬すると表明した。(24日付ヴァロール・エコノミコ電子版)


2.クーデター未遂及びボルソナーロ前大統領の健康問題

(1)22日、連邦最高裁判所(STF)第1小法廷において、クーデター未遂により起訴された34名の内、フェリペ・マルチンス元大統領補佐官、ヴァスケス元連邦道路警察長官、フェルナンデス元大統領府官房副長官等、6名からなる「第2グループ」に対する起訴状が全会一致で受理された。これにより、「第2グループ」もボルソナーロ前大統領等8名からなる「第1グループ」と同様に刑事訴訟の被告となることが確定した。その際、モラエス判事は、「組織的に武装した集団が貴方達の家に押し入り、貴方達を家から追い出すために暴力を振るって物を壊したとしたら、彼らに恩赦を与えよというであろうか? 彼らは、伯の民主主義と法の支配を破壊しようとしたのに、何故、こんなにも大勢の人達が彼らのために声高に恩赦を求めるのか理解できない」と述べ、連邦議会において三権襲撃犯恩赦法案の審議を求める声が高まっていることを批判した。(23日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)ボルソナーロ前大統領は22日、病院の集中治療室において、見舞いに訪れたヴァルデマール・コスタ・ネット・PL党首と面会した。ボルソナーロは、退院の目途が立っておらず、面会謝絶の状態が続いているが、同党首は、医師団から特別に許可を得て面会を果たした。(23日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)ボルソナーロ前大統領は22日、長男フラヴィオ・ボルソナーロ上院議員(PL-RJ)のライブ配信(両者が経営する会社が製造したヘルメットの宣伝)に病院の集中治療室から参加した。連邦最高裁判所(STF)は23日、「ボルソナーロは、ライブ配信が行える程度には回復しており、送達を受け取ることは可能」として、クーデター未遂に関する起訴状が受理された件に関して送達を行った。他の「第1グループ」に対する送達は、4月11日から15日にかけて行われたが、ボルソナーロの場合、4月13日に入院したため、送達は23日まで行われていなかった。これにより、ボルソナーロは、5日以内に答弁書をSTFに提出しなければならなくなった。尚、ボルソナーロは、裁判所の執行官に対し、「貴方は単に裁判所の命令に従っているだけだと思っているだろうが、ヒトラーの部下達も裁判では上からの命令でユダヤ人をガス室に連行したと主張したものの、有罪になった。皆、いつかはその代償を払う時が来る。伯も例外ではない。彼(モラエス判事)は自分を収監するか、政治生命を終わらせれば、全てが解決すると思っているようだが、そんなことはない」等と11分間に亘って不平不満を述べた動画をSNSに投稿した。(24日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)


5.外交

(1)22日、アルコルンブレ上院議長、モッタ下院議長及びバホーゾSTF長官がルーラ大統領と共に、ローマ教皇の葬儀に参列することが決定した。これにより、伯の場合、三権の長が揃って葬儀に参列することとなった。一行は、24日の22時に出発する予定。ルーラは22日、教皇の死去について言及した際、「世界は正常な状態に戻る必要がある。世界は、憎悪や偏見や迫害に誘導されてはならない。教皇の死去を契機に、人類が良い方向に変わることを期待している」と述べた。(23日付コレイオ・ブラジリエンセ

(2)22日、ボリッチ・チリ大統領が訪伯し、ルーラ大統領と首脳会談を行い、二国間協力に関する13の取極に署名した。両首脳はスピーチの際、トランプ米大統領の関税政策を批判し、中南米諸国が互いに関係を強化することの重要性を訴えた。ルーラは、「自分は冷戦を望んでいない。自分は米国と中国の両方とも関係を続けたいと願っており、どちらか一方を選ぶようなことはしたくない」と述べた。また、ルーラは、ボリッチに対し、5月に中国で開催される中国・Celac(ラ米・カリブ海諸国共同体)首脳会議、並びに7月に伯で開催されるBRICS首脳会議に出席するよう、求めた。ルーラは、チリに対し、中国との関係強化を勧め、ボリッチがこれらの会議に出席すれば、習近平主席とのバイ会談をセットすることを約束した。(23日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)訪伯中のボリッチ・チリ大統領とテベッチ企画予算相は23日、伯チリ経済フォーラムに出席した際、「南米統合ルート」に関するインフラ事業の進捗状況について議論した。これは、伯のサントス港とチリの港湾を結ぶ「南回帰線両海洋ルート」を整備することにより、伯の内陸部と太平洋岸の距離を短縮することを目的としている。テベッチ大臣によると、伯及びパラグアイにおける工事は進行中であり、明年5月に完成する予定である。ボリッチ大統領は、米国の関税政策を批判し、これに対抗するためには南米諸国の統合を推し進める必要があると強調した。(24日付コレイオ・ブラジリエンセ)

 

1.ルーラ政権

(1)ルーラ大統領は24日、アルコルンブレ上院議長(União Brasil-AP)の推薦により、フレデリコ・シケイラ・フィーリョ・伯通信公社(Telebras)総裁を通信相に任命した。新通信相は、その日の内に就任した。これにより、政府とUnião Brasilの関係がこれ以上悪化することは回避された。シケイラ・フィーリョは政治家ではなく、União Brasilの党員でもないが、アルコルンブレ議長とは近い関係にあるため、政府の議会対策にある程度貢献できると期待されている。但し、同党所属の下院議員59名の内、67%に相当する40名が三権襲撃犯恩赦法案を支持していることからも分かるように、シケイラ・フィーリョ大臣の就任によって、政府とUnião Brasilの関係が劇的に改善されることはないと見られている。(25日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)国家社会保障院(INSS)は24日、年金から労働組合や公務員協会等、関連団体の組合費や会費が無断で徴収されていた件に関して、徴収は5月から中止し、不当に徴収された組合費や会費は全額払い戻すと発表した。連邦総監督庁(CGU)は、INSSと関連団体等の協定(組合費や会費を年金から天引きするためのもの)を全て差し止めた。INSSによって不当に徴収された金額は63億レアルに上る。尚、野党は、本件に関して議会調査委員会(CPI)の設置を求める方向で調整中。上院では、Dr.イラン上院議員(PP-RR。透明性・管理・監督委員会委員長)がルピ社会保障相(PDT)を議会に招集し、説明を行わせることを求めた。年金から違法に徴収された組合費や会費を最も多く受け取っていたのはContag(全国農業労働者連合)であり、その金額は本年2月だけで3650万レアルに上る。Contagのアリスチデス・ヴェラス委員長は、カルロス・ヴェラス下院議員(PT-PE、下院第1書記)の兄弟である。ルピ社会保障相は28日、「INSSの不正については、2023年6月に内部調査が開始されたが、人手不足により、調査に多大な時間がかかってしまった」と弁明した。野党は、ルピ大臣の更迭を求めているが、同大臣は「自分には、年金受給者4千万人の権利を守る役割がある。他人(不正を行ったINSS職員)の行為について責任を取ることはできない」と開き直っている。尚、ルーラ大統領の兄(通称フレイ・シッコ)が副委員長を務める全国年金受給者・高齢者組合(Sindnapi)も捜査対象となっているが、PTの支持母体であるCUT(単一労働者中央労組)等の労働組合は、「警察の捜査を支持するとともに、違法に徴収された組合費の全額返済を要求する」としつつ、「フレイ・シッコが自己の利益や政治のために組合を利用したことは一度もない。大統領の兄弟であることから、本件を政治や選挙に利用しようとする動きが見られる」とフレイ・シッコを庇った。(25日~29日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)大統領府は、25日より、ジャンジャ大統領夫人の日程を大統領府のサイトに公表することにした。同夫人は、役職にはついていないものの、大統領夫人として公務や外遊を行っていることで、「税金の無駄使い」等と批判されていた。日程を公開することで、批判をかわす狙いがあると見られている。(25日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(4)アルキミン副大統領は27日、サンパウロ州リベイラォン・プレット市で開催されたアグリビジネス関係のイベント(第30回Agrishow)に出席し、「連邦政府は、本年度の農業融資プログラム(Plano Safra)には昨年以上の資金を投入する」と述べた。昨年の農業融資プログラムは4005億レアル(前年度比10%増)で、金利は7%~12%であった。参照金利(Selic)が14.25%に引き上げられたこともあり、金利の上昇分を埋め合わせるためにも融資総額は引き上げられる必要がある。尚、カイアド、ゼマ、ラチーニョ・Jr等、野党の州知事は、PTとMST(土地なし農民運動)を批判し、明年の大統領選では、アグリビジネス業界に近い右派の候補を当選させるべく、業界の支持と右派の団結を呼びかけた。(28日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(5)AtlasIntel社が今月20日から24日にかけて5419人を対象に実施した世論調査によると、ルーラ政権に対する評価は、「非常に良い/良い」40.2%(3月比2.8ポイント増)、「普通」9.6%(2.9ポイント減)、「悪い/非常に悪い」47.7%(1.9ポイント減)となり、未だ「悪い/非常に悪い」が「非常に良い/良い」を上回っているものの、その差は、前回の12.2ポイントから7.5ポイントに縮まった。ルーラ大統領の支持率は、支持46.1%(1.2ポイント増)、不支持50.1%(3.5ポイント減)。現時点において大統領選が行われたと仮定した場合、主要候補の支持率は、ルーラ(PT)42.8%(1.1ポイント増)、フレイタス・サンパウロ州知事(Republicanos)34.3%(0.4ポイント増)、カイアド・ゴイアス州知事(União Brasil)4.3%の順となる。決選投票の場合は、ルーラとフレイタスは共に46.7%で拮抗している。ボルソナーロ派の候補がミシェーレ前大統領夫人(PL)となる場合は、ルーラ(PT)43.3%、ミシェーレ(PL)31.3%、カイアド(União Brasil)5.5%。(28日付ヴァロール・エコノミコ電子版)


2.クーデター未遂及びボルソナーロ前大統領の健康問題

(1)24日、血圧が上がる等、ボルソナーロ前大統領の容体が悪化した。前日の23日には、起訴状が受理されたことを通知するための送達が行われたばかりであった。今月12日に入院したボルソナーロは、手術を受けた後、経口摂取ができない状態が続いており、未だに集中治療室で治療を受けている。25日、ボルソナーロの容体は安定した。胸部及び腹部のCT検査の結果、医師団は、新たな手術は必要ないと判断した。27日、ボルソナーロの腸が蠕動運動を再開し、検査の結果、肝臓の容体が改善されたことが判明。28日、医師団が「ボルソナーロの容体は安定しており、28日から経口摂取(ゼリーとお茶)を再開した」と発表したが、集中治療室から出られる見通しは立っていない。(25日~29日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)

(2)25日、連邦最高裁判所(STF)判事の過半数が民主的法治国家転覆罪、クーデター未遂、犯罪組織結社罪、器物損壊及び文化遺産損壊の罪状でデボラ・ロドリゲスを有罪にすることを主張したことで、同人の有罪が確定した。ロドリゲスは、三権襲撃の際、STF前の彫像に口紅で落書きをしたことで知られ、ボルソナーロ派から同派に対する迫害の象徴として祭り上げられている。量刑に関しては、フックス判事が罪状を器物損壊のみとし、禁固1年6ヶ月とすることを主張したが、残りの判事は、「ロドリゲスは、単なる落書きだけではなく、襲撃犯のブラジリア集結や陸軍司令部前のキャンプ設営にも関与しており、クーデター未遂計画に積極的に関わっていた」として、禁固14年が確定した。ザニン判事だけは禁固10年6ヶ月を主張したが、フックスとザニン以外の判事は禁固14年を主張した。(26日付コレイオ・ブラジリエンセ)


3.連邦議会

(1)モッタ下院議長は24日、各党の下院院内総務と会合を開き、三権襲撃犯恩赦法案の緊急審議動議に関する採決を先送りすることにした。大方の政党は、「まだ機は熟していない」として、同法案を審議にかけることには否定的であったが、既にSTFから有罪を言い渡された襲撃犯で、刑が重すぎるとされている者については減刑を検討すべきではないかとの意見が出された。一方、野党PLからは、既に有罪となった襲撃犯のみを恩赦の対象とし、ボルソナーロ前大統領等、クーデター未遂の首謀者とされている者は対象外とすることを提案する等、譲歩に応じる姿勢を見せている。また、野党は、恩赦法案に関して小委員会を設置しようとしている。アルコルンブレ上院議長とモッタ下院議長は、連邦最高裁判所(STF)と共に、三権襲撃犯の内、比較的刑の軽い者については刑期の3分の2を減刑するとの法案を提出する方向で検討中。但し、今後、同様の事案が発生した場合に備えて「民主的法治国家転覆罪」の厳罰化が盛り込まれることになっている。この法案が議会に提出されれば、ボルソナーロ派の提出した三権襲撃犯恩赦法案を葬り去ることができると見られている。(25日~29日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(2)下院議長団は24日、マリエーレ・フランコ市議暗殺の首謀者として有罪が確定し、自宅軟禁中のシキーニョ・ブラザォン下院議員(無所属-RJ)の議員資格剥奪を決定した。その際、理由もなく、会期の3分の1以上を欠席した議員は議員資格を失うとの憲法規定が適用された。(25日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(3)União BrasilとPPは、政党連合を結成する方向で調整中。これが実現すれば、下院議席数107,上院議席数14(PL及びPSDと同数)の議会最大勢力となる。一方、PSDBとPodemosは、両党の合併について交渉中。(25日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

(4)28日、メンドンサ・フィーリョ下院議員(União Brasil-PE)が治安対策に関する憲法改正案(PEC)の報告官に選出された。同議員は、レヴァンドフスキ法務治安相を下院憲法司法委員会(CCJ)に招いて同PECに関する議論を行うとの考えを明らかにした。連邦政府は、同PECの成立を本年度の優先事項の一つに挙げている。(29日付コレイオ・ブラジリエンセ)

(5)モッタ下院議長は28日、所得税の非課税枠を月5千レアルに引き上げるとの法案に関する特別委員会は来週中に設置されるが、特別委員会での議論には約2か月を要するため、下院本会議における採決が行われるのは本年下半期になるとの見通しを発表した。非課税枠を5千レアルに引き上げることは、ルーラ大統領の選挙公約であり、明年から実施するためには年内に成立させる必要がある。(29日付コレイオ・ブラジリエンセ)


4.司法

(1)24日、コロール元大統領の控訴がモラエス・STF判事によって棄却された。コロールは、ラヴァ・ジャット捜査の結果、収賄及び資金洗浄の容疑で禁固8年10ヶ月の有罪判決を言い渡されていた。コロールは25日未明、アラゴアス州都マセイオ市内で身柄を拘束され、連邦警察アラゴアス州支局の施設に連行された。1985年の民政移管以降、収監された大統領経験者としては3人目。弁護団は、コロールは高齢(75歳)であり、パーキンソン病や双極性感情障害等の持病があるとして、自宅軟禁を求めた。尚、コロール本人は、持病があることや医薬品を服用していることを否定し、アラゴアス州内の刑務所で服役することを希望した。これを受け、モラエス判事は、コロールをマセイオ市内の刑務所の特別房に収監することを決定した。メンデス・STF判事は28日、「コロールが有罪となり、刑務所に収監されたからといって、ボルソナーロ前大統領もそうなるとは限らない」と述べた。尚、STFでは、評決の結果、6対4により、コロールの収監を決めたモラエス判事の決定が維持された。メンデス、フックス、メンドンサ及びヌネス・マルケスの判事4名は、控訴を受け入れ、コロールの収監は取り消すべきであると主張した。(25日~29日付コレイオ・ブラジリエンセ、フォーリャ・デ・サンパウロ及びヴァロール・エコノミコ電子版)

(2)訪伯中のボリッチ・チリ大統領は24日、ブラジリア大学で講演を行った際、「伯のSTFは、偽情報対策のためにXのサービスを停止する等、世界的に見ても模範的な対応をしている。ビッグテック企業には、その国の法律を遵守させることが必要である。ビッグテック企業の代表が揃ってトランプ米大統領の就任式に出席し、同大統領を称えただけでなく、ファクトチェック機能を廃止したり、マイノリティーに関する方針を変えたのは恥ずべき事であった」と述べた。(25日付フォーリャ・デ・サンパウロ)


5.2026年選挙

 26日、フランサ零細・小企業相(PSB。元サンパウロ州知事)が次期サンパウロ州知事選出馬に名乗りを上げた。PSB及びPT関係者によると、アルキミン副大統領(PSB)とアダッジ財務相(PT)がサンパウロ州知事選出馬には乗り気でないため、政府与党がサンパウロ州知事選ではフランサを擁立する可能性がある。これに対し、ボルソナーロ派の候補は、フレイタス現州知事(Republicanos)が再選ではなく、大統領選に出馬する場合、ヌネス・サンパウロ市長(MDB)の擁立を検討している。(27日付オ・エスタード・デ・サンパウロ)


6.外交

(1)24日、ブラジリアにおいて、BRICS女性閣僚会議が開催された。「女性・開発・起業」、「デジタルガバナンス:ミソジニーと偽情報」及び「女性のエンパワーメント・気候変動対策・持続可能な開発」のテーマに関して討論が行われた。特にSNSとAIが女性に対する攻撃に悪用されていることに焦点が当てられた。(25日付コレイオ・ブラジリエンセ

(2)25日、ローマに到着したルーラ大統領一行(ジャンジャ大統領夫人、アルコルンブレ上院議長、モッタ下院議長、バホーゾ・STF長官、ルセーフ元大統領(新開発銀行総裁)、ヴィエイラ外相、レヴァンドフスキ法務治安相、エヴァリスト人権相、テイシェイラ農業開発相及びアモリン大統領補佐官)は、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂において、22日に死去したフランシスコ教皇に別れを告げた。一行は、翌26日の葬儀に参列した後、帰国の途に就いた。葬儀の際、ルーラは、トランプ米大統領から15席ほど離れた場所に座ったため、トランプと言葉を交わすことはなかった。(26日及び27日付コレイオ・ブラジリエンセ及びフォーリャ・デ・サンパウロ)

(3)ルーラ大統領は、エジプトのエルシーシ大統領に親書を送り、BRICS外相会合の共同声明に「BRICSは、伯の安保理常任理事国入りを支持する」との文言を盛り込むことに対する支持を求めたが、エルシーシ大統領は、「BRICSは、安保理改革に関して議論する場としては適切ではない」として難色を示している。伯の提出した声明案には、BRICSは伯の他、インドと南アフリカの常任理事国入りも支持するとあり、南アとアフリカの代表の座を争っているエジプトは、これにも難色を示している。(29日付フォーリャ・デ・サンパウロ)

 

bottom of page